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オリバー・スウィフト異世界にいく  作者: 六文字白魔
第一章 旅の始まり・草原の風
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アリアナの試練

 「こりゃ、やられてるな」


 上級冒険者・ロビンは、オリバーを一目見るなり、うなった。


 「やられてるって、もう助からないんですか?」


 ユリエが目を潤ませ、大人の男性にきく。

 黒髪の精悍な男は、唇を引き締めたが、答えた。


 「聖アリアナ大寺院の僧侶なら、もしかして、人に戻せるかもしれんが」


 ルミは、震えはじめた。


 「あ、あの・・・。

 オリバーは、吸血鬼になっちゃうんですか?」


 「最悪の場合、そうだ。

 そうすれば、お前たちにも、容赦なく襲いかかってくるだろう。

 魔物として、討伐の対象になってしまうだろうな」


 少女らは、泣きはじめた。


 エルフのセラフィーナは、黙ってオリバーに近付いた。

 そして、その冷たい額に手を当てる。


 「オリバー様、必ず、こちら側に戻ってらして。

 私、待っていますわ」



               *****


 「随分、強いヴァンパイアにやられたようですね」


 アリアナ大寺院で、少年を診てくれたのは、成人したての若い尼僧だった。

 

 「シスター・マドレーヌ、どうか彼をお助けください」


 ユリエは力なく言い、ルミとセラフィーナ、長沢までも駆け付け、礼をした。

 冒険者ロビンは、続けた。


 「この小僧は、まだレベル10にも達しないひよっ子だ。

 人の役に立ちたがる、優しい奴でね。

 今回は、大いにムリをしちまった。

 バカなことをしたよ、ひよっ子だけで、吸血鬼に立ち向かうなんてね。

 でも、フラタニティに誘拐されていた、多くの少女らが、小僧たちによって救われたんだ」


 「まあ、あの組織が、この街にいたのですか!?」


 シスター・マドレーヌの目が大きく開かれた。


 「ああ。

 大人のおれらが、もっと早く対処するべきだったのに。

 オリバーの優しさに免じて、ぜひとも救ってやってほしい」


 尼僧はうなずいた。


 「ええ、もちろんそのつもりです。

 ただ、毒が強いのと、何というか・・・ええと・・・」


 「はっきりおっしゃってくださいな」


 エルフの言葉を受け、マドレーヌは言うことにした。


 「オリバーさんの体質は、挿入された毒と相性がよろしいみたいで」


 「どういうことですの?」


 「つまり、毒がほとんど抜けないんですよ」


 尼僧は大きなため息をついた。

 額に、汗をかいている。


 「オリバーさんの肉体が、毒の成分を好んでいるのです。

 外部から、解毒薬を入れたり、清めの呪文を唱えても」


 ほーっと息を吐きだす。


 「吸血鬼の毒は、出ていかない」


 「じゃ、オリバーは、ヴァンパイアになっちゃうの?」


 ユリエが再び泣きだした。

 尼僧はしばらく考えた挙句、結論を導いた。


 「魔物化するかもしれません。

 もしくは、抗体としての役割を果たすだけかもしれません。

 私からは、これ以上は何も言えません」


 「ハシカみたいだな。

 で、潜伏期間は?」


 長沢が、現実的なことをきいた。

 ロビンが、珍しそうに彼を見つめている。


 「72時間です。

 吸血症候群の症状が、実際に現れるまでですよ。

 実際に、ヴァンパイア化するのは、吸われてから一週間後」


 シスター・マドレーヌはそう言い、モルガン神への加護を祈った。


 「では、彼を階下の病室に運びましょう。

 ロビン様、ナガサワ様、すみませんが、お手伝いしていただけますか?」



               *****


 「潜伏期間が、3日。

 もし、オリバーが吸血鬼になったら、どうする?」


 ルミは、ぼそりと言った。


 「襲ってくるんだろ?

 どうもこうもねえよ。

 返り討ちしねえと」


 暗い表情の長沢が、ぼそりと答えた。


 「でも、襲ってこなかったら?

 悪さしなかったら?」


 ユリエが食い下がった。


 「ヴァンパイアは、生ける死人です。

 治癒魔法も効かない・・・」


 セラが、顔を覆った。


 「オリバー様、早く戻ってらして」


 「そういえば、セディは?」


 ユリエは、現実的な話題を振った。

 

 「お城に戻ったきりよ。

 きっと、お父様にこっぴどく叱られて、外出できないんじゃないかしら」


 ルミはハンカチを取り出し、涙を拭いた。


 「吸血症候群用のワクチンなんて、あればいいのにな」


 長沢がつぶやくように言った。


 「そうすりゃ、どこに行っても安全だ」


 そっと立ち上がる。


 「おれ、これから仕事なんだ。

 またあとで、ここに来るからさ。

 ユリエとルミも、そこのエルフも、もう体を休ませたほうがいいぜ。

 あとは、さっきの尼さんに任せて」


 「へえ、働いてんだ」


 ユリエの言葉に、長沢はにやりと笑った。


 「ああ。

 スラムの赤ひげ先生の所で。

 ヒーラーの見習いをしてるんだ。

 あと、錬金術も学び始めた」


 そう言い、ドアを開けて去って行った。


 「朝の8時か。

 結局、寝なかったね」


 「ええ、なんだか、体が、重い・・・」


 ユリエとルミはあくびをし、あわてて口を押さえる。

 セラフィーナは、くすりと笑った。


 「あ、セラに笑われた」


 「ユリエ様、ルミ様。

 先に宿に戻って、休息をとられてはいかがでしょうか?

 私も、しばらくしたら、そうするつもりなので・・・」


 人間の少女らは、体力の限界を感じ、その言葉に従った。


 病室には、オリバーとセラフィーナの二人だけ。

 時間が、無情にも過ぎていく。


 

 少年のまぶたが、ひくついた。


 「オ、オリバー様!

 やっとお気づきに・・・」


 セラの声は、そこで止まった。


 オリバーの両目は、真紅に染まっていたのだ!

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