やりすぎてた者たち
夜の暗さに目が慣れていたせいか、街の明かりがやけに眩しい。フォーリードについた俺たちは先ず、付き添いのメンザと共にギルドへと向かった。彼の仕事は馬車の運転だけではなく、クエストの見届け人という役割も担っているらしい。今回は馬車が現場まで入れなかったので途中で待機となったが、本来であれば最後までついて来て戦いを見届けるのだとか。そして、一部始終をギルドに報告する。討伐系の仕事はよほど危険でない限り、こうした同行者を連れて行くのが基本のようだ。
「ようし、ついたぜ。旦那たちは受付に行っておいてくれ、俺は馬車を裏にまわしてモンスターの残骸を運んでおく」
「分かった、ありがとう」
荷台にはあまポテアーマーに加えてクマ(針治療バージョン)とゴールデンフォックス、ロンリーウルフの首にマッスルスネイクとヨロイトカゲの挽き肉袋詰めが乗せられている。メンザの話では、換金するとこれだけでかなりの金額になるのだそうだ。
「フレイ、本当にゴールデンフォックスをギルドに渡してもいいのか。相当気に入ってたみたいだったが」
「うん。私が毛皮を身につけても似合わないし、今は身なりを良くするよりも名声が欲しいから。ちゃんと私の名前で討伐証明書を発行してもらう方が嬉しい」
「そうか……まぁあの毛並みが恋しくなったら俺が変身してやろう。魂はしっかり吸収出来たし、いつでも変身できるからな」
「ありがとう。そん時は良い的になってね」
「こらこら」
去ってゆく馬車を名残惜しそうに見つめながら、しかし最後は明るくフレイは笑った。
さて、クエストの終了は基本的にギルドへ報告して終了となる。フリーの冒険者の場合はその後に各々が報酬を貰って解散となるのだが、うちのクランの場合はローランドがギルドと事務的な処理を済ませてから、そこで得た報酬を後日メンバーに給料として支払う流れになるそうだ。時間も遅くなったので、自宅通いのリリーはここで帰る事になった。また、フレイもネイを依頼人の親戚であるルシアに会わせる為に、クランハウスへ行くという。結果、ギルドへの報告は俺とローランドとセーラの三人で行う流れとなった。
久しぶりに訪れるギルドは、見ただけで駆け出しと分かる冒険者もいるが、大抵は柄の悪い若者が大半を占めていた。その雰囲気にローランドなどは少し怯えていたが、俺とセーラは堂々とした態度で受付窓口の列に並ぶ。確かにパッと見、彼らは怖そうに見えるかもしれないが、よくよく見るとそれほど強そうでもない連中ばかり。多分、束になってかかって来ても、セーラ一人だけで蹴散らせるレベルだろう。最近の冒険者の質が低下しているという話は憲兵やギルド職員から聞いていたが、彼らの覇気の無さからして、やはりそれは本当のようだった。
窓口は3つあるのだが、絶えずそのどれかで大声で抗議をしている人間が出ていた。報酬に納得いかないとか、成功と認定されなかったのが納得いかないとか、そうしたクレームが多いようだ。
「ローランド、ギルドってこんな雰囲気だったか? 俺は今まで閑散とした時間帯にしか来た事がないから良くわからないんだ」
「えーと、私たちみたいに日帰りで終わるクエストを受ける方はこの時間帯に報告するのが集中するんですが……日帰りの仕事を選ぶ方は基本的に即日即金を望む場合が多いんです。で、そうした方は特に生活が安定していない事が多いので……」
切羽詰まっていて、こうした雰囲気になってしまうと。それにしたってクレームをつける人間が多すぎやしないか。こうした殺伐とした雰囲気、あまりセーラに味わわせたくないんだが。
「セーラ、もし辛かったら先にホテルに戻っていても良いんだぞ」
