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トレット村のイカ騒動(8)決戦!!ブラッディダゴン

 今回の話は本作で最も下品な話となってしまいました。よって、そうした描写に耐えられない方は後書きに簡単なあらすじを書きましたのでそちらに飛んで下さい。

 色々とやりすぎた感があります。しかし今後、ここまでアレな話は無いと思わないでも無い気もするので、我慢できる方はお付き合い下さい。

 もし問題があると運営の方から注意があった場合は、修正したいと思いますが、そうした指摘が無い場合は無修正で行きたいと思います。

 バスッという音と共に、イカの触手が切断される。現在俺は木こり時代に支給された手斧で、ダークダゴンの解体作業中。死んだダークダゴンの身は硬さを失い、嘘みたいに簡単に切り離す事が出来た。俺とジョニーは順調に解体作業を進め、遅れて駆けつけた万之魚従業員たちが冷蔵庫型のアイテムボックスにその切り身を入れていた。


 クロスとロニーは未だにもう一方のダークダゴンと戦闘中。手助けしたかったが、余りに二人の息が合っていたので邪魔にしかならないと思い、やめておいた。


「実はクロスが戦う所を見るの、初めてなんだ」


「……よくそれで一緒にクランを結成しようと思ったな。しかしそれなら尚の事良く見て置いた方がいい。アイツの戦い方は癖が有りすぎて、ロニーのような器用なヤツじゃないとあわせられないからな」


 戦い方を見ていると、ジョニーの言う事が良くわかる。クロスは大剣持ちの重戦士だが、独特なリズムで剣を振り回す上に本人も割とスピーディーに動く。またデカい武器を筋力強化した腕で振るうから、下手に近寄れば味方が巻き込まれて大怪我してしまう。しかも持ってる武器は全盛期のボンゾが叩いた傑作だから、大怪我で済むかどうかも分からない。


 そんなクロスの邪魔にならずに、積極的に攻撃参加できるロニーはやはり非凡なのだろう。


 軽装であり、巻き込まれたら一発アウトな装備ながら限界ギリギリまで近づき、クロスの攻撃を完全に読みながら合間合間に吹き矢の攻撃を挟む。殺人蜜蜂の毒針は、クリティカルが発生しなくとも麻痺効果がつくため、ダークダゴンは触腕の動きを鈍らせ反撃出来ない状態に陥っていた。そして、クロスの動きに疲れが見え始めた時には直ぐに後退して曲を演奏して回復。打ち合わせなどしていないのに、二人の動きは驚くほどかみ合っていた。


 ブンッ ブンッ

 唸りをあげてクロスの持つ大剣、ジャギュレイターがダークダゴンに襲いかかる。ジョニーの魔法を弾き飛ばしたあの触腕も、嘘みたいにアッサリと斬り飛ばされてしまった。ロニーの毒針も巨大な目玉に何本も撃ち込められており、ダークダゴンももうすっかり動けなくなっている。そして大きく上段に振りかぶったクロスの、渾身の一撃が胴体に深々と突き刺さると……


『…ギュ……ギィ……』


 何かを捻りきるような奇妙な鳴き声を発して、その動きを止める。クロスとロニーの周りを、レベルアップの光の輪とファンファーレが包み込み二人を祝福した。


「強いな。普通に強い」


「癖は強いが、お前と比べたら正攻法だしな」


 ……。


 そうだね。

 俺が好き勝手に攻撃したら、多分あんな風にあわせられる人は居ないような気がする。チームを率いる人間としては、普通に戦う事を覚えた方がいいのかもしれない。


 その後俺たちは、手元のダークダゴンを解体し終えるとクロスたちの解体を手伝いに向かった。クロスによって至る所に触手が散らばっており、その回収もちょっとした一苦労である。クロスは少し苦笑いしながら「武器が良いと張り切っちゃうんだよ」と言っていた。とにかく何かを斬りたくて仕方ないらしい。危険だ。クロスを怒らせるのは非常に危険だ、以後気を付けよう。


 ダークダゴンは目玉と牙をくり抜かれた後、細切れにされて冷蔵庫型アイテムボックスに収納された。作業中に早速腐り始めていたのか、俺たちの身体には奇妙な臭いがこびりついていた。










