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オリバー・スウィフト異世界にいく  作者: 六文字白魔
第二章 湿った温風と緑の空
33/35

沼地の救世主

 「へえ、ここに手をかざすと、別の場所が映るんだ・・・」


 「おい、壊すんじゃねえぞ。

 貴重な戦利品なんだからな!」


 「魔法道具だニャ。

 初めて見たニョ」


 逃亡中の少女らは、周囲に気を配りつつ、貝型の魔法道具をいじくっていた。


 ヒナノの目が、異様に輝いている。


 「これ、パソコンみたい!

 文字は打てないみたいだけど

 不思議な宝石が、キーボードの代わりについている。

 あれ、白い光が出ちゃった」


 「パソ・・・?

 アナタの国、こんなのを使ってたのニャ?」


 麻袋を被った少女が、ネコの尻尾をゆらゆらさせた。

 ヒナノはうなずいた。


 「とてもよく似てる。

 たとえば、このボタン。

 これと、銀のボタンを同時に押したら・・・」


 「あ!

 前に閉じ込められてた洞窟じゃねえか!

 あの吸血鬼ヤロウ、けっこうイケメンだったよな!」


 「え~!

 男はダークヘアのほうが、かっこいいよぉ」


 「しーっ、静かにするニャ。

 この画面を見るニャ」


 「こ、この人たち!

 もしかして、救出に来たの!?」


 魔法道具の鏡に映っていたのは、グリーンブロンドの少年や、黒髪の少女二人、犬耳の子供と、栗色の髪のエルフだった。

 それぞれ手に、武器を握っている。


 (あ、この人!

 塩村くん・・・、だっけ?

 どうして、あんな所に?)


 ヒナノの心臓は、緊張のあまり高鳴っている。

 

 場面は変わり、居残り組のごつい少女ら23人が、牢から解放され、喜んでいるシーンが映された。


 「あのあと、こんなことが起きてたなんて」


 見ていた少女のうちの一人が、ねたましげに声を上げた。


 「お、お姉ちゃん!

 お姉ちゃんニャ!」


 「えーっ!!!

 あんた、エルフなの!」


 麻袋の言葉に、残りの6人が仰天した。

 彼女はうなずき、ゆっくりと袋を脱いだ。


 「げーっ!」


 金髪の山賊娘は驚き、尻もちをついた。


 彼女の横に立っているのは、まぎれもないエルフだった。

 年のころは、12、3くらい。

 身長は小柄で、150㎝くらいだろうか。

 さらさらのオレンジ色の髪は、ツインテール。

 白いリボンで結んでいる。

 風切り羽のようなエルフ耳がみえる。

 目は、イエローグリーンで、きらきらと輝いていた。

 ネコの尻尾が、リズミカルに動いている。


 「エ、エルフ?

