第五章その9
「上手く入れたようですね」
「うん……ミーティアさん、かっこいいなあ」
大使館の様子が見れる窓にへばり付いて、シルヴィールとフィーナが言葉を交わす。
窓が小さくて場所がとれなかったアルドは、二人の頭越しに背伸びをして様子をうかがっている。
無事に大使館に入れたから、まずは一安心である。
「さあフィーナ様、次は私達の出番です。行きましょう」
「う、うん、わかってる」
三人は窓から離れ、立ち上がる。
「フィーナ様、がんばって下さい!」
「大丈夫です、フィーナ様ならきっとできますよ」
「……………」
メイド三姉妹がそれぞれの言葉と一人の無言でフィーナを励ます。
「うん、ありがとう。行ってくるね」
フィーナは笑顔になり、ドアを開ける。
ドアを開けた先には、見張りの若い兵士が立っていた。
「あわわわわわっ」
「すみません、ちょっとエドヴァルド将軍のところに行ってきます」
「はあ……」
慌てる必要もないのにあたふたするフィーナの背中をシルヴィールが押していき、アルドもその後をついて行く。
若い兵士は生返事を返して三人を見送った。
それからしばらく何事もなく三人は廊下を進んでいく。
「あのう、フィーナ様……」
「な、何? どうしたの?」
「先ほどからずっと、右手と右足、左手と左足が同時に前に出ているのですが……」
「あ、ごめんなさい……あうっ」
「危ない!」
足をもつれさせたフィーナを、アルドが危ないところで支える。
「申し訳ありません、フィーナ様。手と足の振り方は好きなようにして構いませんから、何としてでも転ばずに前に進んで下さい」
「う、うん、そうする……」
答えつつも、今度はちゃんと右手と左足、左手と右足の振り方で歩いて行く。
そしていよいよエドヴァルド将軍の部屋に着いた。
見張りの兵士に声をかける。
「え、えっと……あの……その……」
「エドヴァルド将軍に面会をお願いします。フィンシードの妹が来たとお伝え下さい」
「わ、わかりました」
兵士はエドヴァルド将軍に取り次ぐため、部屋に入っていく。
「シルヴィールさん、ありがとう」
「いえ、これくらいお安いご用です」
そんなやり取りをしながら、いっそ門前払いにしてくれればいいのにと、二人は心から願わずにはいられなかった。
ほどなく、部屋のドアが開く
「どうぞお入り下さい」
兵士の丁寧な言葉が、二人には断頭台の順番が来た事を告げる首切り役人の言葉に聞こえた。




