53、【怠惰】と出番の多い冒険者
38度の熱が出たりして文章がまとまらない、助けて!出番の多い人!
「そこに誰か居るだろう、ドリーマーズか?」
あれだけの声を上げれば流石に冒険者ではない相手であっても気が付かれてしまう。
元より会話を試みるつもりであったので何も問題は無いのだが、何かに負けたような気がする一同であった。
「ああ。Dランクの『蒼天の探求者』、俺がリーダーのジャンだ。」
互いの間は木々に阻まれているためまだお互いの顔が見えていない状態だが、先に名乗っておくことで敵意がないことを相手に伝えているのである。
しばらくの静寂の後、ジャンの言葉の意図を相手は的確にくみ取ったようで、草木をかき分ける音と共に先ほどよりも友好的な声色が返ってきた。
「Dランクか、方角的には今から戻るところだったのだろう。本当は町まで送ってやりたいんだけど俺たちはギルドからの護衛依頼を受けているんでな。店売りの物より質は悪いが仲間の作るポーションなら分けてもいいぞ。」
「ちょっと!?何勝手に決めてるのよ、オルス。」
「…ん?」
ほんの数日前によく聞いた、なんだか懐かしい気がする名前についつい反応してしまうベル。
いまだ視界を遮る緑のカーテンの奥に意識を集中すると聞こえてくるのは、考え無しに体が動いてしまいそうな男性の声と、それに振り回されていそうな女性の声。
やがてガサガサと揺れる葉っぱの先から現れたのは、短剣で邪魔な木々を切り払う物静かそうな男性。
それはベルがよく知る人物たちの特徴と完全に一致していた。
「オルスさん!エストリアさん!ハーデスさん!」
ベルが生まれたての時期に出会ったBランクの冒険者パーティ『忘れられた黄金』の三人組の名を呼びながら、疲れた足の事も忘れて全力で駆け出した。
「んぁ!?ベルが何でこんなところに!?」
一方の『忘れられた黄金』の三人には驚く以外の選択肢は無かった。
言葉と顔の驚愕具合が一致しているオルスは言うまでも無くだが、声をあげることも無く比較的冷静そうなエストリアとハーデスもまるで幽霊でも見ているかのような反応である。
ベルが外を出歩いているというだけでもショックで気絶しそうなのだが、その同行者が珍妙すぎて僅かな意識にトドメを刺しに来ているようであった。
なんせDランクと名乗る冒険者四名とマーブルウルフとただの黒猫というよく分からない組み合わせ、この中にダンジョンコアのベルがいるのだ。
この大樹海の中で探せばダンジョンコアと冒険者は比較的見つかるだろうし、マーブルウルフも本来の生息地ではないがベルが召喚したとすれば辻褄はあう(実際は野生のマーブルウルフではあるが)のである。
そう考えるとどこでであったか想像も出来ないただの黒猫が一番場違いであり、フェゴール痛恨のミスであった。
「ちょっと町まで…って、ん?その人たちは誰?」
よく見ると草木の間をかき分けてきたのはオルスだけでは無かった。
リュック以外に工具箱の様な入れ物を持っていて見た目からして冒険者ではなさそうな人々が数人、いや、数十人はいるようようだ。
「あぁ、言っただろ?護衛依頼だよ。」
長い遠征を終えたオルスたちであったが、エメラルド採掘という一大産業が再開できるチャンスをギルドマスターが見逃すはずは無く、サントの町中に住む採掘の経験がある人間と大工を緊急招集して、その中から意欲のある者を翠玉の地下渓谷に向かうように声を上げた。
町の歴史が特殊なこの町には昔から町長は存在せず、いつの日からか代わりに冒険者ギルドのマスターが町長と同様の仕事を兼任している。
そのため町の為の緊急招集であればある程度の無茶は笑顔で引き受けてくれるのである。
だが、町から2日~3日程度の道のりであったとしてもモンスターが群生する危険な大樹海の中を戦闘経験の無い人間が通り抜けるのは難しく、誰かを護衛に付けることが必須であった。
そう、『翠玉の地下渓谷までの道のりを知っていて』、『大樹海で生き残るためのノウハウを熟知している』、『ある程度ランクが高くて信用できる冒険者』を…
「そんな訳で約40日樹海に潜っていた疲れを癒す時間も、酒も金もなーんにも用意されずにココに戻ってきたってこった。ハーハッハー!」
(うん、そりゃ笑ってないとやってられないよ…)
大樹海を長時間歩くことの厳しさを自ら経験した今のベルでも約40日分の疲労は想像も出来ない。
普段は頼りなさそうなオルスたちがランク相応の冒険者であると初めて認識した瞬間であった。
過去話を見返すと初期のエストリアはツンケンしている印象なのに、町に戻ってから可愛らしさが上がっていた…