 獣人?」


 赤毛はうなずき、麻袋を拾った。


 「どっちもニャ。

 ダディがネコ族の獣人で、ママンがダークエルフだった。

 2人とも、ドラゴンが襲ってきたときに、死んじゃったけどね」


 「まあともかく、名前を名乗り合おうぜ。

 わちきは、リースル」


 「わたい、アンジェラっていうニャ。

 アンジェと呼んでニョ」


 「グリン」


 「イーロニャ」


 「リヴァーサ」


 「ヴィクトリア」


 彼女らは、最後の一人に注目した。

 異世界から来た少女は、もじもじとしつつも、自己紹介した。


 「ヒナノっていいます。

 アッシュクリフ近郊の、ゲーンズ農場で働いてます」


 「へえ、割としっかりしているんだ」


 「服装以外はね。

 そこの農場、ケチだな~。

 そんな、ジャガイモ袋みたいな、男物の服を支給するなんて」


 「・・・。

 ・・・」


 ヒナノは黙った。

 おしゃべりは苦手だ。


 「おい、もうここからずらかろうぜ。

 バカが追いかけてきたら、困るからよ」


 金髪のリースルが、荒っぽく言った。


 「あんたも、ズボンが落っこちないようにしな。

 こんな所で、ケツを見せてもしょうがないだろう」


 「・・・。

 ・・・」


 ヒナノは魔法道具をしまい、どんよりした目をしつつも、先を急いだ。

 川に沿って歩いて行くのだ。



               *****


 「あれ、迷っちゃったニャあ~!」


 アンジェは叫び、戸惑ったようにきょろきょろしている。


 「おかしいな。

 川に沿って歩ったところが、こんな汚い沼地かよ?」


 「ねえ、ここ、どこか知ってる?」


 「知ってるわけないでしょ!

 だいたいここ、レイモーン国ですらないわよ。

 うちの国が、こんなに蒸し暑いわけない」


 「ん?

 これ、変な光が出っぱなしだ・・・」


 ヒナノは、パソコンもどきの側面から、まだ白い光が発せられているのに気付いた。


 「壊したんじゃないだろうな?」


 乱暴なリースルがすごむ。


 「ううん。

 でもさっき、いじくってるときに、ここのボタンを押して、助けてくれって小声で言ったんだけど」


 「それって、壊したんじゃねえか!」


 「リースル、落ち着いてよ。

 メルーカ製のものは、そんなことじゃ、壊れないよ。

 なにせ、トップメーカーだもん」


 ブランド好きらしい、ヴィクトリアがなだめた。


 「でもよ、この女、すごい怪力じゃねえか。

 モノを壊す能力が、あるんじゃないのか?」


 「あたし、魔法持ってないよ」


 「じゃあ、どうして、檻をこじ開けたの?」


 「知らないよ、そんなの・・・」


 ヒナノは目をしぱしぱさせた。


 「ったく、あんた、泣き虫だな。

 一体どこの国の者だよ?」


 ヒナノが口を開きかけた時だった。


 遠くから、雷が轟くような音が聞こえた。


 「嵐が来る・・・?」


 「まさか、こんなに天気がいいじゃないの」


 ぶくぶく・・・。

 ぶくぶく・・・。


 背後の沼から、大きな水泡が出現した。

 少女らは振り向いた。

 そこには、巨大な大蛇が鎌首を持ち上げ、しゅうしゅうと威嚇していた!


 「逃げろォ!」


 リースルは叫び、6人の少女らはそれに従った。

 大蛇は、真珠色の目をきらめかせ、のろのろと追ってくる。

 その太さは、成人の胴体5人分ほどで、長さは4メートル以上あるようだ。


 「そ、そこのくぼみ?

 いや、洞窟に入るぞ!

 すぐに横に曲がれ!

 動物は、急に曲がれないから!」


 少女らはそれに従った。

 が、ヒナノはぬかるみに足をとられ、思いっきり転倒する。


 「ひ、ひゃあ!」


 彼女はしわがれた声を出し、目の前に迫ってくるボアを避けようと、ばたばたする。

 爬虫類は、久しぶりの餌に喜び、丸飲みしようと、大きく口を開いた。


 「まあ、これを食らっておけ」


 男の声がこだまし、大蛇の舌に、両手剣が突き刺さった。

 ヘビは苦痛のためのけぞり、怒りとともに、新参者めがけて突進しようとした。


 「レベルアップしてほしいなあ」


 少年の声と共に、真空の刃が魔物を直撃した。

 グリーンブロンドの少年が、ぐったりしたヘビの隣に浮かんでいる。


 「こんなところに、ショートカットがあるなんてね」


 「し、塩村くん・・・!?」


 ヒナノが、上ずった声を上げると、少年は振り向いた。

 エメラルド色の目が、いぶかしげに細められている。


 「ああ、きみが中島さんだね。

 よかった、無事で」


 そう言い、すーっと地面に着地した。

 ヒナノの目には、涙があふれた。 

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