「蹴散らせ!お宝ハンター」その12
「あっきれた…
本当に「兎を狩るのに大砲を持ち出す」の比喩そのままでしたわね…
心配して損しましたわ」
「えっへっへー。ジョージ様ならぜーったい勝つと思ってましたよっ」
「でも、あの敵は本当に劇場全体を攻撃するつもりだったみたい。
お兄ちゃんが全力で倒さなきゃどうなっていたか…」
「ふん、ガスよりゴーレムより、何より本人の根性が腐った敵だったな」
戦劇帝都カブラックスを撃破した途端、
僕の左足もリングも、石化した部分はすべて元に戻った。
ストームブルームも元に戻りはしたが砕けた部分までは直らない。
さて、これが男爵の怒りに触れなければ良いが…。
エルベラから降り、拍手喝采がやまないリングから僕が退場しようとすると、後ろで詩人が苦しげに呻いた。
「ま、待ちなさい…っ」
「なんだ、まだ言いたいことがあるのか」
「…っ、ええ、貴方があんなとんでもない奥の手を隠していたように、
私にもまだ切り札があるんですよ…」
ん?
不敵に笑うカブラックスの顔を覗きこむと、
その透き通っていた瞳が鱗に覆われ、鶏に似た異形と化していた。
めぎゃ──。
生命が組み代わる音がする…!
「…貴様、人間の体を捨てるつもりか」
「ええ──ゴーレム使いは──ゴーレムと共に生き──
ゴーレムと共に心中するものです──
私も──」
めぎゃ──。
卵型のコックピットから幾本も触手が飛び出し、詩人の背中に突き刺さる。
脊髄を侵し、神経を掌握し──!
驚くベルディッカ達を背中で庇い、僕はふたたび詩人と相対する。
この野郎──やはり完全に止めを刺さなきゃ腐った性根は戻らんか──!
「私はゴーレムと融合します!
だから──
*ピアレー!ミューミュー!オルロゾ!私と共に死んで下さい!」
「な、なにっ!?」
その歌う絶叫に反応して控え室から飛び出してきたのは
すでに僕に敗れたはずの旅芸人 《ブレーメン》の面々だ。
霧の国から来たピアレー・ド!
千川の渡り手ミューミュー!
《九尾狩り鎌》オルロゾ!
そして戦劇帝都カブラックス!
全員がゴーレムに搭乗していた。
次々と重なる!
驢馬の上に犬、その上に猫、さらにその上に鶏──
塔が出来上がり、一度全員の体がパズルのように組み変わる!
融合──変成──
いや、これは合体だ!
「俺達のことをもう死んだみてーな扱いしてた癖によォー…
あんたやっぱり自己中だぜっ!」
「そうそう、都合いいんだよ!勝手でナルシストでさぁ!
だけど…いつも最後まで諦めないとこだけは尊敬してるよ!」
「こここ恐いけど、死ぬのはやだけど、ぼ、ぼぼ僕達のだいじなリーダーに、
この体、捧げるにゃあっ!」
「皆──ああ、我が滅天の義兄弟たちよ!非凡の助け舟よ──!
いま、ひとつになりましょう──」
4つのゴーレムが合体する!
…倒したと思われた敵が復活し、合体した後、命がけで向かってくる、か。
「ふん、お約束ではあるが…まぁいい、最後までつきあってやろう!」
敗者復活戦といった所だろうか。
トーナメントのルールにはそんなもの無い筈だけれど、かまわない。
僕はいまだ全容が知れない巨大な塔に向かって叫ぶ。
「僕がこの機神都市の現英雄だ──
さぁ挑戦者ども、まとめてかかって来いよ!」
ピアレー戦でのあの感覚と同じ。戦った者同士にしか、きっと解らないのだ。




