21、【怠惰】とドッキリ
前回より
「スケルトンキングとはその名の通りスケルトンの王様である。」
あまりにも短くて可哀そうだったので説明文を盛りました。
魔力の渦を使いスケルトンキングを召喚した場合、一日目で一体、二日目で二体と増えていく。
スケルトンキングはスケルトンを一日で100体召喚することが出来る。
そのため、召喚されるスケルトンの数は一日目は100体だが、二日目は2体のスケルトンキングがスケルトンを召喚するため合計は300体となる。
同じ要領で考えれば三日目は600体、四日目は1000体、五日目は1500体。
もしも、この1500体のスケルトンが死亡したときに一体につき1DPが追加されるのであれば初期DPと同じ1500DPが手に入る。
さらに言えば、この計算は魔力の渦一つあたりの数値なので、魔力の渦を増やせば増やすほど効率は倍になっていく。
その魔力の渦も一つ100DPなので、この方法が使えるのであれば魔力の渦を召喚し増えたスケルトンキングが召喚するスケルトンを間引いてDPを獲得し、また新たな魔力の渦を召喚…というサイクルが出来上がってしまうのだ。
これが完成したならばこのダンジョンがDPに困ることはほぼ無くなるだろう。
しかし何度か繰り返したように、この考えは『召喚したスケルトンから1DPが回収できるのであれば』という前提が必須である。
もしDPが回収できないのであれば折角作った魔力の渦の意味がなくなる。
「というわけで、まずは一体だけ、ね?
沢山並んだスケルトンを想像したら怖くて眠れなくなるとかそんなんじゃないけど一体だけね?ね?」
そう言いつつも足がガクガクと震えていて顔は真っ青になっている。
スケルトンキングが一体だけでも一日あたり100体のスケルトンが増えることには気が付いていないようだ。
本音が隠れ切っていないベルの主張だったが、フェゴールの脳裏には別の視点からの考えがよぎった。
「そういえば一日ごとに四桁や五桁のスケルトンが増えても待機する場所が無かったわね。」
そう、今のダンジョンの規模では各フロア中に大量のスケルトンを待機させるだけの空間が無いのである。
ダンジョンの外側に広がる半径一キロのダンジョン範囲内に待機させても、おそらくすぐに溢れてしまうだろう。
もちろん増えたスケルトンを即座に間引いてDPにしつつフロアを拡張していけば何の問題もない事なのだが、ダンジョンにやってきた相手に回復魔法をかけるほどのお人よしであるベルが間引きなど出来るわけがない。
ベルの代わりにフェゴールが出来れば良かったのだが、攻撃力が0のフェゴールではスケルトンを倒すことが出来ない。
このダンジョンでスケルトンを躊躇なく倒せるのは、このダンジョンの出身ではなく何時居なくなるかも分からないマーブルウルフだけなのである。
「でしょ!じゃあ一体だけ召喚するよー。」
そんな問題にベルが気づくはずもなくスケルトンキングを召喚した。
召喚されたスケルトンキングはガイコツであるため目も無いのだが辺りをキョロキョロと見渡しており、数秒後にベルと視線が合った。
その後ゆっくりとベルに近づいていく、のだが──
「ぎゃわわゎゎ!!やっぱり怖いいぃぃぃ!!」
カタカタと音を鳴らしながら近づいてくる姿は一体だけでも十分にホラーな光景だった。
ベルは震えながら後ずさるが、このダンジョンのコアルームはそこまで大きくないためすぐに壁にぶつかる。
スケルトンキングとベルの距離が徐々に縮まっていく。
「おおおお姉ちゃん、助けてぇ!」
「大丈夫よ、このダンジョンならスケルトンキングでも攻撃力は無いから。」
「そうじゃない!そうだけどそうじゃないのぉぉ!!」
悲痛な叫びをあげるが無駄に終わり、ついに隅にまで追い詰められてしまった。
目を閉じたかったが、何をされるか分からない以上は目を離すことが出来ない。
どうすることもできないためパニックになっているベルの前に差し出されたのはスケルトンキングの右手だった。
「…握手を…したかっただけ…?」
先ほどまでに恐怖に支配されていたベルは目をパチクリとさせた。
それと同時に申し訳ないと思う気持ちにかられてしまった。
「…ごめんね、見た目だけで怖がっちゃって。」
スケルトンキングの見た目はガイコツそのものでありとても怖い。
しかしその中身はダンジョンコアに忠誠を誓う一モンスターである。
その点ではスライムともマナドールともマーブルウルフ…は餌に釣られただけだが、ともかく他のモンスターと何も変わらない存在である。
そんな忠誠を示そうとしていたスケルトンキングを見た目だけで判断して怖がってしまった。
これから多くのモンスターを率いることになるであろうダンジョンコアの器としてはずいぶんと小さかった、とベルは痛感したのだ。
まだビクビクとはしているもののスケルトンキングが差し出した右手にそっと手を伸ばす。
が、やっぱり怖かったため目を瞑ってからスケルトンキングの手を握るベル。
ヒトのような柔らかさはなく、ゴツゴツとしていて細い手の感触。
温もりなど一切なく冷えた手のひらからは、不思議と不快感は感じなかった。
段々と恐怖心も薄れてきたため、閉じていた目をゆっくりと開いた。
そこにはスケルトンキングの右手だけがあった。
少し離れた位置で、右手の無いスケルトンキングが『ドッキリ成功』とでも言いたげにカタカタと笑っていた。
「ぎ、ぎ、ぎ…」
「ぎ?」
「ぎぃぃぃややゃゃゃゃ!!」
今日一番のリアクションを見せたベルはそのまま気絶してしまった。




