第五章その5
「……行ったか?」
「行きましたね」
「よし、僕たちも行こう」
四人分の足音が遠ざかるのを確認して、フィンシードとミーティアは部屋を出る。
行く先はもちろん四人が向かったのとは反対方向。
トイレと出口が反対方向なのは確認している。
「殿下、わざわざ三人に頼まなくても、当て身のひとつでも喰らわせて気絶させれば良かったのでは?」
「……どうしてそんな乱暴なやり方ばかり出てくるのかな?」
「でも手っ取り早いですよ」
「当て身なんか喰らわせたら痛いだろ。かわいそうじゃないか」
「確かにそうですけど……」
「彼らは敵じゃないんだ。できるだけ穏便に済ませた方がいい」
「はあ……」
納得していない様子のミーティア。
ルーンバウム帝国の兵士とすれ違い、「ご苦労様」と声をかけるフィンシードの真似をして、ふと気付く。
「殿下、私達は閉じ込められていたわけではありません。普通に用事があるから、と言えば出られたのでは?」
「うん、そうだね」
あっさりと認めるフィンシード。
「では当て身を喰らわせたり、トイレに案内させる必要もなかったのでは?」
「当て身はやってないだろ」
ひとつツッコミを入れて、フィンシードは続ける。
「確かにその必要はなかったな」
「ではどうして?」
「あいつらに役割をあげたかったから」
自分の失言を悔やんでいたルナと、その姉と妹。
何かしら役割を与え、達成できれば、その気持ちも楽になるだろう。
「そこまで考えていたんですか」
「あいつらだって、大使館の一員だから」
フィンシードは言った。
大使館の一員だと思うから、何一つ気兼ねする事なく一緒にいて欲しい。
そのために必要なのは、ただ優しい言葉をかけるだけではなく、何かしら仕事をこなし、互いに支え合う事が必要なのだ。
「さあ、今度は僕達の番だ。三人に笑われないよう、きちんと仕事をしよう」
「はい、わかりました」
ミーティアは力強くうなずいた。