「大丈夫ですよ。カトーさん、ここよりはましでしたけど、職業斡旋所だって似たような雰囲気だったでしょ? こういうのは慣れてますし、平気です」
言われてみると、そうだったかもしれない。セーラが見た目の割に精神的にタフだったりするのは、こうした厳しい生活に慣れているからかもしれないな。
並び始めて約一時間。やっと俺たちの順番がやって来た。担当する職員は、以前俺に小言をくれたあの生真面目な男性職員だった。ローランドが職員に要件を告げる。
「クラン『クロス&カトー』のローランドと申します。メンザさんの立ち会いでクエストを終了して参りました」
「………! 承知しました、それでは二階の204号室へ向かって下さい。先ほど計算が終了して、担当の者が見積もりを持ってそちらでお待ちしております」
おや? 何だか緊張したような表情をしているが、どうしたんだろう。しかしローランドはそんな彼のリアクションに驚いた様子も無く、俺たちに声をかけた。
「さあ、行きましょう。そこにいたら後ろの方たちの邪魔になってしまいますよ」
「あ、ああ……」
不思議に思いながらも、俺たちはローランドの後を追って二階へと向かった。
わけもわからず二階へ上がり、指定された部屋へとやってきた俺たち。ドアをノックすると、中から聞こえてきたのは俺たちのよく知る人物の声だった。
「ああ、入ってくれ。待っていたぞ」
その声の主とは、クロス。以前クロスと出会った会議室のような部屋の中央、彼は真っ黒な鎧に身を包んだ重戦士といった出で立ちで俺たちを迎える。傍らにはアメリアがおり、こちらも朝と同じ赤いドレス風の衣装に白銀の胸当てをしていた。夫婦揃っての出迎えとは何とも和やかではあるが、その鎧に残る血痕が色々と台無しにしていた。
少し離れた所には、背の低い女性職員の姿。瓶底メガネという名前がぴったりな分厚いレンズのメガネをかけている。金髪をおかっぱにした生真面目そうな女性で、初めて見る人だが、何やら俺を見てかなりビビっているようだ。声を震わせながらこちらに向かって挨拶をしてきた。
「は、初めまして、私は鑑定士のチックと申します、カ、カ、カトーさんで宜しいでしょうかっ!?」
「いや、俺はローランドだ」
嘘をついた。
「待って下さい、それじゃあ私がカトーさんになるんですか。それは絶対に嫌です!」
本人にバラされた。しかも嫌がられた。ショックだ。
「……冗談だ。確かに俺がカトーだよ、宜しくなチックさん」
「は、は、はいいいいっ! よろしくおねがりぐぷれっ!?」
噛んだぞ。
余りの緊張具合に気の毒だと思ったのか、アメリアが助け舟を出した。俺たちに二枚の紙を手渡して、先ずはその紙に目を通すようにと言う。そこには、俺たちの倒したモンスターの名前と、クロスたちの倒したと思われるモンスターの名前が列挙されていた。
ダーティベアに殺人蜜蜂、ゴールデンフォックスにマッスルスネイク……ふむふむ、これは俺たちの分だな。ヨロイトカゲにロンリーウルフもそうだ。で、このブラッドバードにアイアンビートルはクロスたちだろう。他にも……キマイラ? グリーンドラゴン? ちょっとまて、なんだグリーンドラゴン3体にギガントゴーレム5体ってのは! これ、まさか1日で倒したってのかクロスたちは!?
「見ての通り、多すぎる。ギルド側の話では一度に払いきれない金額に達しているそうで、分割にしてくれと頼まれてな」
「そりゃそうだ、お前ら飛ばし過ぎだろ。よく生きて帰ってこれたな……」
呆れてそう言うと、訂正するようにクロスが口を挟んだ。
「いや、金額が異常に高くなったのはカトーたちの狩ったゴールデンフォックスのせいだぞ。今まで市場に上がった中では最大、尚且つ保存状態最高で傷も最小だからな。一体で8億Yの値段がついてる」
………。
……8億?
