182、新米戦:モロハVS超合金ゴーレム1
その時、大地が揺れた。
見上げるほどの巨大なボディは見ての通りの超重量、その圧倒的な質量はこの場に召喚されただけでズシンと辺りに圧迫感を広げた。
全体的にグレーに近い黒色だが、何故か塗装でもしているかのように赤や黄色のアクセントカラーが差し込まれている。
腕には鎖に繋がれた巨大な鉄球を持っているが、軽々しく持ち上げられたそれからは重さを殆ど感じさせない。
【鋼鉄】の切り札、超合金ゴーレムが今起動したのだ。
「よっと。」
軽く跳躍した【鋼鉄】は超合金ゴーレムの胴体の凹凸を利用してどんどん体を上ってついには頭の上にたどり着き、その場でいつもの仁王立ちを決める。
「さぁ【諸刃】よ!誇り高き挑戦者よ!こいつこそがワシの信念であり、情熱であり、ロマンである!この高い壁を見事超えてみるんじゃな!」
【鋼鉄】が無駄に大きい声音で語り終えたと同時に超合金ゴーレムが動き出した。
今までのゴーレムよりも大きいがその動きはゴーレムとは思えない程に俊敏で、しかも力強く、手に持った鉄球をモロハに向けて斜め上に放り出した。
サイズ感が全然違うがその姿はまるで砲丸投げのようだ。
だが比較的俊敏であっても所詮はゴーレムなので、相手が攻撃姿勢に入ったのを見てからでも回避行動は間に合う。
モロハは超合金ゴーレムの脇に回り込むかのように横方向に走り出しだして、鉄球を避けつつ距離を詰め始める。
「まだじゃ!」
見え見えの攻撃が避けられるのは当然想定の範囲内である。
軸をズラされた超合金ゴーレムは鎖を巻き取りながら体をひねると、まだ空中に浮かんだままだった鉄球がその軌道を変えてモロハの後方から飛来する。
対してモロハも後方からやってくる鉄の塊に気が付いた。
吸い込まれるようにホーミングしてくる鉄球に対して避けるだけではさばき切るのは困難だと判断したモロハは自信の刀に紅いオーラを纏わせた。
そして──
「……ッ!?」
──咄嗟にオーラを四散させて刀の峰で鉄球を受け流したのだ。
直撃こそ避けれたが受け流しきれなかった衝撃が痛みとなって全身を駆け巡った。
その様子を見て【鋼鉄】は満足げに頷いた。
「やはりその刀はこの程度の攻撃ではビクともせん特別製のようじゃな。あれだけゴーレムと戦い、更には鉄の壁を切っても刃こぼれすらせんのだからのぅ。きっとこの超合金ゴーレムですら一撃で切り伏せる事が可能なんじゃろう?だからこそ鉄球を切るのを諦めた、そうじゃろ?」
「……」
「お前さんの技は相手を真っ二つにする事しか考えておらん。そんな技を自分に向かってくる鉄球に使ったところで鉄球の勢いを殺すことは出来んからのぅ。お前さんは名前通り攻撃力は素晴らしいが、逆に守りが難点という訳じゃ。」
痛みに耐えながら苦い顔をしていたモロハの表情が図星を付かれたことでさらに曇り始めた。
ベル「スゴイ!今回は戦闘描写がカッコいい!」
作者「今回『は』」