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185、新米戦:脱出

モロハが振り向いたときには既に何者かは逃げ去るように背中を向けて走っている所であった。

後ろ姿からでもフリフリと揺れ動いているのが分かる猫耳とフサフサな尻尾、ベルの配下であるケットシーがなりふり構わず高台の隅を目指して駆け抜ける。


【鋼鉄】が陣取っていたこの場所は円形のダンジョンの中央に相応しいサイロのような形状とそれに巻き付くように螺旋階段が付いた建物だが、ケットシーは階段を無視してダンジョンの入り口がある方向に向かっているようであった。



「…敵?」

「戦う気はこれっぽっちも全く全然ないニャ~はいバイバイさいニャら~!!」

「…敵!」

「な~ん~で~ニャ~!!」



問答無用とばかりに阿鼻叫喚するケットシーに無情にも殺意を向ける侍ガールは油断なく刀をいつでも抜けるように手を構えながら飛び込んだ。

その様子を横目で確認しつつも言葉通り応戦する気の無いケットシーはネコまっしぐらに走り抜けるが、彼女もまたベルのダンジョンで生まれたモンスターであるので『【怠惰】の烙印』により敏捷が0になっているため大きく離れていた距離はあっという間に縮まっていく。



「うーん、転移(テレポート)は間に合いそうにないのニャ。それなら、こういうのはどうかニャ!?」



モロハの魔の手があと少しでケットシーに届きそうになったその瞬間、目の前から突然ケットシーの姿が消えた。

否、ケットシーが高台から飛び降りたのである。


当然無策に飛び降りたわけではない。

ケットシーはとある呪文を唱えていたのだ。



「集え栄養、溢れよ水分。我が望むは天まで届くいつわりの大樹!いでよ『ウドの大木』!」



魔法が発動すると共に、鉄の壁を突き破って巨大な木のような植物が一直線に、それも壁から生えているために地面と平行にグングンと成長し始めた。

いや、魔法の力によって作られたそれの成長速度は生半可(なまはんか)なものではなく、速度だけで比べればフェゴールが使用していた風爆(エアボム)を自身に当てての移動速度よりも速いのである。


そもそもウドの大木が呪文がどういうものかと言うと、非常にやわらかいため攻撃にも防御にも建材にも使えない、ただただデカいだけの、木のように見えるが木ですらない植物を急成長させる魔法である。

使用用途が限りなく無いくせに何故か上級魔法である点もこの魔法の難点であり、ハッキリ言えば不遇魔法である。


そんな魔法を唱えたケットシーは自身が成長させた植物の先端に上手く飛び乗り、そのままダンジョンの入り口を目指して加速したのだ。



「どうニャ!これで手も足も出ないニャ?」

「…刀は出せる。」

「ニャ!?」



突然現れた植物に慌てた表情も見せずにモロハは自らの刀をウドの大木に向けて切り掛かった。

軟らかな偽りの木は紅いオーラを纏っていない一撃でさえも受け止める事は出来ず、あっけなくキレイに輪切りとなってしまった。


刀を振りぬいたそのままの勢いでモロハは傾いた植物に飛び乗り、その傾斜を最大限に利用して先端までの道のりをスルスルと滑り抜けた。



「…居ない?」



だがその時にはケットシーは転移(テレポート)を発動させてベルのダンジョンにたどり着いた後であった。

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