180、新米戦:忘却するネコ
元々の数でも圧倒的だったスケルトンキングだが召喚も使用し始めたことによってポップコーンが膨れ上がるかのように爆発的な人口密度の上昇を引き起こした。
簡単には乗り越えられないように高くそびえ立っていた防壁から簡単に溢れてしまうほどの骨の山。
「これが骨密度ってヤツじゃな。」
「意味が違うニャ。」
「細かい事は気にするな!「細かくないニャ!」ともかく折角の補給を急いで受け取らねばな、ゴーレム!!」
ケットシーのツッコミを一切意に介さずに【鋼鉄】が叫ぶと、それに呼応するかのようにスケルトンの山がどんどんと削れていく。
スケルトンに覆われて見えないが、どうやらゴーレムたちが大きく腕を振り回して攻撃しているようだ。
ベルの生み出した低耐久のモンスターと巨体を乱暴に振り回せるゴーレムだからこそ成せる驚異の処理効率をたたき出しつつ、増えたDPで更なるゴーレムを生み出してさらに効率を引き上げていく。
増えては減り、また増えては減り、波のように揺れ動く骨の様子はまるで地獄が波打っているかの如く。
あまりにも迫力が強いので、この場にベルが居れば一瞬で気絶していたであろう。
【鋼鉄】の戦力が増えればベルの勝利は当然遠のくのだが、そもそもベルが目指しているのは二位なのでそのあたりの問題もないであろう。
ベルのダンジョンに向かったゴーレムも現在は崖に引っかかっているので、今のうちに【鋼鉄】がモロハを打ち倒せば全てはベルの、そしてケットシーの思惑通りなのだ。
「…うん、何も問題は無いハズなのニャ。」
「どうしたネコよ。」
「いや、なんだか一つ忘れているよ~な気がしてるよ~ニャ?」
「…ふむ?よう分からんが、忘れるような事であれば大したことでは無いんじゃろ?」
「そうかニャ?なんだかそんな気がしてきたニャ。」
二つのダンジョンが協力してモロハを倒す。
その共通の勝利条件を果たすためならば確かに何も問題は無い。
しかしこの新米戦における勝利条件はダンジョンコアを倒す事一つではないのだ。
どこかには存在していなければならないモロハのダンジョン、その存在が二人の頭からうっかり抜け落ちていた。