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2、【怠惰】のダンジョン

「ふー、問題なくついたみたい。」


周りは木に囲まれキレイな空気漂う空間の中に切り立った崖が目に見える範囲で広がっており、その一か所に洞窟がぽっかりと口を開けている。


たった数歩も歩きたくない【怠惰】は見事に洞窟の目と鼻の先の位置に転移していた。

入り口はまだマシだが、十歩も進めば人一人が通れるかも怪しい隙間しか空いていない。


「えーと、洞窟の中で『この洞窟をダンジョンにしたい』って思いながら地面に手を付けばいいんだっけ?やったこともない事が記憶の中にあるってやっぱり違和感がー。」


補足をすると、ダンジョンに設定した洞窟の入り口から半径一キロの範囲もダンジョンの範囲となり、そこに人間が存在していれば感情を糧に出来るしDPも加算される。

また、ダンジョンコアは自分のダンジョンの範囲に存在している人間やモンスターの数、現在地、予想生産DP量などを確認することもできる。


さすがに棒立ちではダンジョンは出来ないので二、三歩ほど洞窟の中に入り、腰を曲げ──


「いでででで。全然曲がらないよぉ。」


──コルセットではさすがに腰は曲がらない。


いや、むしろ原因はコルセットではなく【怠惰】本人の可能性もあるのだが。


仕方がないのでしっかりと腰を落とし、改めて願う。


「この洞窟を私のダンジョンにしまーす。」


気の抜けた掛け声とともに周辺の変化を感じた。


まず入り口が広がり、数人が並んだ状態でもスムーズに入れるように整えられた。

周りは光る石で照らされ、その先は石畳の階段になり奥へと続いている。


それ以外では、この周辺の野生動物の位置が大体分かるようになった。

先ほど補足したダンジョンコアの能力は野生動物にも適用されているようだ。


なお予測生産DP量は0である。


先ほどよりも大きく口を開いた洞窟の前で【怠惰】の表情はなぜか青ざめていた。


「…ちょっと階段長すぎない?」


つぶつぶとボヤキながらも階段を下る。


実はダンジョンコア共通の能力として、自分のダンジョン内では自由に転移出来たりするのだが今回はダンジョンがうまくできているかの確認も含めて転移無しで進むことにしたのだ。


『ダンジョンがうまくできたか』ではなく『自宅に欠陥がないか』に近い感覚ではあるが。





数歩降りては休憩を繰り返しつつ、ついに20m×20m程度の天井の高い空間へとたどり着く。

一見広そうだが、冒険者とモンスターが入り乱れての戦闘となるとかなり狭いだろう。


先ほどと同じ光る石によって照らされた部屋は規則正しく並んだレンガでできており石畳の階段よりも見栄えがいい。

階段を下りた先にあるこの部屋フロアは酸素が薄くなるはずだがダンジョンの作用か、不思議と息苦しさは無かった。


ちなみに先ほど降りてきた階段は無警戒の冒険者であれば30秒程度で降りることが出来る長さで、罠を警戒しながらだともう少しかかる程度である。

次から【怠惰】がこの階段を利用することはないだろう。


その階段側の入り口の対面にはもう一つの通路が見えており、それ以外の通路は見当たらない。

階段で疲れ切っている【怠惰】には20mが途方も長く感じたが、転移は使わずに歩いてゆく。


その後も短めの通路を壁にもたれかかりながら進み、たった2部屋フロア目ながらこのダンジョンの最深部であるコアルームにたどり着いた。


「よ…ようやくついた、ここが私の()()になるんだ…ふぅ…」


息も絶え絶えに目の前に広がる清楚なタイル張りの部屋を眺める。

先ほどの部屋フロアより狭く10×10程度だろうか。

その壁面近くには蛍光グリーンの宙に浮かぶ操作盤が目立っていた。


コアルーム。

それは本来であれば、ダンジョンの最奥に存在しているダンジョンコアの最終防衛ラインである。

とはいえ、ダンジョンコア共通の能力で部屋フロアや階層の増築、モンスターや罠の購入・設置などはどこでも行うことができる。

コアルームの真価は二つ。


一つ目は、ダンジョンコアではない者でもダンジョンの監視と操作が行えること。


二つ目は、コアルーム内ではダンジョンコアの戦闘力が増加すること。


ダンジョンの監視と操作を行うのは大体が知性を持った人型のモンスターで、少数派として奴隷契約した街の住人や冒険者、さらに少数派は危機の報告だけできる知性の低いアンデットモンスターなどになる。

どのパターンでもコアルームには一定の戦力が常に待機していることになる。

それに加えてダンジョンコア自身も戦力としてカウントできるため、コアルームの大きさにもよるがダンジョン内で最も戦力の高い場所になる確率が高い。


それゆえコアルームはダンジョンコアにとってダンジョン内で一番安全な場所なのである。


そんな最終防衛ラインであるコアルームにたどり着いた【怠惰】は思う。


「ちょっと疲れすぎたー、ベッドよりもまずシャワー室が優先かもしれない。」


制御盤をちょちょっといじり、コアルーム(最終防衛ライン)に湯浴みをするためだけの部屋を作るのであった。

後で本文にも書く予定ですが、ダンジョンコアの記憶の中にはこの世界にとってオーパーツになりえる科学的な物品も含みます。


なので、今回登場した「シャワー室」などはダンジョンコア達には(知識としては)一般的です。

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