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69、エンシェントドラゴン対策会議1

♢♦♢


その伝達は迅速に、かつ秘密裏に町中を駆け巡った。



『全世界の脅威となりうる、とあるモンスターの対策のため緊急の集会を執り行う。突然の招集で申し訳ないが昼の鐘が鳴る頃に冒険者ギルドに足をお運びいただきたい。』



あまりにも急な呼び出しに困惑する者もいれば職業柄的に何故自分が呼ばれているのか分からずに困惑する者もいたが、ギルドマスターの日頃からの行いが良いためなのか呼び出した人々のほとんどが駆けつけてくれていた。


それだけの人だかりが出来ている時点で秘密裏に事を運んだ意味が全く無くなっているが、普段から慎重に物事を運ぶギルドマスターですら凡ミスを起こす程度に慌てなければいけない事態が発生しているという事の裏付けになり、逆に伝達された内容の信頼性が高まっていたのは怪我の功名と言えるだろう。






冒険者ギルド・サント支部はガンギルオン大樹海との境目となる門を兼ねた作りになっている。

この建物を作った人物はこの町を作り上げた当時の隊長であり、軍人であったその人が監修していたため元は兵士や冒険者の詰め所のような建物であった。

そのため招集された人々が雪崩(なだ)れ込んできている状態であるにもかかわらず空間にも席数にもまだまだ余裕があり、その中には特に呼ばれた訳ではないが野次馬感覚で混ざっている冒険者の姿もあった。

とは言え冒険者にはいずれ伝わる話題であるためギルド側も目くじらを立てることは無かったが。


ギルドの中に入っていった人々が増えるほどざわつきが大きくなる。

なにせ呼ばれた人々は皆が全員何かしらの業界のトップであり、それが故に今回話されるであろう事の重大さを物語っているのだから。


特に呼ばれた訳でもない冒険者のざわつきも大きくなる。

色々な立場のトップと言うだけあって高ランクの冒険者は彼らから直接依頼を受けることも少なくはない。

冒険者たちがこうやって酒を片手に野次馬できるのも依頼者の常連である彼らのおかげなのだから。


時間が経つごとに大きくなる一方のざわつきであったが、それは一瞬で収まることになる。

彼らを呼び出した張本人、冒険者ギルド・サント支部のギルドマスターであるノーツがカウンターの奥から姿を現したからである。

ここはあくまで冒険者ギルドなので壇上のような都合のいいスペースは無く、かわりにカウンター越しのこの位置から周囲を見渡したのち話し始めた。



「今回は急な呼び出しの中集まっていただきありがとうございます。今回参加されている人々の中には位の高い者も居るとは思いますが、この集いは社交パーティではなく、とあるモンスターへの対策会議であります。なので言葉に敬語が欠けていたり、場合によっては無礼ともとれる言葉が飛び交う事もあるでしょう。それを先に謝罪しておくのと同時に、そういった事態に耐えられないとお考えの方は帰ってしまっても構いません。何か話すたびにいちゃもんを付けられると会議が進まないのでね。」



最後の方の言い回しがすでに無礼に当たるのだが、この程度に耐えられないなら帰ってくれというノーツの心情の現れなのだろう。

参加者たちもそれを理解できる程度には頭の切れる者が集まっているため特に暴動がおこる様子もないようだ。



「さて、時間に余裕の無い者も多いだろうから早速本題に入ろう。まずは見てもらいたい物がある。持ってこい、お前たち!」

「はいはい、まったく人使いの荒いギルドマスターだぜ。」

「報酬を減らすぞ?」

「直ちに運ばせてもらいます、ギルドマスター!」

「まったく…」



布をかぶせられた円形の何かを運びながらノーツと漫才をしているのはDランクパーティー、『蒼天の探求者』のリーダーであるジャンである。

ジャン以外のパーティーメンバーであるテムジン、トントン、タージャの姿もあり、ジャンと共に何かを運んでいた。


所定の場所まで運ばれた物からかぶせていた布を取り払うと、そこにあったのは形容しがたい色彩の鱗、エンシェントドラゴンの鱗であった。



「かなり大きいようだが鱗…なのか?」

「よく分からん。鱗なのだから魚型のモンスターなのだろうか?」

「と言ってもこの町の周りは川くらいしか水辺が無いんだろう?あんな大きな鱗を持ったモンスターが泳いでいる訳が無い。」

「むむむ、分からん。」



ただ会場のざわめきはそこまで大きくはない。

誰もがその鱗の正体を見抜くことが出来なかったである。

一目でエンシェントドラゴンの鱗の可能性を見抜いたノーツはもちろん、初見でも見抜ける可能性が高かったであろうオニキスもしれっと会議の主催者側に回っている現状、参加者だけでなく立ち見の冒険者ですら『何かのモンスターの鱗』以上は分からなかったのである。


ここに高ランクの冒険者、例えば『忘れられた黄金』などが居れば話は違っただろうが、タイミング悪く『翠玉(すいぎょく)の地下渓谷』の話が持ち帰られた影響で噂に敏感な冒険者たちはこぞって、かの地のエメラルドを求めて飛び出したかその準備をしている所である。


そう、ノーツが慌てている理由は相手が強大であるという事だけではなく、高ランク冒険者の人数不足も絡んでいたのであった。

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