27話 二ラップ目から
スタート地点を抜け、二ラップ目へと突入する。
綾香との差は二ラップ目では、埋まらなかった。一ラップ目では、追い越しに追い抜きの接戦だったのに対し、ここでは綾香の後ろに一定距離で付いていくだけで必死になって、追い抜くことはかなわなかった。
三ラップ目に突入しても、その差は埋まるかと思った箇所はあったが、結局埋まらなかった。
結果は、綾香が一位、俺が二位、妹三位、結衣四位、以下CPUという結果になっていた。
正直、五十ccでのレースではCPUはものすごく弱く、あまり気にしなくてもいい存在となっていた。このコースで、最下位のCPUを抜かしてしまうほど遅い。
だが、綾香が全く抜けなかった。このことに関して、少し対抗心が沸いている。今日はじめたばかりという綾香に負けているのだ。それも、はじめてからほんの数分という短時間で。
「綾香さん上手ですね。あのお兄ちゃんが負けるなんて」
「ホント上手だよね。雄一がボロ負けだもんね」
そういいながら二人がこちらをニヤニヤしながらみて来る。
「なんだ、お前ら。俺に勝てなかった奴が何を言っているんだよ」
そういいながら勝ち誇った顔をしてやると、「雄一のゲス」とか結衣が言ってきた。妹に限っては、「この馬鹿兄」とか言ってくる始末だ。
綾香はあまり関心を寄せず、話には乗ってこなかった。
手に持つリモコンをぎゅっと握り締めながら、ワクワクとした表情で画面を見ていた。
口角が上がって、目は優しげに見開かれ、その少し高揚したかのような頬。まるで、子供のように無邪気に笑っているように見えた。
「綾香、楽しい?」
「えっ?」
俺が話しかけると、綾香は少し驚いたように反応する。
「いや、すごい夢中だったからさ」
「とっても、楽しいです」
そういう目には、このゲームに対しての好奇心なのか、それとも俺達と遊ぶということに関しての関心なのか、どこかふたつの意味がこめられているようだ。
でも、綾香が楽しいといってくれている事実に俺も嬉しく思う。綾香の微笑ましい笑顔がとてもかわいらしく見えた。
「そっか。なら良かった。あちらのお二人様は全力でも追い抜けなくて、つまらなそうだけど」
「雄一、ケンカ売っているの? 私が本気だしたら凄いんだから!! もう、一位とか余裕だから!!」
「それが嘘にしか聞こえないんだが……」
「う、嘘じゃないし!!」
結衣を煽ると、「もう、絶対一位とるし」とか言いながら、画面へと視線を向ける。
画面はいつの間にか切り替わっており、最後のコースへと移り変わっていた。




