表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/275

3、【怠惰】と冒険者

「じゃあ早速シャワー浴びようかな。」


ダンジョンコアの服や鎧は本人の魔力を具現化させたものであるため、魔力を切ればすぐに裸になれる。

そのため脱衣所は必要ない。


さっきまでスタミナ切れを起こしていたはずの【怠惰】はスキップしながらシャワー室に向かうのであった。


ここで一つの疑問がある。


『シャワー室を作るためのDPはどこから来たのか』を。


答えは単純、『最初から持っていた』である。


生まれたてのダンジョンコアは最初に1500DPが与えられており、ここから1m×2mの部屋(フロア)とも言い難いほどの小部屋を作り、その小部屋の壁にシャワーを作ったのだ。


部屋フロアのほうは限界までサイズを小さくしたが、転移魔法の応用で外に水を出す排水機構を取り付けたためシャワー含めて250DPとなった。


なお、最初の20m×20mの部屋フロアは500DPである。シャワー室2つでまともな部屋フロア一つ分であり、そんな部屋は大体のダンジョンコアは作らない。


一般的なのは生活魔法と呼ばれる下位魔法の一種である『洗浄』を使うことで、もちろん【怠惰】も使うことができるのだがシャワーの魅力には勝てなかったようだ。


普通のダンジョンコアであれば、この初期DPを用いて1500DP以上の黒字に持っていくことがダンジョンコア最初の試練となる。

最初に与えられている部屋フロアは細かく区切って迷宮にするにも、ボスモンスターを置いて迎撃するにも狭く、冒険者に魅力的に感じてもらえるよう宝箱も配置しなければならない。


実際初期DP以下でとどまるダンジョンコアも珍しい事ではないが、自然から回収する僅かなDPによって詰むことはめったにない。


なお【怠惰】はあえて人目につかない自然豊かな場所にダンジョンを構えたことによって毎日50DPを自然回収することが出来る。シャワーを浴びながらそれを確認した【怠惰】のほほが緩む。


これだけあれば目標のグータラ三昧は約束されたものだと確信したのだ。


その確信を生む要素はもう一つ。


「やっぱり罠とかフロアって高いなぁ、ん、ベットが1DP!?

 本も!インスタント麺も!冷蔵庫にクーラーに…コンセントも付けれる…テレビは無いのかぁ…」


たとえテレビがあっても電波がない。


それはともかく、ダラダラするためのアイテムの価格がすべて1()D()P()だったからだ。


【怠惰】の特性がダンジョンに影響を与えているのか、ベッドも娯楽(本やゲーム)も食事(カップ麺やパン)も何もかもがタダ同然の1DP。


よく確認していなかったシャワーも1DP、どうやら排水機構が高かったようだ。


何にせよ、これから始まるグータラ三昧な生活にアホ面を隠せない【怠惰】。


そんな今の彼女は完全に油断しきっていた。


半径1キロのダンジョン範囲内に侵入した3人の冒険者の反応を見落とすくらいには。







♢♦♢






木が一本生えていればそれは『木』


木がいっぱい生えていればそれは『林』


木がもっといっぱい生えていればそれは『森』


では『森』が集まったかのようなこの場所は何と呼べばいいのか。


いや、この世界に漢字の概念は無いのだが、この場所に相応しい名前が偶然にもついていた。




ガンギルオン大樹海。




薬草・鉱石・野生動物・モンスターと、ほとんどの素材がこの大樹海で手に入れることが出来る。


さらに大樹海に入って数時間程度の位置にはダンジョンも多く、それを囲むように街や村も数多く点在していた。


それでいてなお新素材、新モンスター、新ダンジョンの報告が絶えない。


さらに人が集まるこの大樹海に注目したダンジョンコアたちがこぞってダンジョンを作りに来るためさらなる調査のため人が集まる。

そんなスパイラルを経て長い間調査が進められたが、大樹海の深部は全く解明されていない。


そんな中、大樹海深部の調査を目的とした長期間の遠征で多量の報酬を得ようと夢見る冒険者たちが現れだした。


一攫千金を賭けて危険伴う遠征をおこなう冒険者を一般の冒険者と区別するため、ガンギルオン周辺の冒険者ギルドでは彼らのことを『ドリーマーズ(夢見る者たち)』と呼んだ。




