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118、【怠惰】と罠の正体

風に乗り空を舞うその姿はまさに優雅の一言に尽きる。

谷間の淵のギリギリを縫うように現れた緑色の人影は瞬く間に飛来して落下しかけていたベルを抱え込み、そのまま崖の上まで運んでそっとおろしてくれた。



「えーと、助けてくれた…んだよね?ありが──」

「──一応確認しておきますが、貴方が生まれたばかりのダンジョンコアの一人、【怠惰】で間違いありませんですわね?」

「あ、うんそうだよ。できればベルって呼んで欲しいな。もしかしてお姉さんもダンジョンコア?」



ベルの言葉をぶった切って鋭い目線で見つめる何者かにベルはいつも通りの対応を返す。

…お姉さんと呼んだ時に相手の目つきが一気に緩んだことにベルは気づかなかったようだ。



「ええ、わたくしこそがこのダンジョンの作り手にして主、ダンジョンコアの【突風】ですわ。……ダンジョンの視察に自ら訪れる事はとても素晴らしい経験だと思いますけど、もう少し緊張感を持った行動をしていただかないと命なんて軽く吹き飛んでしまいますわよ。」

「ううぅ、比喩じゃなくて本当に軽く吹き飛ばされたんですけど…」

「ふふ、そうでしたわね。」



微塵の隙も感じさせない優雅な振舞いで微笑む【突風】だが、もしこの場に『忘れられた黄金』のオルスが居たら「お前誰だよ!?」などとツッコミが入っていたことであろう。

実のところ今まで見せてきたキツい言動と人間を敵視するような思想は確かに彼女の性格の一つではあるのだが、同族(ダンジョンコア)に対してはかなり世話焼きな性格であったようだ。


ベルが生まれた瞬間【突風】はベルに対してダンジョンバトルを仕掛けるような発言をしていたが、あれはあくまでベルがダンジョンコアとしてやる気を出してもらうための考えであるが、今のベルの自ら学ぼうと努力している(ように見える)のでそれを心から喜んでいるようであった。


流石にダンジョンの中まで観光気分で来たとは誰も思わないだろう。



「ところでそこのマナドール、でよろしいのですわね?どうやら魔法で罠を感知しているようにお見受けしましたが、そればかりに頼り過ぎるのはオススメできませんわよ。」

「……どういう事?」



自分のダンジョンで起こった出来事ならばダンジョンコアである【突風】ならばどこに居ても見ることが出来る。

先ほどの一件を見ていた様子の【突風】はお節介の対象をフェゴールに切り替えたようだ。



「その手の魔法は罠が()()()()()()()()()には反応しますが、それが必ずしも罠の()()()()ではない、という事ですわ。」



そう言いながらおもむろに天井を指さす【突風】の動作に釣られてフェゴールとベルも上を見上げると、そこには縦長の空洞があり奥にはエメラルドが埋まっていた。

はるか天井に埋め込まれたエメラルドのハズなのにこの場所からでもハッキリと見えるという事はベルが先ほどまで集めていた破片とは比べ物にならないサイズである事は明白である。

ベルはつま先立ちをしながら小さな手を必死に伸ばすが当然ながら届くはずもない。


と、その時、穴の中の大きなエメラルドがいきなり輝きを増しだしたのだ。



「そういう事ね、ベル!!急いでこっちに!!」

「ふぇ!?」



突然の大声とつま先立ちになっていた事が合わさりバランスを崩してしまったベル。

その瞬間を狙いすましたかのように頭上のエメラルドから暴風が轟轟と音を鳴らしてベルに降り注いだ。



「わわうわわわ!!」



あまりの暴風にリアクションすらまともに取れない様子のベル。

どうやらベルを襲った突風の正体はこの穴から一定時間ごとに噴き出すように設定されたこの暴風だったようだ。

真上から地面に叩きつけられて広がった風であれば距離の離れていたベルとフェゴールの二人に吹いていた風向きが違ったのも納得である。


例えるならばスポットクーラーのようなものを強力にしたものだろうか。



「罠を魔法で探知することは便利ではありますが発生源が遠くにあり、人間を感知する機能もないこの罠を魔法で探すのは難しいハズです。しっかりと目でも確認しておきませんと今回のようになってしまいますよ?」

「なるほど…流石はダンジョンコアの先輩ですね。」



『先輩』という単語でまたも表情が軟化した【突風】。

やっぱり他人に頼られると嬉しくなる性格のようだ。






「わわうわうわわ~!(早く助けて~!)」

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