 さて、解体作業を終えた俺たちは警備の仕事に戻る為に、またあの浜辺へと戻っていた。時間はまだ朝の10時前であり、警備の終わる12時までまだ時間がある。こりゃあ今日はしんどいかもしれないな、とため息をつきながら俺は第二作業小屋のそばに佇んでいた。


 朝からサメとイカをやっつけた。俺自身のレベルは一つも上がらなかったから、きっとそんなにレベルは高くなかったんだろうな。それであれだけ手こずるんだから、俺も慣れない水棲モンスター戦に関してもう少し対策を練った方が良いのかもしれない。そんな事を考えながら、何とはなしに沖の方を眺める。水平線の向こうに黒い点が見えるが、どうやら船らしい。この世界の船の動力って何だろうな、などと考えていると、俺の索敵レーダーにまたもや反応が。またかよ、もう少し休ませろよなどと愚痴を言いながら確認すると、なんと反応はあの船のある位置。浜辺から遠く離れた場所にあった。


 船が敵? もしくは船の下の海中に潜んでいるのだろうか。困惑しながらも目を凝らして船を見つめる俺。その様子を見ていたらしい社長が、なんだなんだと近づいて来た。


「カトー君。何か発見したのか」


「社長。いや、索敵に反応はあるんですが、あの船からなんですよ」


 そう言うと、社長は懐から望遠鏡を取り出した。


「うむ。何やら少し揺れているようだが……」


 揺れているらしい。もしかしたらちょっとヤバいんじゃないだろうか。必死で目を凝らしてみるが、残念ながら俺には黒い点にしか見えなかった。しかし次の瞬間、俺の目にもハッキリと分かるくらいの変化が訪れる。


 黒い点から、鮮やかな赤い煙が立ち上ったのだ。


「いかん! あれは救難信号だ!!」


「まさかモンスターに襲われてるのか!?」


「どうやらそのようだ! あれは……」

 口を開けたまま、社長が固まる。緊迫した表情は、少し青ざめているように見える。そしてゆっくりと望遠鏡から目を離すと、苦々しい顔をしてこう言った。

「最悪だ。赤い足が見えたが、十中八九あれはブラッディダゴンだよ」


「ブラッディダゴン?」


「ダークダゴンの変異種で、凶悪な能力を誇る海の暴れん坊だ。群れを率いる習性があるから、多分ヤツがいるせいでダークダゴンが寄ってくるんだろうな。しかし……私たちにはどうしようも無い。船が無いからあの距離では助けに行けないのだよ」


 また訳わからんモンスターが出てきたぞ。しかし船が無いというのは……確かにこの村には小船しかないから、それで沖まで行って戦うのは無理だな。自殺行為だ。だからと言って、このまま助けを求めるサインを無視するのは俺が我慢出来なかった。


「社長、俺が行く」


「ど、どうやって!? まさかあの神を再度光臨させて乗って行くのか!」


 それはヤダ。出来るかもしれないけど絶対ヤダ。もうこれ以上の辱めは、俺の心が耐えられない。


「まあ、見ていてくれ。ドキドキノーパンライフ!」


 俺はそう言うと、パンツマン第二形態を一旦解除する。マスクとパンツは光の粒となって消え……あ、ヤバい、そうなると俺は裸じゃないか、自分で自分を更に辱めてどうすんだ!?


「カトー君……自信を持つだけのものは持っていると思うが、浜辺で大胆過ぎるだろう」


「い、いや違う! そうじゃなくて……ああもうどうにでもなれ! パンツマン参上!!」


 急いでパンツマン白鳥バージョンに変化する俺。第二形態で裸になっていたのをすっかり忘れていた。それで慌てて白鳥パンツになったは良いが、裸に白鳥パンツだからもう俺は言い訳しようの無い変態となってしまった。


『グアッ』


「これは……」 


 もういいや、今は人助けが優先だ。泣くのは全てが終わってからで良い。


「俺の相棒だ。これで空を飛べるようになったから、今から救助に向かう。悪いがここの警備は任せたぞ」

 そう言ってから、俺は白鳥君に向かって指示を出す。

「行こう、白鳥君! 助けを求める人たちが俺たちを待っている!!」


 さあこの恥ずかしい空間から脱出だ! いつの間にか従業員やら村人やらがまた集まって来ているから! 真っ赤な顔した奥様方の視線が、さっきからやたらとねっとり絡みついて気持ち悪いから!!