それは【怠惰】が洞窟をダンジョンに指定する少し前までさかのぼる。




「クッソッ、こりゃ今日も帰れなさそうだな。」


使い古された剣と盾を持ったリーダーの男、オルスが空っぽの布袋の中を覗きながら吐き捨てるように言った。


「そりゃね、誰かさんが諦めてくれたらアタシたちも楽なんだけどねぇ?」


オルスの後ろに続く杖ととんがり帽子の女性、エストリアはやれやれといった感じで茶々を入れる。


「…リーダーがその程度で諦める訳がない、時間の無駄だぞエスト。」


エストリアの後ろに続くのは背中に弓、手に短剣を持った静かな中衛の男ハーデスが諭す。


「そういうこった、その『誰かさん』は負けず嫌いなんでね。」

「知ってるよ、ったく。」


軽く言い合う二人を無視し周辺を警戒する最後尾のハーデス。

狭い通路や相手の場所が分かっているならともかく、全方位の見通しが悪い大樹海はどこから敵に襲われてもおかしくない。

そのため魔法使いのエストリアが中心で、短剣も弓も扱える器用貧乏なハーデスが後衛をしている。


しかし前衛のオルスがエストリアとの会話に集中しており結局ハーデスだけが周りを警戒する羽目になる。


すでに一か月はガンギルオン大樹海で調査を行っているBランク冒険者かつドリーマーズである彼らのパーティ『忘れられた黄金』はいつもこの調子である。


彼らは魔力を帯びた特殊なコンパスを持っているため帰るだけならそこまで苦労はない。


だがここで引き返せば森を彷徨さまよい歩き、点在する木の実や野草、時に野生動物を狩りモンスターとの戦闘を極力避けながら調査したこの一か月が水の泡である。


幸いにもエストリアが簡易の調合台を持ち込み現地の薬草で粗悪なポーションを作り続けてくれたため本命のポーションの在庫にはかなり余裕がある。


何よりもリーダーが頑固なオルスである時点で調査の続行は避けられなかった。


「んじゃ、次はこっちのあたりを──」


オルスが次の目的地を決めようとしたその時。


視界の右側辺りの()()1()()()()()()()()が輝きだし、そしてゆっくりと光が収まってゆく。


突然の出来事で硬直してしまった3人だが、先に我に返ったオルスが口を開く。


「あ、あれってさ、確か新しいダンジョンができる時に起こる発光現象ってやつか?

俺は実際見たことないけどよ!」


それを聞いた二人の目にも輝きが戻ってゆく。


なにせ現在地は最寄りの町から約十日ほどの距離だと思われる。


そんな遠くにあるダンジョンを初めて発見したとなれば情報量だけでどれだけ儲けがでるか。

この一か月の苦労を引いてもおつりが来るのはまず間違いない。


「初めて『誰かさん』の言う通りにしてよかったと思ってるよ。」


皮肉を言いつつも喜びを隠しきれていないエストリア。


「…このまま引き返して場所の情報だけ持ち帰ってもいいんだぞ?」


千載一遇のチャンスでも慎重な意見を出すハーデス。


しかしリーダーがオルスである時点で答えなど決まっていた。


「それじゃぁつまんねぇだろ?中もきっちり調査してやる!」


そうして『忘れられた黄金』の3人は新たに出来たばかりのダンジョン、【怠惰】の作ったダンジョンに向かうのであった。


【悲報】最初にまともな名前を付けられたキャラクターがモブ臭のするオッサン。



2018/06/17

×「やっぱり剣とか鎧ってとんでもなく高いなぁ、ん、ベットが1DP!?

 本も!おにぎりも!冷蔵庫にクーラーに…コンセントも付けれる…テレビは無いのかぁ…」


〇「やっぱり罠とかフロアって高いなぁ、ん、ベットが1DP!?

 本も!インスタント麺も!冷蔵庫にクーラーに…コンセントも付けれる…テレビは無いのかぁ…」



×食事(カップ麺やパンやおにぎり)も何もかもがタダ同然の1DP。


〇食事(カップ麺やパン)も何もかもがタダ同然の1DP。



今後の展開に合わせて修正します。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