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機神エルベラ  作者: 楽音寺
第三章 歌え!ジュレールの伝説
33/71

「歌え!ジュレールの伝説」その10

-10-



ふぅ…。


さ、これで僕の素晴らしく派手で豪華で爽快なカタルシス溢れる大逆転劇の、

美味しいところはあらかた語ってしまったことだし。


あとのことは後日談として適当に省略してさっさと語り尽くしてしまおう。


実際のところ、僕はあの時チルティスが僕の作戦を信じて

最後まで(まっと)うしてくれたことが、本当に嬉しくてしょうがなくて、

もう他のことなんかどうでも良いとまで思っているくらいなのだ。


たとえこれから何があっても。


今の伴侶(はんりょ)より優秀に見える相手や。

歪んだ愛を語る元婚約者や。

意地悪な魔女が、この街を訪れても。


──きっともう僕達は、それなりにお互いを信じていける。


大丈夫だ。


心から、自然にそう思えた。





…というわけで、後日談。


あのあと、僕たちは揃いも揃って皆気絶してしまったのだが…


街外れの古戦場跡に、なんと“あの”魔獣バハムートが

子供が好む怪獣活劇よろしくふたたび蘇って暴れだしています!──と。


そう市民から緊急伝令を受けた領主ジーンが、

あわてて《ガスパール古戦場跡》に駆けつけたそうだ。



夕焼け空が綺麗で。


その広大な盆地は暖炉の炎で照らし出したような暖かな色彩で染まり、

拍子抜けするような平和さを演出していた。


ただ、古戦場跡のあちこちで、

電撃によって土が溶けてガラス状に変成していたり、

羽や魔女の帽子や血が散乱していたりと…


戦闘の傷痕は残っていたらしい。


なにより──地底湖でもむきだしになったのかというような、

計り知れない直径の大ぉーーーーきな凹みがあったと言う。


その底に。


眼をぐるぐるとまわし――

魔法も解け、また右半分と左半分に戻った──

ユリティースとクラディールがいて、


そして、彼女らの胸の上に置手紙があったそうだ。


内容は…

狩人フリアグネの署名(サイン)と、

【今回は僕の負けです。でも楽しかったよ。また遊ぼうね】という一文。




…まぁそれだけで終わっていれば、

なかなか爽やかで格好よかったんだろうが。


あの野郎、ここぞとばかりに

長女たちの乳をもんだり唇をうばったり耳を噛んだりしたらしく。


長女たちは眼を覚ましてから

「あのクズを討伐しに行きます!」「止めてくれるなお爺ちゃん!」

と喚いて、本当に旅に出てしまった。


やれやれ。忙しいやつらだ。




魔女の妹ベルディッカはと言えば、あいかわらず工房で仕事をしながら、

まだフリアグネの具体的な怖さを実感できてないようで、

「今度来たら魔道具をみせてもらおーっと」…などと、気楽な様子だった。





今回知り合った魔女の三姉妹については、こんな感じだ。

人騒がせなジュレールの伝説についても。

一応の決着を──見せた。


変わったことと言えば…そうだな。



「ほらジョージ様、早く起きて下さいよー、朝ご飯出来てますからねっ」


「…あのなチルティス、貴様は変身で傷が治るからいいけど、

僕はまだ体がぼろっぼろなんだよ。

歯も折れてるし外れた(アゴ)も繋いだばっかだし、当分飯なんか食いたくない…」


「だーめ、食べなきゃ傷も治らないじゃないですか」


「でも…」


「あまり()(まま)言うとまた魔獣バハムートに変身しちゃいますよ?」


「う…ぐ、解った、わかったよっ!食べればいいんだろう!

くそっ、待ってろ、顔洗ってくる!」



──とまあ、チルティスがなにやら調子に乗ってしまったことくらいだろう。



あまり考えたくはないが、もしかして僕たちって

夫婦喧嘩をするたびに巨人(エルベラ)魔獣(バハムート)の姿になって戦うんだろうか…?


末恐ろしい未来だった…。


まったく。乙女と怪獣にはいくら僕でも敵わない。

顔を洗って、出直すとしよう。


→[[蹴散らせ!お宝ハンター]]へ。

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