『……グァ(ぷいっ)』


「なっ!? 白鳥君、どうしたんだ!」


 なんと白鳥君が拒否をしている! 何故だ、何故行きたくないんだ!!


『グァ……グァアウ、ガ』


 不満そうにそっぽを向く白鳥君。どうやら機嫌が良くないらしい。しかし考えてみれば、最近はあまりちゃんと構ってやれてなかった気がする。扱いもぞんざいだったし、拗ねても仕方ないのかもしれない。こうなったらまた餌をやって機嫌をとるか……。いや、詫びの意味も込めてもっと良い物をあげよう。


「白鳥君。これは俺の気持ちだ、受け取ってくれ」


 取り出したのは、一枚のイカ。副島さんが俺の為に焼いてくれたあの味噌焼きイカだった。それを見た途端に白鳥君の目は輝き出し、嘴も若干震わせながら声を発する。


『ギャ……ギャワワ……』


「いいんだよ、今までつれなくしてしまったお詫びだから。遠慮なく食べてくれ」


『ギャワーーーーッ!!』


 大興奮である。よほど嬉しかったのか、白鳥君は俺の差し出したイカを咥えると夢中になってバクバクと食べ始める。一枚二枚と追加して、手持ちのイカを全て与えた時……白鳥君の身体が俄かに輝き出した! なんだ!?


『グァ~ウ、グァ~ウ!

(意訳:なんちゅうイカを食べさせてくれよったんじゃあー!)』


 いや、なんか微妙に言ってる意味が伝わってくるんだが、そのネタを知ってる白鳥君が怖すぎる! そしてたたみかけるように脳内アナウンスが響き渡った!!



『白鳥パンツの美味しさバロメーターが振り切れました。これから五時間、食べた物に応じた能力が白鳥パンツに追加されます』


【食べた物:イカ キーワード:10】




 なんだなんだ、また奇妙な進化を始めたぞ! いや能力が強化されるんだったら助かるんだが、何がどう強化されるのか分からない所が怖い! イカで10。10本足だから10なんだろうが、一体何がどのように10強化されるんだ? 白鳥で10……足は無いから、残るは翼だろう。ああ、翼が10になるのか! 10翼の白鳥とか凄く格好良いじゃないか、やったな白鳥君! きっと飛行速度も桁違いに強化されるに違いない、これなら救助するのに大きな助けになる!!


 光が収束して行く。白鳥君の姿が少しずつ眩い光の中からあらわれてくる。さあ見せてくれ、新しい君の姿を。大天使と見紛うばかりの、神々しい君の姿を。期待に胸を奮わせる俺の目の前に、とうとう白鳥君はその美しい姿を露わにする!










『グアッ』×10




 そう来たかーーーーーーっ!!!!










◆◆◆◆◆◆◆




 大空を俺は行く。

 股間から白い物を、10本ほど生やしながら。


 多分俺はもうトレット村には訪れないんじゃないかと思う。だって幾ら何でも恥ずかしい思い出が多すぎる。この姿になった途端に大爆笑&悲鳴で周囲が大騒ぎになったんだぞ。鼻血出してぶっ倒れる奥様やら、おかしな所でツボに入って感動する社長の絶叫やら、もう訳わからん状況に俺ですら発狂しかけたんだから。結局俺は「行ってくる!」とだけ言い残してその場から逃げ出した。もうね、さすがの俺でも耐えられなかったよ。股間から10本もひょろ長いのユラユラさせて、あの場所に留まる事の出来る男なんて居るのか? 絶対居ないだろうし、居たら居たで捕まるって。


 とにかく、俺は自分の心の為にも無理矢理頭を切り替えた。今は救助、救助に専念しよう。困っている人を助ける、その為に頑張るんだ。さあ行こう白鳥君、ブラッディダゴンとやらをやっつけて皆を救うんだ! そしてさっさとパンツを解除させてくれ、さっきから心はミシミシと悲鳴をあげているんだ!!


