160、新米戦:観客の反応
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「モンスター軍団による数と力のぶつかり合い、冒険者としての戦いや人間同士の戦争ともまた違う迫力と緊張感、これがダンジョンコアの戦いってヤツなのか……モロハはともかく…」
「ベルの固有スキルってアレだったから心配だったけど、見た目のインパクトだけは思った以上に凄いよね。」
「……エンシェントドラゴンの時もそうだったが、ベルの能力を知らない者から見れば圧力は凄まじいだろうな。少なくとも俺は情報無しにベルとは戦いたくないと思った。」
「ああ、俺もだ。」
「わたしも~。」
背もたれにググっと力を入れて体を伸ばしながらオルスが小声を零すと、エストリアとハーデスもまた足腰をブラブラと揺らしながらオルスの話に小声で付き合う。
彼らが小声なのはもちろん、ベルの正体を正確につかんでいるのが彼らだけしか居ないからである。
ソフランもベルがダンジョンコアであると数日前から掴んでいたが、ご本人から直接聞いたどころか固有スキルの件まで知っている『忘れられた黄金』の三人の方が情報戦では上回っているだろう。
『【怠惰】の烙印』は五大パラメーター全てが0になる代わりに召喚に必要なDPも1になる、もはやお馴染みのスキルである。
そんなトンデモスキルだが、その存在を知っている人物はベル本人とベルが生み出したモンスターたちと『忘れられた黄金』の三人だけであり、意図して隠している訳でも無いにしては意外にも少ない。
その知名度の低さとトンデモっぷりが何故か初見殺しとして機能を果たしているようで、『忘れられた黄金』の三人以外はベルの持つ見掛け倒しの戦力に騙され驚愕の表情を隠しきれずにいた。
人間はもちろん、ダンジョンコアも、である。
「スケルトン……じゃねーな、ありゃキングだ。」
「あらあら~、あんなところに放り込まれたら私たちが骨になっちゃうわ~。」
「……エンシェントドラゴンの居たダンジョンの周りってそういえばスケルトンが多かったよな?」
「スケルトンキングがいっぱい呼び出すからでしょうね~。って事はベルは全然本気を出してないのね~。」
「マジかよ…」
「勝てると思うか?」
「たとえゴブリンだったとしてもあの数は私の大盾よりも大きいですよ。勝ち負け以前にそもそも守り切れません。」
「弓だと、手数、足りない。」
「お、オイラの魔法じゃ範囲攻撃は出来ないんだな。」
「こりゃスゴいわー!何や裏はありそうやけど見た目はえげついやないか!」
「あ、さっきの胴元の姉さんにぇ。」
「そういうアンタはさっきの気前のええ人間さんやな、どもー。」
「どもーにぇ。ちょっと聞きたいにぇけど、ダンジョンコアから見てもあの量のスケルトンキングは異常にぇ?」
「せやな。あんだけのモンスターを並べようと思うたらDP……まぁ、ウチらが使っとる金みたいなんがたんまり必要や。今回の掛け金じゃギリギリ二体って位やないか?」
『届かぬ楽譜』のトリルとソフラン、『蒼天の探求者』のジャンとテムジンとタージャとトントン、そしてオニキスと胴元のダンジョンコアがそれぞれ意見を交わしているが、やはり地面を全て白骨で埋めるほどのスケルトンキングは誰も見たことが無いようだ。
「……」
そして一人だけ余ったアルフレッドは静かに映像を眺めていた。