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71、エンシェントドラゴン対策会議3

「エンシェントドラゴンに勝つ……って、そんなこと言われても──」

「もちろん無視するって手もあるにはあるにぇ。数千年単位で育ったドラゴンがエンシェントドラゴンであると伝承では語られているにぇから、その変異種のエンシェントドラゴンは数千年単位でおとなしくしていたと推測できるし今後も動かずにいる可能性は十分考えられるにぇ。」

「だったら無視でいいじゃないか!自らハチの巣をつつくような真似をする必要なんて──」

「『無いんじゃないか』、なんて希望的な考えは出来ないんだにぇ。」

「「何!?」」



徐々にヒートアップしてきた参加者の怒号にもいつもの態度、いや、いつもよりやや鋭い目線で対応するオニキスだったが、最後の言葉の後に少しだけ暗い顔になった。

この町に住んでいる者であればオニキスの天真爛漫っぷりは誰でも知っている事だが、そんな彼女がまず見せることの無い沈んだ表情によって会場の温度がグッと下がったような、そんな雰囲気に包まれた。



「これはあくまで予測であって確定事項ではないにぇ。だけど最悪の事態を想定しないといけないのがギルドマスターの辛いところなんだにぇ。」

「前置きはいい。その最悪の事態って言うのは何のことなのだ!?」

「そうにぇねぇ…ドラゴンは辺りの魔力を吸収しながら成長するにぇ。そしてそれを何千年単位の間行い続けたのがエンシェントドラゴンにぇ。」

「それは俺も知っているが……それがどうした?」

「ドラゴンは生きている限り魔力を吸収し続けて成長を続けるけど、それがエンシェントドラゴンで()()()()()んじゃないかなーって話にぇ。」

「「ッ!?」」



千年の時を生きると言われているエンシェントドラゴン。

だが、それで成長が止まるとはどの書物にも書かれていないし、どの伝承にも伝わっていない。

であれば今以上に進化する可能性もありうる、とオニキスは直感したのだ。

モンスターの生態研究も行っている魔術師ギルドのギルドマスターらしい視点からの指摘である。



「たとえ相手が伝説であったとしても、それ以上のバケモノになってしまう可能性がある以上は今すぐにでも対処しなければならないんだにぇ。もちろん今すぐと言っても、今回の会議はあくまで対エンシェントドラゴンの方向性を定めるだけに留めざるを得ないんだけどにぇ。ドラゴン相手でも国が動くほどの強敵だからより多く、より強い冒険者を集める準備をしなきゃいけないにぇ。」



衝撃で硬直していた参加者と野次馬の冒険者が立ち直るのを待たずに、今回の会議の詳細を述べていくオニキス。

対エンシェントドラゴンの方向性と言っていたが、エンシェントドラゴンを倒すという事自体はすでにノーツとオニキス、冒険者ギルドと魔術師ギルドの間で確定しているようである。


危険因子は早めに潰す。

モンスターとの関りが多い二つのギルドは先手必勝という言葉の意味を身をもって知っているのである。


しかしオニキスの考えはモンスターについて詳しく知らない、もっと言えばモンスターに対する無知から来る危険意識の低さが見え隠れする参加者にとっては不満のあるものであった。



「で、でもエンシェントドラゴンになるまでに千年以上はかかるって話だよな。エンシェントドラゴンがこれ以上強くなるとしてもながい年月が必要なんじゃないか?」

「そうだそうだ!どうせ俺たちが生きている間に成長することが無いんだったら下手に刺激することなんて無いんだ!そうすれば今まで通り大人しくしていてくれる。すでに手遅れなんだったら手を出す必要性が無いんだよ!」

「「そうだそうだ!!」」

「「戦う必要なんてない!!」」

「「俺たちは今を生きるんだ!!」」



ここまで大人しかった反動か、参加者たちの叫び声があらゆる場所から響き渡る。

その声を聴いた他の参加者もオニキスの意見に対して露骨な反意を腹の底から絞り出す。

中には周りの事も気にせずに腕を振り回す者や、受付側にコップや食器を投げようと手に握り始める者まで居る始末である。


その状況を作ってしまったオニキスは崩れそうになっている業務用の笑顔をなんとかキープしつつも、内心でノーツを睨めつけた。



(ほんっとーにノーツちゃんは面倒事ばっかり押し付けてくるにぇ。)



この世の地獄と化したこの場を鎮めるだけなら簡単に行うことができる。

オニキスがこの場に大魔法を落として本物の地獄に変えてしまえば良いだけなのだから。


だが破天荒な性格のオニキスであっても流石にそこまではしない。

と言うよりノーツが見ているから出来ないと言った方が正しいかもしれないが。


何とかしようにも、すでに外れかかっている笑顔という名の仮面の下で奥歯を噛み締めることしかできない。

この場をまとめる事が出来なかった悔しさと、こんな役目を押し付けられた自分の運の悪さに。



(ああもうにぇ!!何でもいいからこの空気を、この流れを変えてくれる()()が欲しいにぇ!天使でも悪魔でも、何なら──)



その瞬間。

確かに、確かに心の中で、オニキスは()()を呼んだのであった。



(──()()()()()でも構わないにぇ!!)






ドンッ!!






その音は参加者たちがざわめく騒音の中でも不思議と耳に届いた。


それほどの音を発した物の正体はギルドの入り口を塞いでいた木製のドア。

それを勢い良く開いたことによって発生したドアの悲鳴の音であった。


その音に反応して参加者の声がピタリと止んだ中を、代わりの音と言わんばかりに二つの足音がギルドの中を進んでいく。



「たのもー!!早速で悪いんだけど護衛依頼の完了報告を……って、何なのこの雰囲気!?何であからさまに冒険者じゃない人がこんなに居んのよ!?」

「ん。」



ギルドの中に勢いよく入ってきたのは口の悪い青い髪の少女、そして白い長髪と桜模様の和服を揺らす口数の少ない少女の二人組であった。

作者「『この二人って誰?』と思った方は40話をご覧ください。」

フェ「つまり30話分ほど放置してたキャラって事ね。」

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