第三章その8
二人が出て行くのを見送った後で、フィンシードとクリーズも応接室を出た。
肩を並べて廊下を歩き、執務室に向かう。
「クリーズはああいう子は苦手そうな気がするな」
「ええ、おっしゃる通りですね」
フィンシードの冗談めかした言葉を、クリーズはあっさりと認める。
「でもそれは殿下も同じではありませんか?」
「……否定はできないな」
フィンシードはやや渋々に認める。
「ですがパワフルな姉としっかり者の妹と、いいコンビだとは思いませんか?」
「そうだな。姉だけだと心配だけど、妹がいれば大丈夫という気はするな」
「ええ、私も同感です。二人ならきっと大丈夫だと思います」
「……………」
さて、二人の事が苦手なのか? それとも気に入っているのか?
隣を歩くクリーズの確信に満ちた笑顔を横目で見て、フィンシードは不思議に思った。
苦労人というイメージのクリーズには珍しい事とも思う。
「ああ、用事を思い出した。クリーズは先に執務室に戻っていてくれ」
「どこへ行くのですか?」
「マリアベルさんのところへ」
フィンシードは経理部参事官を務める女性の名前を挙げた。