「クロス、冗談にしちゃ出来が悪いぞ」
「そりゃ冗談じゃないからな。元々ゴールデンフォックスは滅多にあらわれない上に警戒心も異様に強いから、仕留める事は不可能だと言われて来たんだ。運よく死体が見つかる程度で、状態も悪い物が殆どだ。討伐したって言ってる奴らにしたって自己申告ばかりで、実際は死体を見つけただけらしいからな。そんな所に、立ち会い人アリで狩りたてホヤホヤ、完璧な状態のゴールデンフォックスの遺体が入ってきた。値段が馬鹿みたいに高くなるのも当然だろう?」
「……そうだったのか」
実は凄まじい偉業を成し遂げていたらしい。フレイってもしかして、俺が想像していた以上にとんでもない狩人なんじゃないか。
「フレイも大変だな。これで一気に名前が売れるだろうし、世間からの注目度も半端じゃなくなるぞ」
俺の言葉にアメリアも強く頷く。そして誇らしげな表情をして言った。
「これで名実共にフォーリード最高の狩人になった。もしかしたら引き抜きを企てる連中が出るかもしれないな。カトーはこれから、チームリーダーとしてフレイの事をしっかり守ってやって欲しい」
「あ、ああ。それはいいんだが……」
置いてけぼりになってるチックさんを見た。
「話を戻そう。分割払いになると聞いたが、具体的にどうなるんだ?」
「あ、はい、明日ゴールデンフォックスを競売にかけまふ! 加えてマンディール国かりゃの資金援助が来月初めにありまふし、競売の落札価格次第では直ぐにお支払い出来りゅかもひれまへんが、お急ぎでなきゅるば来月中旬から三ヶ月に渡っての三回払いれお願いしまふ!!」
落ち着け。……しかしイマイチ良くわからない資金繰りだが、このギルドはそれで大丈夫なんだろうか。
「クロスがそれでいいなら、俺も構わないよ。こっちとしてはフレイの名前で討伐証明書が発行されればそれで構わないんだ。皆に給料を支払えるだけの資金は、スポンサーからしっかり提供されてるはずだしな」
俺の言葉に、チックは露骨に安心したような顔をして胸をなで下ろした。クロスやアメリアも似たような顔をしているが、俺がゴネるような人間にでも見えたのだろうか。意味が分からずキョトンとしていると、その疑問に答えるかのようにローランドが口を開いた。
「大きな金額を耳にすると、どれだけ出来た人間であっても変貌してしまうものです。ここに部屋を移したのも、あのフロアにいる人たちの心を刺激しないようにする為なんですよ。カトーさんももしかしたら大金を前に心が乱されるかもしれない、と心配していたのですが……その必要は無かったようですね?」
んー……。あ、ああ。そういう事か、やっと分かった。あれだ、宝くじが当たった人を別室に呼んで隔離してから支払い方法を説明するようなもんだろう。確かにあの場でこんな話をしたら大騒ぎ間違いなしだし、もし俺が即金で欲しがる人間だったら、ゴネて大騒ぎしていたかもしれない。
しかし、ねぇ。セーラを見ると、やっぱりニコニコとしていた。俺が金銭面で苦労するなんて事は、よほど大きな投資でもしてコケない限りは有り得ない話だ。個人資産180億。昔の自分に今更感謝する俺である。
「リリーやフレイたちには俺から説明しておくよ。ただ、通常の依頼達成に関する報酬は普通に支払ってくれ。あとクロス、リリーの鎧が歪んでしまったんだが、その補修費用は経費で落とせるんだよな?」
「あ、ああ。ローランドに処理してもらってくれ」
「わかった。後は……」
確認しなきゃいけない事は、他に何かあったかな。セーラに聞いてみたが首を横に振るだけだし、ローランドも書類に目を通しながら大丈夫だと言う。それなら、これで用事は済んだな。
「俺からはもう何も無いよ」
そう言った所、どうやら向こうにはまだ用事があったようで、チックは恐る恐る俺を上目づかいで見ながら、小さな声で尋ねてきた。
「あの……依頼とはちょっと関係ない事でお聞きしたい事がありゅのでしゅが」
「なんだ」
「この街の北門付近で、恐ろしいモンスターが出たという報告があったんだす。カトーさんたちは北門から帰って来たと聞いてまふから、何か心あたりは無いれふか」
恐ろしいモンスター?
