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機神エルベラ  作者: 楽音寺
第四章 蹴散らせ!お宝ハンター
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「蹴散らせ!お宝ハンター」その12

「あっきれた…

本当に「兎を狩るのに大砲を持ち出す」の比喩(ひゆ)そのままでしたわね…

心配して損しましたわ」


「えっへっへー。ジョージ様ならぜーったい勝つと思ってましたよっ」


「でも、あの敵は本当に劇場全体を攻撃するつもりだったみたい。

お兄ちゃんが全力で倒さなきゃどうなっていたか…」


「ふん、ガスよりゴーレムより、何より本人の根性が腐った敵だったな」


戦劇帝都カブラックスを撃破した途端、

僕の左足もリングも、石化した部分はすべて元に戻った。

ストームブルームも元に戻りはしたが砕けた部分までは直らない。

さて、これが男爵の怒りに触れなければ良いが…。




エルベラから降り、拍手喝采がやまないリングから僕が退場しようとすると、後ろで詩人が苦しげに呻いた。


「ま、待ちなさい…っ」


「なんだ、まだ言いたいことがあるのか」


「…っ、ええ、貴方があんなとんでもない奥の手を隠していたように、

私にもまだ切り札があるんですよ…」


ん?


不敵に笑うカブラックスの顔を覗きこむと、

その透き通っていた瞳が鱗に覆われ、鶏に似た異形と化していた。

めぎゃ──。

生命が組み代わる音がする…!


「…貴様、人間の体を捨てるつもりか」


「ええ──ゴーレム使いは──ゴーレムと共に生き──

ゴーレムと共に心中するものです──


私も──」



めぎゃ──。

卵型のコックピットから幾本も触手が飛び出し、詩人の背中に突き刺さる。

脊髄を侵し、神経を掌握し──!

驚くベルディッカ達を背中で(かば)い、僕はふたたび詩人と相対する。


この野郎──やはり完全に止めを刺さなきゃ腐った性根は戻らんか──!



「私はゴーレムと融合します!


だから──


*ピアレー!ミューミュー!オルロゾ!私と共に()んで下さい!」



「な、なにっ!?」

その歌う絶叫に反応して控え室から飛び出してきたのは

すでに僕に敗れたはずの旅芸人 《ブレーメン》の面々だ。



霧の国から来たピアレー・ド!

千川の渡り手ミューミュー!

《九尾狩り鎌》オルロゾ!


そして戦劇帝都カブラックス!



全員がゴーレムに搭乗していた。

次々と重なる!

驢馬(ろば)の上に犬、その上に猫、さらにその上に鶏──


塔が出来上がり、一度全員の体がパズルのように組み変わる!


融合──変成──


いや、これは合体だ!



「俺達のことをもう死んだみてーな扱いしてた癖によォー…

あんたやっぱり自己中だぜっ!」


「そうそう、都合いいんだよ!勝手でナルシストでさぁ!

だけど…いつも最後まで諦めないとこだけは尊敬してるよ!」


「こここ恐いけど、死ぬのはやだけど、ぼ、ぼぼ僕達のだいじなリーダーに、

この体、捧げるにゃあっ!」


「皆──ああ、我が滅天(めってん)義兄弟(ぎきょうだい)たちよ!非凡(ひぼん)(たす)(ぶね)よ──!

いま、ひとつになりましょう──」



4つのゴーレムが合体する!



…倒したと思われた敵が復活し、合体した後、命がけで向かってくる、か。


「ふん、お約束ではあるが…まぁいい、最後までつきあってやろう!」


敗者復活戦といった所だろうか。

トーナメントのルールにはそんなもの無い筈だけれど、かまわない。

僕はいまだ全容(ぜんよう)が知れない巨大な塔に向かって叫ぶ。



「僕がこの機神都市の現英雄ディフェンシングチャンピオンだ──

さぁ挑戦者(チャレンジャー)ども、まとめてかかって来いよ!」



ピアレー戦でのあの感覚と同じ。戦った者同士にしか、きっと解らないのだ。

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