「蹴散らせ!お宝ハンター」その9
ここからの展開は、さきほど僕が嘯いたように──楽勝だったと言っていい。
第一試合の時点でこそ、
不慣れで、起動するのに時間がかかった器械ユニットだったが──
第二試合、第三試合ではもう既に僕は彼らを使いこなしていて、
速攻で相手を撃破できたからだ。
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Aブロック 第二試合
|搭乗者|ジョウ・ジスガルド|VS|千川の渡り手ミューミュー|
|使用機体|“丁竜”クリリムリムル|VS|墓守型防衛ゴーレム《リトル・リドル》|
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「ぼ、ぼ僕の負けでいいです…やだやだ、怖いよぅ…!戦いたくないよう…!」
「……。」
なんだこいつ。
「じゃあ、降参しろよ…」
「じゃあ、タダでエルベラ、くれる?」
くりん、と首を傾げる猫耳フードの少年。そんな訳あるか。
「じゃ、じゃあだめ、たたた戦わなきゃ…!
エルベラは欲しいんだもん…どうしても…!」
挙動不審というか情緒不安定というか、フードの影から終始周囲にきょろきょろと視線をめぐらせるこの少年は、ゴーレムには乗っておらず、その代わりに彼のキャラクターには似合わないごつい腕輪をしていた。
「りりりり、《リトル・リドル》──そそ装着ぅっ!」
なにっ!?
閃光が走り、彼の腕輪がぴきんと砕け──
いや、ジクソーパズルのように分解したのだ!それが空中でぱたんぱたんと
畳まれた折り紙のように展開し、ほどけ、面を形成する──!
鎧を纏うがごとく──要塞を築くがごとく──
千川の渡り手ミューミューは、一体のゴーレムへと変貌を遂げた!
猫と人の混成獣。スフィンクス。
大地にしっかりと根をはったその防衛タイプのゴーレムは、僕の身長とほぼ同じくらいの体高でありながら異様な威圧感を持っていた。
模様の走る胴体部には小さな扉がいくつも並び、内部兵装であるミサイルが次々と生産されるようになっている。
観客がこの派手な演出を喜び拍手する。
《そ、装着型の――世にも珍しい瞬間生成ゴーレムです…!》
「みたいだな。話には聞くが見るのは初めてだぜ」
きょろきょろきょろ。と忙しなくゴーレムのアイカメラを動かしつつ、
ミューミューは──
《じゃじゃじゃじゃあ、さっそくしし死んでくださぁいっ!》
──と物騒な台詞を吐いた。
同時に、スフィンクスから煙の糸を引きながら吐き出される数百のミサイル!!
防衛タイプ──己は不動のまま敵を追い詰める遠距離攻撃が得意なゴーレムだ!
乗り手であるミューミューの『千川の渡り手』という二つ名も、この手で幾度も障害を乗り越えてきたという意味を持つネーミングだろう!
「しかし、渡れない川に出逢うのは初めてらしいな」
僕は──試合開始時から握っていた杖を、迫り来るミサイルの大群にかざす。
その杖の名はクリリムリムル。
本来の体躯は30mほど有るドラゴンで、翼を持たない…ヒノマル国で言う『竜』の姿だったという。
太陽からの光を額の宝石で吸収することで水以外の摂取を不要として何百年も生きていた、神話のスフィンクスに勝るとも劣らない──伝説の生き物である。
彼は晴天時に最高の力を発揮する。
剣に蛇が絡みついたようなデザイン、その杖の先に埋め込まれた宝石が、生前の彼と同じく太陽光を吸収し、レーザーとして放つのだ。
時刻はまだ6時台。
夏のエルベラでは日が落ちるまでいくらでも時間がある──そんな時間だ!
当然クリリムリムルも、この劇場の、高い天窓から降り注ぐ灼熱の光をたっぷりと吸収している!
*キュボッ
*ドギュゥーーーーーーーーン
*ガオン!ズドドドドドドドドドドドドドド
横薙ぎに一閃!
数百のミサイルを貫通し、撫で斬りにし、払いのけて
──すべて当たる前に誘爆させる!
《にゃっ、にゃんだってぇーーーー!?》
「ここにきて突然ねこ喋りしてもファンは増えないだろう…
もう貴様の出番は終わりだ、悪あがきするな」
僕は杖を高らかに翳す。
《やっぱり降参しとけばよかったにゃあーーーーーーーーー!》
最後までなんだか難儀なことを叫んで。
挙動不審なねこみみフード、千川の渡り手ミューミューは──哀れ、スフィンクスごと爆発し、髪をチリチリにされてしまったとさ。
──第二試合 勝者 ジョウ・ジスガルド。
そして続く第三試合。
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Aブロック 第三試合
|搭乗者|ジョウ・ジスガルド|VS|《九尾狩り鎌》オルロゾ|
|使用機体|“乂竜”マバロハーレイ |VS| 騎馬型追跡ゴーレム《シルヴィア》|
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《わはははっ!ボクの戦術は単純明快、敵の首をワイヤーで拘束してから引きずり回すというただそれだけさ!そう、今君がされてるようにねっ!単純なだけになかなか破れないだろ?この四脚駆動の馬型ゴーレムはケンタウロスである僕にしか乗れない超高速の──》
「超高速の、なんだって?」
《げげーーっ!?ななななんで君が横に!?》
“乂竜”マバロハーレイ。
全長2m弱の鋼鉄製の馬。
馬と言うが形はかなり異なり、体高は1mたらず、前後に長い。
身体は長く身体は低く首は長く足は速い。
脚の代わりに円形の車輪が縦に二つ並び、それが回転することで前後に進む。
ミコトが大陸記念パーティに参加したあの夜に使っていた移動手段、
――言ってみればモーターバイクだった。
「馬ごときが──バイクに敵うかよ!」
僕は軍刀を閃かせ、一撃で《九尾狩り鎌》オルロゾの機体の首を刈り取った。
*ガキィィィィィィィィイィィイン!
ぽろり。首がとれて、ヘルメットのように被っていたのだろう、
本体である緑髪の青年がひきつった顔を出した。ひっ…と息を呑む音。
「や…やぁこんにちは…なんちゃって…はは…」
「おやすみ」
サーべルの峰で顔面をシバく。
「ぶぎゅ!」というブザマな断末魔と共に饒舌な青年は情けなく気絶し、
そのゴーレムもまた土煙をあげて派手に転倒した。
ただ最後に。
「ぽ…ポロリもあるってっ…!ボクのゴーレムの首が取れる音じゃんか!」
詐欺だぁ!と言い残して。
──第三試合 勝者 ジョウ・ジスガルド。




