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第1章 幼馴染は、ツンデレ  作者: 片倉 雹竜
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じゃじゃ馬姫に首ったけ♪

伴坂夏鈴ともさかかりんと、霧島鮫二きりしまさめじは近所の幼馴染。

高校に進学した春先、夏鈴かりんが河川敷で数人に囲まれていると聞きー・・。


桜咲く二人に、化学反応ケミストリーは起こるのか?


それは、高校に進学し、春を過ぎた頃の事だと思う。


下校の途中、いつものように音楽端末を操作して、お気に入りの曲を聞こうと、イヤホンを耳に差し込もうとした時、突然鳴った携帯電話。


携帯のディスプレイを見やると、ナンバーが表示されている。

・・下の4ケタが「2071」相手は、中学の時から何かにつけて突っ掛かってくる、他校の青也せいやからだった。犬猿の仲とも言うべき間柄で、中学を卒業し、やっとのおもいで、❝腐れ縁❞からも卒業し、

高校からは、何事もない、平和が訪れるものだと思っていた。 そう・・思っていたが、その腐れ縁の人物から電話がかかってきている今、見事にその願望は、もろく崩れ去った。

通話のボタンを押し、即、すぐさま切る。


「正直、関わりたくない・・。」内心、その思いでいっぱいである。

しかし、再び携帯電話は、震え鳴りだす。


「なんだよ?」と、ぶっきらぼうな口調で、電話に出る。


『てめー、電話切りやがったな!せっかく教えてやろうというのに、何だそのものぐさ・・ツーツーツー・・』


通話ボタンを再び切る。 親切に教えてやろうと? 少し妙な予感が頭をよぎった。しかし、なんだか気になり、意を決し、こちらからリダイヤルして、かけなおす。

すると、すぐさまワンコールで電話が繋がった。


「で、【教えてやる】ってのは何だ?」


『ひとからの電話ぁ、 2回も切りやがる朴念仁のクセに。あー、河川敷で伴坂ともさかが集団に囲まれてたぜ?ブチッ、ツーツーツー』


伴坂ともさかが、河川敷で?! すぐさま、椅子から腰をあげ、押入れの竹刀立て入れから、木刀を一本、持ち上げて左腰のベルトに差す。 階段を急いで下り、靴を突っ掛け、多摩川の河川敷に向かった。


伴坂ともさかとは、幼馴染で家は近所。同じ男子高に通う、伴坂ともさか夏鈴かりん

幼少の時から、身体のラインが細く、着るものすべてが似合う為か、中学の文化祭では、クラスの出し物で女装喫茶をやった時は、クラスの女子に良いようにされて、半泣きして泣きついてきてたっけ。。


そんな夏鈴かりんの時もあったな・・と、思い出しながら河川敷を見まわして、探す。


今の俺は、夏鈴かりんを心配している。しかし、心配とは、違う意味・・・・で心配なんだ。



《やめて。これ以上近づいてこないで・・っ》


伴坂ともさか逃げないでくれ・・俺はお前を>


《や、だめ。こないでっ》


伴坂ともさかの周辺の水面には、伴坂の動きを封じようと後ろ手から襲おうとした者、羽交い絞めにしようとした者の幾数人が川に浮き、流されかけている。 これらは、伴坂がはり倒した奴らである。


幼少期の頃から、身体のラインが細く、か弱いという点からか・・それとも容姿の問題からか、誘拐されかける出来事がひっきりなしだった為、伴坂の両親は、【自分の身は、自分で守れるように】と、

護身術を身につけさせていた。加えて、近所に住む幼馴染の、霧島きりしまから、万が一の時にと・・

メリケンサックを持たせていた。。


そのおかげもあってか、【か弱い言葉を吐きつつ、ちゃんと相手を張り倒す】というスタイルで現在に至る。


伴坂ともさか、落ち着けって。俺も、ついさっき気づいたんだって、ほら・・その・・>


《・・やだって、やっ・・!》


「っっ、夏鈴かりん!!!」


橋脚のそばで、伴坂の片手を掴んで離さない人物が、目に止まった。あの態勢は・・まずい。

すぐさま、駆け寄りながら声をかける。


「おいっ、今すぐやめろっ。危ないぞ、離れろっ!」


声をかけたのは、夏鈴かりんにではない。夏鈴に近づこうとしている人物に、である。



《!・・サメっ》伴坂の視界に、霧島おれの姿が目に入ったようだ。


<誰だか知らんが、邪魔するな!俺が先に見つけたんだっっ。・・伴坂ともさか、あのな・・>


《サメっ!》


サブサブ・・・と、川の中に進んでゆく。膝から下に川の流れを感じる。前にすすむにつれて、水量は腰付近まで来ている。。


夏鈴かりんが嫌がってるだろっ、手を放して離れろ。今すぐにだ!」


<ふざけるな!>


ガシッ!と相手の男は逆上したらしく、夏鈴かりんの学ラン第2ボタンと第1ボタンごと思い切り引っ張り、2個ともブチブチッと取った。



《・・て・・・んめェェェェェェェェェェーー!!!!!》


「あっ・・」


途端、目の前で突如、水柱が高くあがった。

突然の激昂である。霧島は、夏鈴かりんが、次どのように動くのかが手に取るように分かり、

同時に理解した。

夏鈴かりんは、入学前から寸法合わせをした時から、学ランをいたく気に入っている。

その夏鈴かりんが、見知らぬ男にボタンを剥ぎ取られた事で、完全に感情起伏のスイッチが切り替わった事を・・。


先ほどまでの気弱な様子から、一変。

毛は逆立ち、幼い顔から夜叉のように口角の皮膚は捻じれ、こめかみには青いスジが入っている。

これは間違いなく、完全にキレている。


その証拠に、胸を張り、普段はしないズボンのポケットに右手をつっこみ、それを横に広げ、左手には、ギラりと光るメリケンサックを付け、拳を握りしめて相手に見せて、堂々の喧嘩腰になっている。

上がった水しぶきが、水面みなもに落ち、夏鈴かりんの制服は肩から背にかけて水っ気を吸い、濡れるが、怒りのせいか、体温が上昇している様子で、肩や背中から水が気化して煙のように立ちのぼっている。



その変貌ぶりには、さすがに相手にしている男も、ヤバイと気づいたようで


<とも・・さ・・か?>


と、眼を丸くして腰が引け気味である。



《やだって言ったら、フツーやめんだろ・・? ゲス


さっきまで、「やんやん」甘い口調で言っていたのは、一体どこへいったのか。



<げ、ゲス男!? 俺は、俺はただ、お前の・・>


伴坂が自分の襟首付近から、何かを垂直に右手で引き抜いて見せる。



《俺が、・・なんだって?》


ゆっくり言葉を吐きながら、伴坂の口角があがり、笑んでいる。

右手の獲物が、夏鈴の頭上に、タテ長にそびえ立っている。平たいソレで切りつけられれば、傷口は縫合しあう能力がうまく働かず、やがて化膿を引き起こし、皮膚細胞は結合せずに、壊死する。

皮膚は、やがて傷を覆い隠すものの、完治するのに、小さい傷であっても数年を必要とする。

現に、筆者の左手人差し指の傷も3cmとあり、とうに半年を過ぎるが、一向に完治しない。


平たいソレとは、鋸刃ノコギリの事である。



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