はて、そんなのいたかな。
「そのモンスターは空を飛んれ、頭が3つで羽が生えてるそうれす」
なんだそりゃ。特撮物で出てきそうなモンスターだ。
「腕が4つに足が4つ、凄い勢いで水を吐き出すと報告があったんれすが……私も聞いた事がないのれ、困っていたんだす」
………。
「いや、知らんな。そもそもそんなモンスターがいたら、索敵スキルを発動していた俺が真っ先に見つけていたはずだ。空を飛ぶなら尚更だな。俺も空を飛びながら索敵していたから見つけられないはずがない」
「そ、そうでふか! わかりまひた、そえならいいんれふ! 私の方から聞きらかった事はこえれ全部れす!」
そうか。今更だけどお前、酒でも飲んでるのか?
「それじゃあ、俺たちは一度クランハウスに寄ってから帰るよ。ローランド、討伐証明書の発行手続きとか、事務処理の方を頼む」
「分かりました。カトーさん、セーラさん、今日はお疲れ様でした」
クロスたちとも挨拶を交わして、俺とセーラはその部屋を後にする。去り際、アメリアが俺に一つ質問をしてきた。お前は飛んでいた時何か魔法を使わなかったか、と。俺は正直に答えた。『俺は』ウォーターカッター一発しか使わなかったよ、と。
ギルドを出た俺たちは、すっかり夜の街と変わったフォーリードの街をクランハウスへ向けて歩き出した。この街は本当に活気に満ちており、通りを歩く人たちの笑い声がそこかしこから聞こえてくる。はぐれないようにセーラの手をしっかり繋いで、俺たちはなるべく明るい道を選んで歩いた。少し脇道を覗くと、やけに煽情的な服装の女性たちが客引きをしている。危険な街だ。きっとセーラと出会ってなかったら、俺はこの街で散財しまくっていたかもしれない。
「セーラはこの街でよく生きてこれたな。もっと静かな町や村の方が生きやすかったんじゃないか」
「それはそうなんですけど、この付近で仕事を見つけようと思ったらこの街に来るしか選択肢が無かったんです。東にも多少大きな港町でカンティーナという町がありますけど、そこまで辿り着くだけの強さも無かったですし」
「そうか。……将来、俺たちが家を持って定住する時はもっと静かな町にしてもいいんだぞ」
そう言うと、セーラはまた幸せそうに顔をゆるめた。なんかこの顔、面白いな。毎日口説いてユルユルにし続けてみようか。今まで生きてきて初めて、イタリア人の気持ちが分かったような気がした。男はきっと、女を口説いてとろけさせる為に生まれたんだ。
「エヘヘ……この街はクレアさんたちがいるし、リリーさんもいるから大好きですよ。だから、この街にずっと住むのも良いと思ってます。本音を言えば、カトーさんと一緒ならどこでも良いんですけどね」
………。
全米が泣いた。いや、全米で流れるはずだった涙を今俺が一人で流した。心の中で。
「よし、それならもう二人の家を買ってしまおうか。いつか休みの日にでも家を探しに行こう」
「カ、カトーさん、私たちホテルの部屋を長期契約で借りたばっかりですよ!」
慌てるセーラを愛でながら、俺たちはバカップル丸出しの会話を交わしつつ、クランハウスへの道を歩いて行った。うん、こりゃ確かに目の毒だな。嫉妬に狂った男に刺されても仕方ない。もっとも、いくら刺されようが俺の身体には傷一つつかないのだろうけど……
クランハウスにつくと、なんとも奇妙な光景が繰り広げられていた。
建物手前、広々とした庭の芝生にフレイが寝転がっている。そこに、ルシアとネイが交互にカインドヒールをかけていたのだ。
『カインドヒール!』
「お、おぉおっ、これはっっっ!?」
フレイが恍惚とした表情で奇声を発した。なんだなんだ、一体何が行われているんだ。
「まったりとしていてしつこくなく、身体にじんわり染み込んで行く……何ちゅうヒールを食らわしてくれたんじゃあ……」
