25話 先頭を走る君に
俺は、とりあえず画面に映るスコアを見てみるが、最下位で自分のヘイホーが乗っており少し悲しくなる。
その上には、綾香のベビーマリオがいた。
「……」
少し悲しげな表情を浮かべる綾香。それとは、真逆に結衣と妹はワイワイとはしゃいでいた。
俺は、綾香に声をかけてあげなければと思ったが、なぜか少し戸惑ってしまった。
綾香のリモコンを握り右手が、強くぎゅっと握られて小さく声が聞こえた。
「悔しい……」
その声を聞いた後、画面が切り替わったことに視線がそちらへ向けられる。
次のコースはウォーターパークだ。海中の町でのレースといった少し不思議なコースだ。
「綾香」
「はいっ?」
少し驚いた表情でこちらをみる綾香。
「このコースはさっきより、曲がり角が多いからミニターボを少しずつかけていくと、有利になる。それと、かけすぎて壁にぶつかると減速するからそこだけ注意な」
俺は、それだけ言うと画面を見る。
綾香は隣で、少し呆けた表情をしたが「分かりました」とだけ言うと、同じく画面を見る、
それぞれのキャラクターが再び四分割された画面に映し出されている。
今度のスタートの順番は、先ほどの順位がそのままになっているので、俺は最下位からのスタートとなっている。
そこから、巻き上げるのには一苦労するが頑張れば何とか、五位くらいにはくい込めるだろうか。
画面中央に数字が現れる。そして、カウントを始めた。
カウントが始まって、二になると同時にボタンを押しロケットスタートの準備を始める。
カートはブゥンとうなりを上げながら、エンジンを温めながら最高速でのスタートが切れるようにと準備を進める。
画面中央に『GO!』の文字が現れた瞬間、俺のヘイホーの乗っているカートは勢いよく飛び出し、NPCのカートをいっせいに抜かしていく。
目の前には綾香がおり、うまくロケットスタートが切れているようだった。
それを確認すると、俺は直線に進む。
すぐを進んだところには、階段とまるでマーケットの入り口のような、大きな扉が開放された状態で三つ現れ、それぞれ二個ずつアイテムが置いてある。
結衣と妹は、中央のアイテムを取ってそのまま疾走。
俺と綾香はそれを追いかけるかのように、それぞれアイテムを取る。
アイテムがシャッフルされているうちに、すぐにカーブが現れる。俺はそれを見逃さず、すぐさまミニターボを開始。
車体が斜めを向きながら、青色の火花を散らす。前にいる綾香も同様に、ミニターボでカーブを曲がっていた。
綾香のハンドリングは、先ほどとは様変わりとなっており、初心者は抜けたという印象を受ける。とても二レース目とは思えない成長ぶりだ。
そんな綾香を横目に見つつ、俺はカーブが終わりかけたと思った瞬間、火花が金色に輝く。
それと同時に、ボタンを離し一気に加速。
綾香も同じタイミングでボタンをはなしており、二人がほぼ同時に加速。2つの車体が隣あわせの状態となる。
丁度シャッフルが終わり選ばれたアイテムは『ミドリこうら』だった。正直、綾香に当ててしまうのも、かわいそうに感じるので綾香の前にいる結衣めがけて投げたが、空振りに終わる。
そして、すぐの道でカーブに差し掛かる。
これを逃さないように、ミニターボをかける。綾香も同じようにミニターボを行い、二人が並んだ状態でのミニターボが開始された。
何とか綾香を抜きたいと、俺は考えるが俺の前を走る綾香に何もできずにそのまま後ろに付いた状態となっている。
そしてカーブはふたつの道に分かれた。それと、同時に車体が反重力へと切り替わり、壁を走っていく。
しかし、それと同時にミニターボが開始し加速。
勢いよく動き出した車体が、突如宙にういた。ジャンプ台が目の前にあり、そこでジャンプをしたのだった。
そして、目の前に広がるのは道ではなく、水だった。
カートは水の中へと一切のためらいを持たずに飛び込んでいく。
実際だったらカートは無事じゃすまないはずだが、それが許されるのがゲームの世界だということなのだろう。
水の中に入ったら、そのまま直進する。
そして、次のカーブに差し掛かったらすぐさまミニターボをおこない加速。そして、アイテムを取りつつ結衣と妹に追いつくように、カートを動かす。
しかし、その前に目の前にいる綾香が抜けない。
先ほどの綾香とは、まるで別人のようにも思えるテクニックだった。壁にぶつかるなといっておいて、ぶつかりそうになっているのは俺のほうなのにだ。
そのまま、なんだかんだで綾香を抜けるまま一ラップとともに二ラップも終了。
残る三ラップ目で綾香を抜かないと、四位という結果で終わってしまう。
序盤の階段と大きな門でアイテムを取りつつ、ミニターボをかけてすぐさま加速。
その一歩手前には、綾香がおり、いつのまにか結衣と妹の姿も見えるところにいる。
俺が取ったアイテムは『ダッシュキノコ』という、一時的に加速の効果をもたらすキノコだ。
俺は、すぐさま使うが綾香との距離が埋まっただけで終わる。
すぐ先のカーブをミニターボで加速しつつ、俺は綾香を抜かそうと極力インコースを付いていくが、それでも綾香は俺の一歩手前を走っている。
「早いなぁ……」
そうこうしているうちに、結衣と妹を抜きさり、ほぼ二人で熱戦を繰り広げるという状況になっていた。
そして、綾香一位、俺が二位、結衣三位、妹四位という状況で終わりを告げた。




