第五章その12
賊が投降したという報せを聞いて、エドヴァルド将軍は詰め所を飛び出した。
歓喜に沸くルーンバウム帝国軍兵士の間をかき分けかき分け、大使館の前にたどり着く。
賊も人質も無事だった事はもちろん喜ばしい事だ。
しかしフィンシードの勝手な行動は我慢ならない。
「フィンシード殿!」
大使館から賊と人質が出てくる。
その先頭にフィンシードが立ち、手を振って歓声に応えていた。
「将軍!」
そしてエドヴァルド将軍に気付くと、駆け寄っていく。
「いやあ、将軍が私を信頼して任せてくれたおかげで、無事に事件を解決できました。ありがとうございます」
「え?」
そしてエドヴァルド将軍に耳打ちする。
「将軍、話を合わせて下さい。その方がお互いに得です」
「……………」
後ろを振り返る。
部下達が歓声を上げていた。
もし、ここでフィンシードを責めるような事を言ったら……。
「いや……うむ、フィンシード殿なら必ずやってのけると確信しておりました」
「ありがとうございます。ですが私一人の力で解決できたわけではありません。将軍と、ルーンバウム帝国軍の方々の協力があったからです。功績はここにいる全員で分かち合うべきです」
フィンシードの言葉に、割れんばかりの歓声が沸き起こった。
エドヴァルド将軍も、やれやれと苦笑するしかない。
未だ大使館を取り囲むルーンバウム帝国軍の兵士達の間をかき分けかき分け、小柄な人影が駆けてくる。
「お兄様~!」
フィーナは兄の元に駆け寄ると、そのままの勢いで抱き付く。
「お兄様、ご無事だったんですね。良かった……」
「心配かけてすまなかったな。でももう大丈夫だ」
フィンシードが頭を撫でてやると、フィーナはくすぐったそうに目を細める。
それを見てエドヴァルド将軍もまるで我が子の事のように笑う。
「立派な妹君を持たれましたな」
「ええ……ですがまだまだ甘えん坊ですよ」
「お兄様、ひどいですーっ、私だってがんばったんですよーっ」
ぷーっと頬を膨らませるフィーナ。
そういう仕草をするから、余計に子供っぽく思われるのに。
「そうだな。フィーナもがんばったんだよな」
そしてフィンシードら三人の側では、アリシアとメイド三姉妹が再会を喜び合っていた。
「アリシアさんが怪我でもしてたらどうしようかと……」
「無事で良かったです~」
「……………」
アリシアに抱き付き、大粒の涙をこぼすメイド三姉妹。
三人の肩を叩き、アリシアは笑顔を咲かせて言う。
「三人とも、泣いているヒマはないわよ。すぐに大広間を片付けて、大事なお客様をお迎えする支度をしないと」
アリシアが振り返った先で、アボット達はばつが悪そうに立ち尽くしていた。




