「蹴散らせ!お宝ハンター」その17
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【この《厨子姫》はね、触れた物を内包し、
己の内世界に隠すことが出来る封印タイプの秘宝なんだ】
――ちょっとやって見せようか。
そういってフリアグネは、尾をなめらかに動かして地面に落ちていた石ころを拾った。毛先が指のように動き、小さな石ころでも難なく選別できる。
ぴきん!尾が輝くと同時にそれは消える。
ほう…これが内包という能力か。
小石は尾の内世界に取り込まれたのだろう。興味深いな。
【“狐の尾が足に絡まると神隠しに遭う”
なんて街談巷説、聞いたことないかい?
…え、無い?
“稲荷の前を通ると物が無くなる”は?
えー…マジで…おじさんちょっとショックだよ…。
…まぁいいや。
とにかく、これはそんなアイテムさ。
僕みたいなお宝ハンターにとってこういう“宝物庫”は貴重なんだよ。
いろんな魔道具を常に持ち歩けるからね。
だからこのあいだ浮遊大陸の冒険者から奪ってみんだけど、
こいつが想像以上に高性能でさ…】
ちゃっちゃっちゃっ、と次々と地面の石を拾い、
一本の尾で器用にジャグリングをする狩人。
狩人の頭の上を橋を渡るように、綺麗に半月の輪を描いて石が飛び交う。
【封印型のアイテムは発動条件が厳しいことが多いんだけどね。
例えば相手の名前を呼んで返事をさせる必要があるとか、
閉じ込めたいものの回りに魔方陣を描かなきゃならないとかさ──
だけどこいつの場合は触れるだけでオッケー。
おまけに精密操作性・スピード・攻撃力ともに抜群だ】
フリアグネは途中で投げるのをやめ、
ジャグリングの終着点に尾を構え、次々とキャッチする。
物凄いスピードで尾を振り回すことで狩人を中心に球体が生まれ、
黄金色の残像が、石を空中で砕き割らんと激しく襲い──
そして!
*ぴきん ぴきん ぴきん ぴきん ぴきん ぴきん ──ぴきん!
7連続のフラッシュ。
あとにはもう何もない。
【ね、どう?タネも仕掛けもございません】
ほう…僕もチルティスもいつのまにか見蕩れてしまっていたようで、
感服のため息を吐いた。
「すごいすごいー!」とベルディッカが拍手。頬を赤くして喜んでいる。
ミコトはいかにも悔しいといった顔で、
「あ、アイテム自慢なんて下品ですわ」と呟き、そっぽを向いた。
ふふん、そこはいかにも同業者だな。
「なるほど――収納型アイテムか。
その能力でミサイルや光弾や爪跡を消し去ったという訳だな」
【ふふ、そうさジョウちゃん】
電気鞭に関しては普通に縄抜けのスキルをつかって抜けたんだよ、と
補足説明を加えるフリアグネ。
なぜ縄抜けの特技なんか持っている…。
いや、そういえばコイツ鎖で縛ってもあっさり抜け出してたな…。
妹がぴょこっと顔を出して質問する。
「じゃあじゃあ、フリアグネさんっ、
あのキレーな戦装束はどういうからくりだったの?」
【ああベルディッカちゃん、綺麗なのは君の方だ!】
「えへっ、褒めてくれてありがとー」
【かわいいなぁ。もっとこっち来てごらん。キスしてあげよう】
「えー、それはいいよぉ」
おお、フリアグネの気持ち悪い発言を普通に拒否った!
末恐ろしいぜベルディッカ!
「それよりあの服のひみつ教えてっ。ふーく!ふーく!」
【う、うふふ…あれはねぇ、この尾で編んだ服なのさ。
自分自身を“宝”として内包することで、
世界から座標をずらして攻撃のダメージを軽減しているんだよ。
熟練した使い手ならこの尾で空を飛ぶ事も出来るらしいよ。
かみさまの尻尾の3つの秘密──
尾庫、尾鎧、そして尾翼!
まだ十全に性能を引き出せていないけど、《厨子姫》は
僕の思い通りに動く第三の腕であり、最強の矛であり、そして無敵の盾なのさ!
うふふ、うふ、うふふふふ…!
僕はなんて凄いアイテムを手に入れてしまったんだろう。
まだ信じられないよ。こうして尾に触っているだけでイッちゃいそうだっ】
狩人はノリノリだった。
新しく手に入れた物を自慢する子供みたいに眼を輝かせて、
月光の中くるくると踊る。
尾もちぎれんばかりに右往左往だ。
僕はもう一度考えを改める。
こいつ、エルベラを狙って来たのでも、助けに来たのでもなくて、
ただ単純にこの《厨子姫》とやらを自慢しに来たんじゃないか…?
【それにしても、この尾のほんとうの持ち主だった狐の神様って
さぞかし強いんだろうなぁ…。一度でいいからそんな圧倒的な存在に
ボロきれみたいに引き裂かれて破壊されて殺されてみたいもんだね。
ねぇミコトちゃん?】
…変態である。
急に話を振られた召喚兵器ミコトは、気持ち悪いものを見るような目で
「同意しかねます」と返した。
「あなたがボロきれみたいに引き裂かれて破壊されて死ぬ場面というものは
ぜひ観てみたいと思いますけど…」
うん。僕もそう思う。
お宝ハンターという連中は、本当に魑魅魍魎みたい奴ばかりだよな──
と僕が呟くと、まったくですわ──と彼女が返した。
突っ込み役の僕も疲れ果てていて、
「貴様もお宝ハンターだろうがー!」などと叫ぶ気力は到底無く。
結局、ふたりでしみじみと街の西側にひろがる田園風景を眺めるばかり。
まぁ。それでも何も変わることなく、星は──綺麗だった。




