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34、【怠惰】と魔法とネームドモンスター

そんな風にベルとスケルトンキングがコントを披露している中、『蒼天の探求者』の四人も小さく集まりベルたちを町に連れていくかどうかを検討していた。


「モンスターを町に連れていく…ねぇ。テムジンはどう思う?エンシェントドラゴンばっかり目が行っていたが彼女たちも『ネームドモンスター』っぽいし相当ヤバいと思うんだが?」


ネームドモンスターというのは種族や種類としての名前(スライムやマナドールなど)ではなく個体としての名前を持っている(マナドールの中でもフェゴールという名前を付けられている)モンスターの事である。

名前を付けた者がダンジョンコアであっても人間であっても、その個体を特定しやすい別の名前を付けられるということはそれ相応の危険性を持ったモンスターである可能性が高いのである。


例えば、目の前に十匹のゴブリンがいたとしよう。

ゴブリンは人間よりも小型の人型で、肌は緑色のモンスターだ。

そのゴブリンの中で一匹だけ突然変異でもしたのか、赤色の肌をしたゴブリンが一匹だけ混ざっていたような場合を想定してみてほしい。

九匹の緑色の中に一匹だけ赤色が混ざっている中で、他の個体と同じように『ゴブリン』と呼ぶことに違和感を感じないだろうか?

また同じように、そのゴブリンの群れの中に魔法を扱うゴブリンや周りのゴブリンを取りまとめている指揮官のようなゴブリンが居た場合もただ『ゴブリン』と呼ぶのは違和感があることだろう。

そこで赤いゴブリンを『レットゴブリン』、魔法を使うゴブリンを『メイジゴブリン』、指揮官のようなゴブリンを『ゴブリンリーダー』などと呼称するとしっくりくることだろう。


このように、本来の種族以外の名前が付けられているネームドモンスターと言うのは名前を付けられたそれ相応の理由がある厄介なモンスターとなる訳である。 


「彼女たちは人型モンスターの中でもかなり知性的な方だと思います。あの群れを形成しないマーブルウルフを使役…というより調教……これも違いますね…」

「…飼育?」

「…何故かしっくりとくるので飼育でいいでしょう。ともかく文字通りの一匹狼であるマーブルウルフを手懐けて飼育するだけのコミュニケーション能力があるというのは人間でも稀かと思います。それに…」

「武器の使い方がなっちゃいなかったベルはともかく、ベルの姉さんらしいフェゴールの戦闘力がまだ未知数だよな。」

「それについてちょっと気になったことがあるんだな。」


いつもより大きめの声で話に割り込むトントン。

戦闘力に目が行きがちなジャンやモンスターの特徴や生態の知識に明るいテムジンとは違った目線、つまりこのパーティ唯一の魔法使いとして気がかりな点があったようだ。


「お、どうしたトントン。」

「あのフェゴールってモンスター、名称鑑定を使えるって言ってたんだな。名称鑑定は鑑定魔法の中では初歩の魔法だけど、鑑定魔法自体が難易度の高い魔法だから何かの属性魔法も中級位までは使えるハズなんだな。」

「そういえばそうでしたね。」


この世界の魔法はカテゴリー(分類)が細かく分かれている。

俗に属性魔法と呼ばれている火魔法・水魔法(氷を扱う魔法も水魔法扱い)・地魔法・風魔法、相手の傷を癒したり状態異常を回復できる回復魔法、魔法の適性の少ない者でも扱える生活魔法、転移魔法などを含んだ空間魔法、物やモンスターの識別(しきべつ)に特化した鑑定魔法、他にも異常魔法・通信魔法・隠密魔法・索敵魔法などと、ここまででも多くの魔法が登場していたが、それを軽く超える量の魔法のカテゴリーが存在しており魔法自体は当然もっと種類が多くなる。


それだけの種類が存在する魔法であるが、当然と言うべきか詠唱して発動するための難易度、簡単に言えば必要なパラメーターの事であるが、それはそれぞれの魔法によって違う。

フェゴールは例外的に全ての魔法を覚えてはいるが、本来は自分のレベルとパラメーターと魔法の得手不得手に関わる適性によって使用できる魔法が増えていくのだ。

そのため、どれだけ識別魔法の適性が高い者であってもレベルが低いうちは他の魔法を使ってレベルを上げることになるため、フェゴールもこの世界で一般的な攻撃魔法である属性魔法のどれかを使い慣れているハズ、というのがトントンの予想であった。


「それだけの魔法を隠している相手が町に行きたいっていうのはモンスター側のスパイか何かに違いないんだな!」

「いやいや、言いたいことは分かるが魔法が使えるのとスパイは直結しないだろう。」

「ですが一理あると言えます。」

「テムジンもそう思うのか、まぁ確かにモンスターである時点で町に入れるとは思えないけどよ…」


概ねベルを町に連れて行かないことが決まりそうな空気になったその時、まだ自分の意見を述べていなかったタージャがこの場の空気に逆風をもたらす。


「彼女たちは珍しいモンスター…だからこそ町で…研究してもらうというのは?」

この世界のネームドモンスターは『名前を付けると強くなる』のではなく『強いから名前が付く』ということです。


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