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新たな世界への旅立ち

「……マシなわけねーだろ!なんで二回も潰されて死ななきゃならないんだよ!しかも異世界転生人生まだ合計で五分も生きてないぞおい!」


「元気だねー」


俺の魂の叫びをアリミディアがダルそうな声で受け流す。このやろう、自分は全く関係ないみたいな声だしやがって


「というか、容姿を引き継ぐとサイズも固定なのか……」


「このエディットプログラムー、そこまで融通が聞かないからねー、固定にすると完全に固定だねー」


まるで友達との会話の様に軽いノリで言われたがこっちからしたら大問題だ。なんせ転生する度に選んだ容姿に殺される可能性があるわけで、転生する度にそんな命の懸かった賭けをしたくはない。いや、賭け自体は嫌いじゃないが、それはある程度の知恵と実力の絡む賭けの話だ、こんな運しか絡まない賭けは最早賭けとすら言わない


「なあアリミディア、なんかないの?こう……いい感じの設定」


「うーん、残念だけどないねー。なにより私ー、このプログラムそんなに使ったことないから使い方イマイチ理解してないしー」


さて、どうしたものか……このまま賭けを続ける様な転生を続けてもしても意味がないし。むしろ産まれてからすぐに死なない分、今までの人生のほうがまだマシに思える。とは言っても俺が出来る事は何もない。かといってアリミディアもあの口調と態度では本当にプログラムの使い方を理解していないんだろうから、全くあてにならない。もしかして俺の異世界転生、早くも詰んだ?そんな風に考えを巡らせていると、アリミディアが口を開いた


「まあー、このまま無駄に転生回数重ねるのもー、私が疲れるしー、君の言うー、いい感じの設定が出来ないかプログラム作った人に聞いてくるねー」


「え?出来るの、それ?そんな気軽に会えるの?プログラムの製作者」


「うんー、だってー、作ったの私の友達だからさー」


「……先に言えよ!おい!今まで色々考えてた俺がバカみたいじゃないか!」


「あははー、ごめんねー。まーとにかく便利な設定がないか聞いてくるからー、ちょっと待っててねー」


そう言い残して、アリミディアが離れた。いや、目が見えないし身体の感覚もないからハッキリとは分からないが、声どころか物音一つさえ聞こえなくなったので多分離れたのだろう。まあ、ちょっと待てということはすぐ戻って来るだろうし、それまで気長に待つか。


と、言って待っているがアリミディアが帰ってくる気配が全くない。時計は見られないが、体感時間で言えばはもう三時間くらい経っている。いや、でも、これは多分あれだな。つまんない時間は長く感じるものだし、俺、意識はあるが身体が動かせないからめちゃくちゃ暇だし、多分そういう要因が重なっているんだろう。多分実際は五分くらいなんだ、そうに違いない。そう自分に言い聞かせていたらなんとなくアリミディアが帰ってきた気配がした


「ただいまー、ごめんねー、ちょっとのつもりだったけど二時間くらいかかっちゃったー」


マジかよこのやろう。いや、でも待て、多分設定がめちゃくちゃ難しいんだ、二時間使わないと説明出来ないような難易度だったんだ!そうに違いない!


「いやさー、設定自体は五分くらいの簡単な事で出来たんだけどー、ガールズトークが盛り上がっちゃったー」


「待てゴラァ!ふざけるな!返せ!俺の時間と怒りを収める為に必死に自分に言い聞かせる事を考えた労力を返せ!いやもうせめて返さなくてもいいから理由がガールズトークってのはやめろ!せめて嘘でもいいからもうちょっと正当な理由にしてくれ!」


「んー、うるさいよー、私にもー、友達といえどー、付き合いとか色々あるのー、大変なのー」


「そのわりには声が全く大変そうじゃないぞおい」


「あははー、でも安心してー、君の言ういい感じの設定は出来る様になったよー」


アリミディアからいい感じの設定に関しての説明を受けてみるが、やはり人間に生まれ変わろうとすると俺の姿は基本的には固定になるらしい。ただし先程の姿引き継ぎと違い、その世界における生物の常識を満たすように最低限の設定変更が自動で行われる。


例えばさっきの巨人の世界であれば、全員が巨人という世界の常識に従う様に俺の姿は巨人として生まれる。女性しかいない世界であれば俺の性別は自動的に女になる。といった具合に。逆に色々な生物がいる世界でも、元々の俺の姿が世界の常識の範囲内であれば姿が変わることは無い。つまり魔物がいる世界でも人間がいるなら俺は人間だし、人間のいる世界では姿は変わらないのでイケメンになることもない、チクショウ


「まー、大体はそんなところだねー、じゃー、後は身体で覚えてみようかー」


説明を終えたアリミディアは、俺の次の転生の手続きにとりかかる


「ふう、ようやく俺のまともな転生人生がスタートするのか……」


「どうだろうねー、例えば虫しかいない世界に転生しちゃったら君の姿は虫として生まれ変わるしー、やっぱり運だねー」


安心していた俺を、アリミディアがさりげない一言で再び不安の中に突き落とす。いや、ほんとそういう一言はやめて欲しい。俺はそう言われたら本当にそうなる可能性がある程度には運がないんだよ


不安の中で、また俺の意識が沈んでいく。どうか次の世界はゴキブリにはなりませんように。必死に祈りながら、俺の意識は完全に途切れた


目覚めた世界で一番最初に聞こえたのは、赤ん坊の産声で、それが自分の声だと気づくのに意外と時間がかかった。人間は無意識でやっていることには案外疎いものである。僅かに開く目で自分の姿を確認すると、手も足も、ちゃんと人間の赤ん坊のものだ。次に周りを見て、俺はこの世界での俺の母親であろう女性に抱かれていることを理解する。どうやら今度は、ちゃんと普通の人間として転生出来たようだ。安心していると、4枚の羽根を生やした妖精姿のアリミディアが、俺に話しかけて来た


「今度はちゃんと転生出来たねー、よかったねー」


勿論、話しかけられたところでこちらは赤ん坊なので、喋ることは出来ない。とはいえ返事をしないわけにもいかないので、アリミディアの方を向いて周りにばれない様にこっそり頷く


「あー、別に反応しなくても大丈夫だよ-、テレパシー的な魔法こっちで使うからー」


と、俺の頷きに対してアリミディアそう言った。それならそうと最初に言って欲しい。周りに気を使うのって意外と疲れるんだぞ。赤ん坊だと尚更


「あははー、ごめんねー。それにしても、中々面白い世界に産まれたねー、凡人君」


面白い世界?妙に含みのある言い方だったが、一見なんの変哲もないこの世界は実はとんでもない秘密でも秘めているのか?というかそもそも神様って全ての世界を把握してたりするのか?


「そんな秘密もないしー、全ての世界を把握なんかしてないよー。ただー、この世界はー、天界の中でも今ちょっとだけ注目を集めてる世界なのー」


注目を集める?アリミディアの言葉にさらなる疑問を覚えた、ちょうどその時。たまたま窓の外が視界に映った。窓の外は俺が今までいた普通の世界と変わりなく見えた、巨大な城の様な建物が雲の上に浮かんでいるという事以外は。今までの常識からは考えられない様な光景を目にした俺に、アリミディアが非日常的な、あれの説明をしてくる


「あれはねー、確かこの世界では”イデュヒア”って呼ばれるー、個人の才能を極限まで伸ばす学校みたいな施設なのー」


才能を、極限まで、伸ばす?


「そー、ここはねー、才能が全てのー、才能の世界、ニギアスだよー」

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