『いや普通にカインドヒールだけどね。あなた疲労を蓄積させすぎなのよ、まだ若いのに異常よ?』
フレイが何故そのネタを知ってるのか気になる所だが、それよりも何をしているのか気になった俺はルシアたちに声をかけた。
「お疲れ様、ルシア。大活躍だったみたいだな」
「あ、カトーさん! 聞きましたよ、そちらも凄かったみたいじゃないですか!」
先ずは挨拶を交わして今日の仕事の話を少し。そして早々に切り上げ、この状況の説明を求める。ルシアは少し困ったような顔をして答えた。
「実は、ネイさんの事情をフレイちゃんから聞いて、是非ともうちの教会で働いてもらいたいと思って勧誘していたんです。で、色々と質問をしていたんですが」
『私の住んでいた村にはミリア教の教本が少なくて、シスターをするには基礎知識が足りないみたいなの。で、肝心の信仰心がどれくらいか見る為に、今カインドヒールをかけていたのよ』
なるほど。ネイのカインドヒールって凄まじい威力だから合格間違い無しなんじゃないか。
「で、結果はフレイが気持ち良さに悶えている、と。これって合格なのか?」
ルシアは照れながら答える。
「実は先に私がフレイちゃんにカインドヒールをかけたんですけど、少し身体が軽くなる程度の効果しか出ませんでした。普通、MPを消費しないとそのくらいの効果しか出ないんですよ。でも、ネイさんのは……」
多分大怪我してても完全回復するんじゃないかな。有り得ない回復能力だったぞ、確か。
『向こうの教会にいた頃は、これで病気も治してた。切り傷も治してたのよ。薬が高価で手に入らなかった分、こっちの技能を上げないと村の皆を助けられなかったから』
「信仰心だけでなく、心のあり方からして素晴らしく理想的なミリア教徒ですから、私も感動して……それに比べて私って情けないなぁ、なんて複雑な気持ちになっている、そんな状況です」
よく分かった。合格どころの話じゃなかったわけだ。
「それなら、ネイは教会の方で保護して貰えるのかな」
「勿論です。叔父も過労で身体を壊しかけてますし、ネイさんとの出会いはミリア様のお導きとしか考えられません」
目がマジだった。狂信というより死活問題、という雰囲気だ。ネイに目を向けると、まんざらではないような顔をしている。
『必要としてもらえるなら、私は期待に応えるだけよ。それに教会に身を置けるのなら、何も出来ずに死なせてしまった同僚や村の人たちの為に祈りを捧げる事も出来るし……きっと、私にとって一番ふさわしい場所はやっぱり教会なのよ』
「そうか。ネイがそれで納得できるのなら、それが一番だ」
落ち着くべき所に落ち着いた、という事だ。最大の懸念がネイの処遇だったから、俺もホッと一安心である。彼女の場合は一応密入国者だし、モンスター化してしまっているから最悪討伐対象になりかねないと思っていたんだが、これでもう彼女も安泰だろう。
「なら、これからネイの就職祝いも兼ねて皆で食事に行かないか。フレイのゴールデンフォックス討伐も祝いたいし、今日は俺の奢りで目一杯食べまくろう」
「マジで!?」
悶えていたフレイが飛び起きる。何だか猫耳と尻尾がピンと立ったような幻覚が見えるぞ。その変わりように皆が笑い、照れたようにフレイも笑った。
こうして、俺たちは宿泊しているホテルの地下食堂で夕食をとる事となった。ネイはルシアとお揃いのミリア教のローブを身に纏って、俺たちもラフな格好に着替えて食堂に集まる。そして、恐らくはこの食堂で最も値段の高い料理を次から次へと注文した。途中からクロスたちも加わり、酒も入り、豪勢などんちゃん騒ぎは夜遅くまで続いたのだが……
その間、誰一人としてあまポテを注文しなかったのは気の遣いすぎなんじゃないかと思った。気持ちは分かるんだけどね。




