第5話
「よお。どうしたお前。また死ににきたのか?」
からかうように言って笑っていた。ケタケタと。
「い、いえ。僕あなたに話を聞きたくて」
「話?なんの話だよ」
「あの、僕漫画家なんですけど、全然ダメダメで、だけど今度またチャンスをもらえそうで。だから、その…」
「結局なにが言いたいんだ?」
「僕が生き返るきっかけをください」
「生き返るも何も、お前まだ生きてるぜ」
「いえ、今の僕は死んでいるも同然なんです。日々の生活をなんとなく過ごしていて、生きてる実感がないんです」
「なるほど。だからお前は死ねないんだな。生きてる実感がない奴が死ぬなんて無理かもな」
「だけど、あなたが昨日僕の前に現れて僕の中の何かが変わった気がするんです」
「何が変わったんだ?」
「生きてるっていうか、死んでないっていうか、生きなきゃいけないなっていうか、なんだか命を吹き込まれたような感覚になったんです」
「お前はつくづく面白い奴だ。魂取りに来た奴に命を吹き込まれたなんてな」
悪魔は笑っていた。
「で、どうすりゃいいんだ?俺にできることなんてそんなに多くないぞ」
「僕の漫画の題材になってほしいです」
この会話の中で1番の大きな声を出した。
「題材?なるほど。俺をモチーフにした漫画を描くってことだな。いいぜ」
「本当ですか?ありがとうございます。僕とあなたとの不思議な関係をそのまま漫画にしたらきっとリアルで面白いです」
「なんか、お前すげー張り切ってきたな」
「ええ、まぁ。なんか久々の感覚です」
「つくづくお前はおかしな奴だ。悪魔の俺に相談だなんてな」
悪魔は嬉しそうに笑っていた。
竜喜は自分が描きたい内容やそれに関する悪魔のことをあれこれ聞いた。漫画を描くにはそれに関して取材するのが常であるが、誰かに取材するのは久しぶりであった。
「あれ、そういえば悪魔さんってお名前なんでしたっけ?散々聞いておいて名前を聞き忘れていました」
「そういえばそうだな。よーしよく聞け、俺の名前はベルベル。よく覚えとけよな」
「ベルベルさんですね。これからもよろしくお願いします」
「よろしくお願いしますじゃねーよ。お前死なないくせによろしくもクソもあるか」
「それもそうですね」
2人して笑っていた。
元はと言えば自殺しそうな竜喜の魂を回収しに来ただけであり、死なないのならわざわざ竜喜の前に現れる必要は無いのである。
「それで、お前の名前はなんだ?別にお前って呼んでもいいけどよ。俺の名前も教えたしな」
「僕の名前は吹谷竜喜です。よろしくどうぞ」
「おう」
この日はこのへんで別れた。
竜喜は家に帰って早速ペンを持った。
今なら世界を変えられそうな気がした。




