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4、【怠惰】に思いをはせる冒険者

多少浮かれてはいるがそこは経験豊富なBランク冒険者、一切の油断なく足を進める『忘れられた黄金』。


「…で、結構な範囲が発光したようだがアテはあるのか?」

「問題ない。あの辺はちょっとした崖になっている所があるんだがな、そこに小さいが洞窟があったはずだ。

とりあえずそこが怪しいと思うんだ。」

「ちょっと!?洞窟って言っても小さいんでしょ?そんな所にダンジョンなんてできるの?」

「過去にそういうことがあったんだよ、小さな洞窟がいつの間にかダンジョンの入り口に変わったことが。他には無人の小屋が城型のダンジョンになったり、小さな孤島が丸々ダンジョン化したこともあるんだってよ。」

「…流石に詳しいな。」

「だろ?」

「すぐ調子に乗らなければかっこいいのになぁ…」


オルスがリーダーをしているのは何も勢いだけではない。

まだ幼いころからダンジョン攻略に憧れ、ダンジョンに関することだけは膨大な知識を誇るのだ。

その経験を他の二人は高く評価してくれているからこそリーダーをしている。


とはいえ先立つものが無ければダンジョン攻略などできるはずもなく、今のボロの装備を買い替える為にドリーマーとして金策をしようとしていた訳だが、出来立てのダンジョンを誰よりも早く調査できるとなれば話は別だった。




「ヒヤッホー、やっぱりダンジョン化してるみたいだぜ。」


小綺麗な石畳の階段を前に興奮を隠せないオルス。

それを横目にエストリアの表情はなぜか青ざめていた。


「…ちょっと階段長すぎない?」


数分前にも呟かれたセリフだが、別にエストリアが怠惰になってしまった訳ではない。


何せここから先はダンジョンの内部、どこに罠があってもおかしくないのだ。

罠を警戒しつつ、発見した場合も状況に応じて回避するか解除するかなど判断しなくてはならない。

さらに微妙な凹凸のある石畳の階段は死角になる位置も多く進行速度に大きく影響を与える。


なのでエストリアが長い階段に嫌気がさすのは仕方がない事だった。


…罠を警戒するのはハーデスなのだが。


「そうだな…先頭はハーデスで、エストリアは一番後ろでいいだろう。」

「分かったわ。」

「…了解。」


出だしは慎重に足を進める3人だったが、ハーデスがある異変に気が付いた。


「…照明が明るすぎて罠など隠せそうにないな。」


そう、照明が多く非常に降りやすい階段になっていた。


「それでも警戒は解くなよ?油断させるためのトリックかもしれないからな。」

「…了解。」


もちろんこのダンジョンの主がトリックなど仕掛けるはずもなく数分で最初の部屋フロアにたどり着いた。




「んー、敵がいないし素人目だけど罠もなさそうだな」


そこはただだだっ広いだけの部屋フロアだった。

ここにモンスターが居て戦闘になるのであればこのくらいの広さが戦いやすいが、そもそも戦いやすい環境自体がダンジョンとしては珍しいのである。


さらに次の通路がすでに見えているし扉すらない。


利便上フロアは『部屋』と表記しているが実際は『一塊の空間』のことであり、フロア内を薄い壁を使い迷路にしたり、水を張った空間に点在する飛び石の上を移動させたりするのはよくあることである。

逆にこのダンジョンのような空間があるとすれば宝箱が置いているとか、広範囲を攻撃できるモンスターが配置されていたりするはず。


不自然に何もない空間を歩きながら、ふと一つの仮説を思いつく。


「もしかしたらこのダンジョンはまだ準備中なのかもな。」


そんな言葉を漏らしたのはオルスだった。


「準備中って…ダンジョンを作っている奴が居るって言いたいわけ?」

「経験的には居ても可笑しくないと思ってるぜ?」


この世界の人間にはダンジョンコアという存在については知れ渡っていない。

ダンジョンを『各地に点在している不思議な空間』と認識しているエストと違い、幼いころからダンジョンについて調べ上げて、モンスターから罠・宝箱に至るまで全ての配置に確かな『知性』を感じていたオルスだからこそ『誰かが意図して作った意思のある空間』ではないかと思ったのだ。


ダンジョンが作られる際の発光現象からたった数十分しか経っていない、それならダンジョンを作り上げているその『知性』が何の罠も用意していないのは当然ではないだろうか?


「ハーデス。ちょっと俺に先頭を任せてくれ。」

「…どうしてだ?」

「このダンジョンどころか全てのダンジョンの秘密が分かるかもしれないんだ、ちょっとワクワクしてきたんだよ。ダメか?」

「…お前がリーダーだからな、俺に聞くんじゃない。」


未知のダンジョンを相手に無警戒など考えられないハーデスだったが、その程度の理性でオルスの情熱を止めれるとは思っていない。

渋々先頭を譲るのであった。


「よし、じゃあ行くぞ!!」

「ちょっ、流石に走るのはまずいって!こら、バカオルスー!!」

「…エスト、大声を出すのも如何なものだと思うぞ。」


何度も言うが、彼らはこれでもBランクの冒険者である。


キャラクター同士の会話って意外に文字数を取りますね。

今回中にも【怠惰】と遭遇する予定だったのですが…


もはやどっちが主人公なのやら。


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