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80、【怠惰】への謝罪

どれだけ時間か経ったのか、もしくは一瞬だったのか。

女性を守るために飛び出したまでは良かったが相手にトドメをさす気が無いベルと、有効な攻撃手段が全く無くなってしまったゴロツキ男のにらみ合いが続いていた。


この状況を黙って眺めていたトリル、ソフラン、オニキスの三人だが、おもむろにオニキスが声を発する。



「そういえば二人はベルたちの護衛なのにぇ、何でここでボーと突っ立っているんだにぇ?あの子たちが首を突っ込んだだけとはいえ相手の刃はベルを狙っているにぇよ。」

「何でって……護衛はただの名目だろうよ。俺たちの目的はベルの監視だ。」

「名目だけでも護衛は護衛だと思うんだけどにぇ~。ノーツちゃんに言っちゃうにぇよ~?」

「……ッチ、仕方ねぇな。」



頭をかきながら渋々了解したトリルは、足音を殺した状態でゴロツキ男の死角を走り始めた。

男の目線がベルに集中していることもあるが、それを差し引いたとしてもトリルの隠密行動を男が気が付くことは無いであろう。

そこらに漂う空気をいちいち気にしないのと同じように、周りの人込みに溶け込みながら駆け寄るトリルの存在もまた男の認識の外にあるのだから。


話は変わるのだが、何度か取り上げてきたようにトリルとソフランは二人っきりで冒険者パーティを組んでいる少々変わったコンビである。

本来パーティを結成するのにあたって一番大事なことは互いの欠点をかばい合えるバランスのいい人材でそろえる事なのだが、流石にコンビともなると話が違ってくる。

いや、互いの欠点を埋めるパーティ自体はコンビでも当然可能なのだが、それをしてしまうとモンスターの攻撃などで片方が動けない状況になってしまった場合に戦術が大きく崩れる原因となってしまうのだ。

なので二人パーティの場合に妥当な組み合わせは『お互いが何でもこなせる万能型』であるか、もしくは『お互いが相手を一方的に無力化することが出来る戦術を得意としている』か、となる。


そしてトリルとソフランの二人は後者、具体的に言うとお互いに隠密行動からの不意打ち戦術に特化した一撃必殺パーティであり、当然ながらトリルの戦闘スタイルもしかりである。



「ほらよ、一丁。」

「クハッ!?」


トンッ!



相手にトドメを刺さずに牽制にとどめたベルに合わせてか、手刀を相手の首元に打ち込み気絶させたトリル。

接近からの近接攻撃、彼の一連の動作はなめらかで隙が無く非常に手馴れているものを感じることができる。

もっとも、この攻撃を受けたゴロツキ男はトリルの実力を感じる時間など無かったのだが。



「あ、ありがとうトリルさん。…この人死んでないよね?」

「人の事をゴブリンに例える割には心配症だな。大丈夫、気絶させただけだ。」

「いやはや、やっぱりCランクは気が利くにぇね。死体よりは気絶させただけの方が兵士に突き出しやすいからにぇ。」



ひと段落ついたタイミングを見計らってベルの元に歩いてきたオニキス。

その後ろにはフェゴールとソフランも一緒になってベルの無事を安堵しているようであった。

優しい表情を見せるソフランの手の先は既にナイフから遠のいている。


そしてこの場には安心した表情をこぼす人物がもう二人いた。



「あ……あの!?助けていただき本当にありがとうございます!!」

「当店のトラブルを解決してくださって本当に助かりました。ありがとうございます。」



男に絡まれていた女性と店員の二人である。


女性の方は地面に膝まづく勢いがありそうなほど感極まっていて、店員も言葉は事務的であるが感謝の意をベルに伝えた。


だがベルは突然、まだ手に持っていた槍の先を店員の顔に向ける。

その顔は真っ赤に染まり、怒りに震えていた。


あまりにも予想外な展開にトリルとソフランも反応が遅れてしまったが、続くベルの言葉に思わず納得させられてしまう。



「私に感謝する前にこの人に謝るのが先でしょッ!!あなたがどれだけ弱くても助けを呼んだり、他の店員に相談したりできたでしょうがッ!!さっきまで見て見ぬフリを貫いていたくせにいきなり責任者ズラしないでッ!!」

「も、申し訳ございま──」

「──私じゃなくてこの人にッ!!」

「ッお客様!当店の、私の対応に不手際があり大変申し訳ありませんでした。お時間がありましたら今から当店のメニューを無料で提供させていただきます。」



小さいながらも鬼の形相でまくし立てるベルに頭の上がらない店員だが、ベルの言葉によって頭を下げる相手を女性に切り替える。

今回の件の責任を店全体ではなく自分自身の責任にしたり、言葉だけの謝罪ではなく目に見える形で支払うあたりベルの説教はしっかりと効果があったようだ。


精一杯の誠意を込めた店員の謝罪を目にしたベルも、満足した顔で槍をストレージリングにしまった。

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