 泣きながら海の上を飛んで行くと、すぐに前方にあの船があらわれる。近づいてみて分かったが、輸送船ではなくて海上戦を前提として造られた船のようだ。船体の横には8門の大砲が備え付けられており、それは海賊などを扱った映画に登場する船によく似ている。ただ一つ決定的に違う点があった。それは、船体に絡みつく真っ赤で巨大な触手。船は今にも傾き、沈没してしまいそうな状態だった。


「ヤバいな、すぐに攻撃に移らないと」


 そうは言ったものの、効果的な攻撃方法が思いつかない。得意の水魔法は効かないのだ。これはまた属性変化を起こす必要がありそうだぞ……


「白鳥君。先ずはウォーターカッターを奴に向けて放ってくれ。俺が魔力を過剰供給して属性変化を起こしてみる」


『グアッ!』×10


 思考が統一されていて良かった。これで10個分の意見が飛び交ったらたまらないからな。白鳥君は機嫌が良いのか気合いの入った顔でウォーターカッターを口から発射する。


『グァバババババッ』×10


 そこに俺が違う属性をイメージしながら魔力を流し込む! そのイメージだが、やはりここは今の所唯一の成功例であるマッスル属性で行くしかないだろう。安全確実に行くのが一番だからだ。別に俺の趣味ではない。


「ゥオオオオォォォ……うなれ俺の魔力、ほとばしれ俺のダンディソウル! 男魂注入、マッスルカッターーーー!!」


『グ……ゴバアァァァァァァッ!?』


 俺の魔力が白鳥君の魔法に劇的な変化を与える! なんと、それまで水で出来た刃が発射されていたのが、いきなり小さな褐色の塊に変化したのだ。それもよく見るとそれは人の形をしており、両手をモンゴリアン・チョップの体勢で振り上げたまま前方に高速回転をしている。その容姿はあの巨人と同じく裸同然の格好をしたにこやかマッチョだった。

 つまり、白鳥君は無数のマッチョを吐き出しているのだ。これはキツい。


『ゴバァッ!? グゴァババババッ!?』

「すまない白鳥君耐えてくれ! この魔法が効かなかったらすぐに止めるから!」


 しかしそうなると俺に残された魔法はウォーターポールだけになる。それをマッチョにしたら肉の柱となるだろうから、さすがにそれは避けたかった。俺にだって踏み越えてはいけない一線がある事くらいは分かってるのだ。


 白鳥君の口から生み出された小さなマッチョたちは、船に絡みつく触手に向かって一直線に飛んで行く。そしてその表面に着弾すると、高速回転で表面を削り始めた。


『マッソゥ! マッソゥ!』

『ハッソゥ! マッソゥ!』

『メーンズ、ソウッ! パワフル、ソウッ!』

『ラヴ、アン、マッソゥ!』

『ビュリホゥ、ソウッ!』


 小さいせいか、幾分甲高い声でそう叫びながら、小さなマッチョたちは高速回転を続ける。船体に絡みついていた触手は次々と切断されて行った。効果は絶大なようだ。……気持ち悪いけど。


「白鳥君、残念ながら効果は絶大だ。もうちょっと頑張ってくれ」

『ガ、ガヴァッ、ゴバアァァゲボゲラァ!!』


 半泣きで10本の首を振るも、口からはマッチョが放出され続けている。にこやかに回転しながら、海中にいると思われるブラッディダゴンめがけてダイブしてゆく。大量の小人の投身自殺を見ているようで気味が悪かった。しかしこの状態が続けば、もしかしてそのまま倒せるんじゃないだろうか。そんな事を考えた時、予想だにしなかったトラブルが発生する。


『グ、グ……グァウ~……』

【白鳥パンツの精神ダメージが許容量を超えました。白鳥パンツは強制解除されます】


「なにっ!? 白鳥君、そんなにキツかったのか!?」


 なんと、白鳥君がダウンしてしまったのだ! 確かに口からどんどんマッチョが生み出されたら俺でも耐えられないとは思うが、まさかこんなに早く限界が来るとは……。アレだな、これからはもっと白鳥君をねぎらってあげた方が良いな。そして、しばらく休ませよう。最近酷使していたような気もするし。


