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オリバー・スウィフト異世界にいく  作者: 六文字白魔
第一章 旅の始まり・草原の風
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風詠みの噂

 宮廷魔術師というのは、質素なことが求められるのだろうか?

 石畳の床、飾り気のない、ほとんど殺風景な部屋で、オリバーはきょろきょろとしていた。


 衛兵の一人が、コホンと咳払いをした。


 「あ、すみません。

 あまりにも、元の世界の様子と違うので・・・」


 自らの失礼な態度を、少年は素直に謝った。


 ギルバート卿は、やわらかくほほえんだ。


 「なに、構わんですよ、オリバー殿。

 それより、あなたは・・・」


 深くくぼんだ青い目が、じっと目の前の少年を見つめる。


 「ウィンドリーダーの一族の出かと、お見受けしたが・・・?」


 「ウィンドリーダー・・・?」


 宮廷魔術師は、うなずいた。

 傍で監視している衛兵らが、小さな驚きの声と共に、少年を見つめる。


 「ウィンドリーダー、風詠みの一族。

 ここよりはるか西方の、エルムランドにいる種族でな。

 皆が皆、凄腕の風魔法使いとされる。

 翼なくして、自在に空を歩き、風を操るという・・・」


 「でも、連中は、邪竜襲撃の際にほろん・・・」


 ギルバートは、うっかり口を滑らしたらしい、若い衛兵をにらみつけた。

 彼は目をしぱしぱさせ、すぐに口をつぐんだ。


 「ここレイモーン国から、彼らの居住区は非常に遠い。

 ほとんど情報が入ってこないゆえ、軽率な言動は、控えなされ!」


 「おれは、地球人です。

 風詠みとは、なんの関係もありませんが?」


 魔術師は、片眉を上げた。


 「ほう?

 それにしては、他の地球の方々と随分違ったご様子。

 しかも、浮上の術まで心得ているのは、どうしてかな?」


 「見てたの?

 どうして、手助けしてくれなかったの?」


 「わしは、遠方眼の持ち主でな。

 150キロ先までなら、はっきりと見渡せるのじゃが・・・。

 オリバー殿たちが、プレーリー・ドラゴンと戦っていた時、レイモーンの騎士団とわしは、実に30キロも遠方にいたのじゃ。

 見ることはできても、体を瞬間移動させることは出来ぬからのう」


 オリバーは、黒いフードを取った。

 このフードは、百合絵が王宮のメイドに頼んで、持ってきてもらったものだ。


 ふわりとした、緑色がかったブロンドから、やや尖った耳が現れた。


 「オリバー殿」


 ギルバートは、ゆっくりと言った。

 まるで、小さな子供に言い聞かせるように。


 「冒険者になってはいかがかな?

 元の世界に帰るための情報が得られるかもしれぬし、風詠みの者も、もしかして、ギルド内に・・・いるかもしれぬし」


 「冒険者・・・ギルド、ですか?

 それは、おれみたいな部外者でも、受け入れてくれるんですか?」


 「犯罪歴および、闇属性の者は、不可能じゃ。

 ここアッシュクリフの8街区に、ギルドがある。

 国一番の規模じゃが、隣国ヒベルニアには敵わぬな。

 冒険者のメンバーにさえなってしまえば、国を超えて仕事を続けられるしのう。

 どれ、マーティン!」


 ギルバートは、隣にいる少年魔術師に、威勢よく声をかけた。


 「はい、師匠」


 「オリバー殿を、明日にでもギルドへ案内しなさい。

 時間があれば、町の見物なども」


 赤毛でそばかすだらけのマーティンは、うなずいた。

 年は、オリバーと同じくらいなようだ。


 「かしこまりました。

 では、オリバー殿、明日の9時、朝食の後に、お迎えに上がります」



 部屋に帰る途中、オリバーは、薄暗い廊下で何者かの拳をよけた。

 拳は、石造りの壁に埋まった。


 「ちくしょう、塩ブタのくせに!」


 声の主は、八田だった。

 目が白く光っている。

 そばでは、短いスカートをはいた女子が、クスクス笑っている。

 こんなときに、いちゃついていたのだろう。


 オリバーは馬鹿にしたように彼らを見やり、余裕の表情で去った。


 「ねえ、あいつのステータス、見ることができた?」


 八田は、首を振った。


 「だめだ。

 おれは心眼の持ち主で、相手の弱点は分かるが・・・。

 ステータスを見極めることはできねえ」


 「ふーん、でも、あたしのは見られたんでしょ?」


 「そうだ。

 でも、塩ブタのは、分からねえ」


 「じゃ、あいつの弱点は?」


 「・・・見えなかった」


 「じゃ、あんた、木偶(でく)の棒じゃね?

 かっこわる~」


 「お前に言われたくないわ。

 なんせ、MP1ってありえないだろ。

 INTなんか、マイナスだしw」



 「遅かったね!」

 

 部屋の外で待っていたのは、笠原百合絵と小清水流美だった。

 それぞれ手に、バスケットや小瓶を持っている。


 「はい、夕食。

 さっき、食堂に来なかったでしょう?」


 「ありがとう。

 もしよかったら、この中に入って話でも・・・?」


 百合絵と流美は、とまどっている。

 オリバーは、微笑した。


 「大丈夫。

 失礼なことや、乱暴なことなんかしないからさ。

 そんなの、おれの性に合わない」


 「そうだよね、オリバーは、山田と違うもんね」


 「やっと、オリバーって呼んでくれたんだ。

 これからもそう頼むよ」


 

 バスケットからパンとサラダを取り出した。


 「なんだこれ、味付けされてないよ!?」


 仕方がなく、小瓶からゴブレットへと、赤い液体をそそぐ。

 一口飲んで、オリバーは吐きだした。


 「酸っぱい!

 くさい!

 これ、毒じゃないよね?

 おれら、ここの人たちに消されるんじゃないよね?」


 「確かに、すごくまずかった・・・」


 流美は、白い顔を青ざめさせて、うなずいた。


 「味がないのよね・・・。

 香辛料の文化が、ないのかな?」


 百合絵は、おじさんくさく、腕組みをしている。


 (ぜってーやせるだろ!

 食事が激マズの異世界とか、ありえねえ!) 

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