64、【怠惰】な骸のダンジョン経営2
【怠惰】のダンジョンコアことベルが生み出したモンスターの攻撃力は0になる。
それはスケルトンキングだけではなくスライムやエンシェントドラゴンも同様であった。
そのため折角呼び出したスケルトンを倒す手段が無く、スキルによって召喚されたモンスターを倒すことによってDPを獲得できるかの検証が出来ない。
だが、その問題はあっさりと解決した。
ダンジョン外の崖から落下することで自らダメージを負ってもらうことによって、ダンジョン内で消滅することが可能だと判明したのだ。
そのままの勢いで検証した結果消滅したスケルトンからDPが獲得できることも確認できたため、これからはDPがほぼ使い放題となった。
しれっととんでもない事をしでかしているのだが、ツッコミ役のフェゴールが居ないために無限に貯まるDPに関しておかしいと思う者は誰も居なかった。
召喚したモンスターからでもDPが手に入ることが分かったが結局話がふりだしに戻るだけで、ダンジョンを拡張するべきか否かという最初の問題は何も解消していないことに気が付いたスケルトンキング。
睡眠を必要としない白骨の体は日を跨ぐほどの時間の長考に適していたが、それでも答えは見つからなかった。
一夜の思考の間に感じたのは、このまま一人で考え込んでいても埒が明かないということだけである。
「カタカタ(という訳で、皆様の意見を拝聴してみようかと招集してみた次第ですが。)」
「プルプル(悪くないんじゃないかな?ボクは問題ないよ。)」
「クワアァ(某も異論はない。某らの立案がキング殿の助けとなり、やがてこのダンジョンの繁栄へと繋がるのであれば今回の招集も徒労では無かろう。)」
「プルプル(ドラゴンは話し方がカタいよ~。もうちょっと軟らかく行こうよ、ボクみたいにサ。)」
「カタカタ(スライムは柔らかすぎると思うのですが…まあいいでしょう。我々はほぼ同期なのですから遠慮なく話しやすい言葉で問題ないです。)」
…などと話しているかどうかは不明だが、ダンジョンの外には三体のモンスターが集い合っていた。
ベル本人からダンジョンを任されてしまった悲劇の王、スケルトンキング。
数多くのスライムの中でもベルとオセロで遊んだことのある最古参のスライム。
入り口を守るフロアボスとして召喚されている門番竜、エンシェントドラゴン。
エンシェントドラゴンの身体が大きすぎるためダンジョン外での集合となったが、念話のおかげで一番小さいスライムの声もエンシェントドラゴンに聞こえているようだ。
正確には念話なので『声』や『聞こえている』といった表現は当てはまらず、『意思』を『受け取る』というのが正しいのだろうが。
「カタカタ(それで本題ですが、我らが主からのお言葉をどのように受け取るべきかと考えておりまして。)」
「クワアァ(主殿からの言伝ですか…どのような内容で?)」
「カタカタ(『手を貸してくれないか?』とだけ。)」
「プルプル(すごーい、全く分からない!さっすがベルちゃんだね。)」
「クワアァ(ここまで要点の無い命令となると、我々の判断力を試しているとさえ思ってしまいますな。ガハハ!)」
皮肉を込めながらベルを褒めるスライムと、ただただ愉快に笑うしかないといった様子のエンシェントドラゴン。
ベルから直接頼まれた訳ではない二体のモンスターは共に他人事のように言葉を繋ぐが、それを見たスケルトンキングは物理的には出るはずもないため息をついた。
「カタカタ(笑っている場合では無いのですよ、私は本当に困っているのです。)」
「プルプル(アハハ、いやゴメンゴメン。だけどそこまで深く考えることも無いと思うんだけどなぁ。)」
「カタカタ(と、言いますと?)」
「プルプル(だってベルちゃんは物事を深く考えて行動することって無いじゃん。今回冒険者に付いて行ったのも日頃から考えてきた行動じゃなくて突発的に決めた事だったでしょ?)」
「クワアァ(スライム殿の物言いは多少辛辣であるが、某も同じ意見である。たとえ不都合があったとしても主殿であれば笑って許してもらえるであろう。)」
「カタカタ(うむ…確かに…)」
「プルプル(何ならボクの秘策でも聞いてみる?)」
「カタカタ(秘策…ですか?)」
他の二体のモンスターから視線を向けられたスライムが存在しない胸を張り、その秘策を存分に溜めた後に発表した。
「プルプル(僕の秘策はねー、なんとー、それはー、『遊べるダンジョンを作る』事だよー。)」
一見突拍子のないスライムの秘策に目が点になるスケルトンキングとエンシェントドラゴン。
だが、少し時間をかけて考えてみれば確かに妙策であるように思えた。
「カタカタ(なるほど。主の性格に沿うようなダンジョンを作れば最悪の場合だけは回避できる、という事ですか。今のダンジョンにあるプールのような物をどんどん増やしながらフロア数も増やしていくのですね。)」
「クワアァ(ただの遊具とて工夫次第では冒険者の対策も織り交ぜることができるやもしれぬ。我々がダンジョンの製作に関わる機会など稀であろうから今こそ迷宮内に防衛要素を加える機会であるかと。)」
「プルプル(もちろんダンジョンの中だけじゃなくて、ダンジョンの外にも手を加えていくよ。無限にDPが稼げるって言っても時間だけはかかっちゃうから、その間に数匹のスライムとスケルトンで農村っぽいものを作るよ。ベルちゃんが忘れててもフェゴールちゃんがしっかり農作物を持って帰ってくるはずだから、すぐに育てられるように空間を開けておかないとね。)」
「カタカタ(分かりました。ですが私の召喚だけでは人手が足りないので追加で何匹かスケルトンキングを召喚しましょう。)」
そんな経緯からダンジョンは内外共に大改造を施すこととなり、今日も不規則な大工の音がガンギルオン大樹海に吸い込まれていくのであった。
後日ベルが一新した自分のダンジョンを目にすることになるが、それはまだまだ先のお話である。
没ネタとして『フェゴールがマーブルウルフに人化の魔法をかけて、白髪の肉食系活発犬耳娘としてベル一行に加わる』という案があったのですが、現実はダンジョン組三体よりも存在感が無いという物になってしまった。
すぐ忘れるんですよ。ゴメンね、マーブルウルフ。