 しかしこうなると大変だ。俺は現在素っ裸で落下中、この状態でブラッディダゴンと戦う事になる。ミラクルパンツは丸1日使用出来ない。今使える有効な攻撃方法と言えば、マッスルカッターのみである。白鳥君を介さず生身で使った事が無いので、どこまで通用するか分からないのが痛いな。さーて、どうするか。


 ザッパアァァン、と水しぶきが起こる。海に墜落したのだ。膨大な泡に囲まれながら海中で目を凝らすと、そこにはズタボロになった巨大なイカがいた。ズタボロだが、まだ活発に動いている所を見ると生命力はかなり強そうである。赤い身体、巨大な目。ギロリとこちらを睨みつけていて、これはかなり怒っているようだ。


 俺は海面に向かって上昇し、一度大きく息を吸ってから再度海中に身を沈める。ブラッディダゴンはターゲットを俺に絞ったらしく、船から離れて俺を追い出した。もし俺がこのまま浜辺に向かって泳いで行けば、コイツも追いかけて来てあのダークダゴンと同じやり方で倒せるんじゃないか。そんな事を一瞬思ったが、そんな思いつきは次の瞬間消えうせてしまった。


 イカは、海中では恐ろしく速かったのだ。


 あの巨体でどうやってそこまで速く動けるのか、というスピードで、俺は一瞬にしてブラッディダゴンの触手に捕らえられてしまった。海中だから目測も正しいか分からないが、多分1km近く距離があったと思う。それを数秒でゼロにするんだから恐ろしい。


 身体に触手がガッチリと巻きつき、固定する。まるで簀巻きだ。両腕の自由を奪われた俺はもがく事も出来ない。マッスルカッターを発動しようにも、締め付けによるダメージが予想以上に強くて集中出来ない。もしかしてこれは本格的にピンチなのかもしれない!


 くそっ、このまま死んでたまるか! セーラを悲しませるような事は絶対にしたくない、必ず生き延びてみせる!


 必死に魔力を集中して反撃を試みる俺、締め落としにかかるブラッディダゴン。その時、ふとブラッディダゴンがおかしな行動を取り始めた。なにやら身体の奥から白い塊を取り出して、俺の方に持ってきたのだ。なんだなんだ、嫌な予感がするぞ。そう言えば以前動物のドキュメンタリー番組で見た事がある。イカって確か交尾の際に精○の入ったカプセルを雌に渡すんだよな。つまりコイツは俺を雌に見立てている? どうみてもイカじゃない俺に何故……ぁあ! ニオイか、ダークダゴンのつがいを解体した時に雌のニオイが俺に染み付いてるんだ、きっと!



 つまりはこういう事だ。





   『や・ら・な・イ・カ』





 ぷっちーん、と何かがキレたような気がした。


 生命の危機より貞操の危機を感じた俺は、自分でも恐ろしいくらいに膨大な魔力を生み出し、禁断の魔法を発動させる。もはや恥も外聞も無い、全身全霊全力全開で貴様を倒す!








  『マッスル・ポールッッッ!!!!』










 その日。


 トレット村の人々は、沖に雄々しくそそり立つ男の象徴を目撃したという。











 無事ダークダゴンを討伐し終えたカトーだったが、彼を待っていたのは新たなる強大な敵、ブラッディダゴンだった。遥か沖に上る救難信号の煙、空を飛べるのはカトーと白鳥だけ。ここに、男たちの壮絶な戦いの火蓋が切って落とされた。身体に異常をきたしながらも戦う相棒。未だ決定的な攻撃手段を見いだせないカトー。戦いの最中、ついにカトーは新たなる力に目覚めるも、相棒である白鳥を失ってしまう。悲しみと怒りに震えるカトーが激闘の末に繰り出したのは、天をも貫く男の魂ともいえる魔法だった。


 孤高にして至高、美しき男カトーが繰り広げるスペクタクルハードボイルドアクションコメディ。可愛らしい白鳥やイカに囲まれた至福の時間をあなたに。最後はアッと驚くような展開でみんなのハートを撃ち抜くぞ!

『トレット村のイカ騒動、第8話 決戦!! ブラッディダゴン』

 あなたの心に、ミラクル☆パンツ!





以上、あらすじでした。



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