第五章その14
交渉団の代表が宰相サラティエルの私室を訪ねた時、部屋の主は視察から戻ったばかりだったが、それでも嫌な顔ひとつ見せずに突然の来客を迎え入れる。
大げさな身振り手振りを交えた、やや早口の説明を聞いたサラティエルは渋い顔になる。
賊の罪を許すとなると、国王ランフォード二世の名で恩赦を与える事になる。
そして国王にそれを上奏できるのは、宰相であるサラティエル以外にいない。
しばし考えるサラティエルだったが、交渉団の代表が熱心に訴える。
アストリア側のハーディングという男の頑なな態度を嫌み混じりに説明し、それからフィンシードの案を飲む事で両国間に堅い信頼関係を築く事ができる。
それこそがルーンバウム帝国に大きな利益をもたらす最良の道だと。
サラティエルは苦笑を漏らす。
まあそれも悪くない話だ。
取るに足りない賊の罪を許すだけで賠償金が格安になり、有為な人材を失わずにすむなら、悪くない取り引きと言えよう。
恩赦を与えると、サラティエルは明言した。
交渉団の代表は感激して深く一礼して部屋を出て行く。




