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あまポテとの戦い(壱)

 朝食を終え、一度部屋に戻って着替えをしてから、俺たちはホテルのロビーに集まった。今度はアメリアとフレイも一緒で、皆キスクワードの贈った防具を身につけている。


 アメリアは以前見た時には使い古した皮の鎧を着ていたが、今は真新しい白銀の胸当てを装着していた。他、同じ白銀で作られたスカート状の防具を身につけている。その下には真っ赤なショートドレスに編み上げの黒いロングブーツと、何だかやけにSっ気の強いお嬢様みたいなルックスになって登場した。何かに目覚めたのだろうか。


 フレイは見た目からして妖精だ。緑を基調としたローブは裾が葉っぱのような形にカットされており、腰に絞りが入れられている。外見が中性的なフレイは、まるで「大人になりたくないメルヘンの国の少年」を思わせるいでたちとなっている。ローブから覗く素足は何気に引き締まっていて、日頃からしっかり鍛えられているようだった。


 ルシアは食堂で見た通りである。白地に青や金の糸で、ミリア教のシンボルマーク|(発電所の地図記号の中に女性の横顔が描かれている感じ)が胸元に施されている以外は至って地味なローブを身にまとっていた。ルシア本人は紛れもない美人なのだが、とにかく衣装で損をしている。もしかしたら地味に見せて、エロ方面の抑制の効かない男たちから身を守ってるのかもしれないが、ちょっと不憫だ。今は頭からすっぽりと白い四角の帽子を被っており、もう何が何だか分からない。何となく豆腐仮面という名前を連想させた。


 そして、セーラである。


 セーラは眩いばかりに輝く白金の胸当て、そしてクリーム色のスカートを身に着けているのだが……破壊力で言えばかなりのものである。元々が美人なセーラ、スタイルもかなり良い。それが露出のある衣装に衣替えしたのだから男なら黙っていられないだろう。加えて胸当ての下には真っ白でやけにヒラヒラの付いたチュニック、スカートから覗くガーターストッキングには魔力の籠もった刺繍が施されており、何というか、エロい。エロかっこいいのだ。


 素晴らしい。生きてて良かった。


「カトーさんの熱視線の行方がやけに偏ってるのが納得いかないんですけどー」


「フレイ、よせ。婚約者以外に目移りするような奴じゃないだろう、カトーは」


「なんか私は食べ物に例えられたような気がしました」


「あ、あぅぅ……カトーさぁん……」


 何やら雑音があったが気にしない。セーラ、素晴らしいよ。これでもう少し全体的にぷよってたら、ストライクゾーンど真ん中だったな。どうにも痩せ気味なのが気になるんだよ。ハッキリ言おう、痩せよりポチャってる方が男受けは良いのだと。セーラにもルシアのようにお菓子を食わせまくってみようか。


 ちなみに俺はいつにも増して格好いいぞ。なんと、この世界に来た時と全く同じ。上下黒のスーツである。セーラがしっかり直してくれたのだ。革靴だってバッチリだ。どこからどう見ても今の俺は企業戦士、周囲から浮きまくっている。これで腰にディメオーラを帯刀しているのだから格好良いだろう。裏社会で生きるダークヒーロー気分だ。マントと麦藁帽子がチャームポイントだったりする。


「で、カトーさんはどんな民族衣装なんですか? どー見ても弱そうですけど」


 フレイの言葉も的外れだな。こんなに勇ましい服装は無いと言うのに。というか民族衣装言うな。


「失敬だな。俺の国ではこの服装で24時間戦ったりするんだぞ、ネクタイなんて頭に巻いて、酒で顔を真っ赤にして戦うんだ」


「どんだけカオスなんですかクオリタ」


 そう言えば俺の出身地はクオリタという事になっていたな。ごめん、クオリタ。俺のせいで凄いイメージが出来上がってしまった。


 とにかく昨日までとは一新して、なかなかに充実した装備となった俺たち。早速ホテルを出てクランハウスへと向かったが、道行く他の冒険者と比べてもアメリアたちの装備は目を引いた。どういうわけか人々の視線は俺に釘付けだったが、理由は着ている人間の魅力の差なのだろうか、それともスーツが格好良すぎたせいだろうか。どちらにせよ人々の目は俺に釘付けである。せっかく装備を新調して意気揚々としていたアメリアたちには申し訳ないが、きっと街の皆も君たちの魅力に時期に気付くさ。いずれ褒め称えられる日は来るだろうから、諦めないで欲しい。


 さて、道中話題に上ったのはやはり『あまポテ』であった。あまポテとは何ぞや。その問いに答えたのはルシアだった。


「その名の通り甘いポテトです。フォーリードに住んでいたのなら何度か口にしてるハズですよ。ホテルの定食とかによくついてるポテトサラダ、あれは大抵あまポテの若い物を使ってます。成熟すると甘味が強くなって、お菓子とかにも沢山使われるようになりますよ」


 ほうほう、確かにそれなら食べた事がある。ジャガイモよりは甘く、サツマイモほどは甘くないポテトサラダだ。肉料理にも付け合わせで出る事が多い。肉汁やソースを吸わせて食べると非常に美味しかったのを覚えている。甘味はあまり食べてないから分からないが、スイートポテトみたいな物が出来そうだな。しかし……それが討伐対象というのはどういう事だ。


「それを倒すってのが良くわからないな。自立歩行でもするのか」


「……うーん、その説明をする前に、知っておくべき事があるんです。多分フレイちゃんやセーラさんもまだ知らない事だと思いますから、ちょっと長くなりますが説明しますね」


 そう言って説明に入るルシア。その内容はなかなかに興味深いものであり、また一般の冒険者たちが如何に適当な仕事をしているかを認識させる、トホホな話だった。







 まず『あまポテ』。甘いポテトであり、野生種はマンディール国南部、フォーリード周辺の森に生息する。生命力が強く病気にかかりにくいのが特徴で、長きに渡って行われた品種改良によって大量生産が可能になると、瞬く間にマンディール国中に広まった。これだけ聞くと普通に素晴らしい野菜としか思えないが、ここからが違う。


 あまポテは強い。その強さは品種改良の過程で別の用途に使われるようになった。根に他の作物を『接ぎ木』するような繋ぎ方をして、病気に弱い作物を強化して量産する苗床のような使われ方をし出したのだ。少々ムチャなこのやり方は、奇跡的に大成功する。あまポテは生きる事に貪欲であり、どんな状況でも生きようと必死だ。その生命力で自らに接ぎ木された様々な植物をも逞しく育て上げてゆく。この特性に着目したのが、ルシアの所属するミリア教会だった。


 あまポテの活用法が研究されていた当時、マンディール国は流行り病と冷害に悩まされていた。国教としての権威が自然災害によって陰り始め、頭を抱えていたミリア教の指導者たちにとって、このあまポテは非常に大きな存在となる。当時の流行り病に有効とされた薬草は、環境の変化や虫に弱く手に入りにくかったが、あまポテを活用する事によって劇的に量産しやすくなった。さらには元々食べ物として栄養価も高く優秀だった事から、教会をあげて栽培に乗り出し、冷害によって食料難に陥った地域の人々に、あまポテを無償で配る事によって求心力の復活に見事成功。あまポテはミリア教だけでなくマンディール国中の人々を救った作物として特別な存在となっていったのだ。


 しかし。


 あまポテには恐ろしい側面があった。これが今回の討伐話と関わりのある所だ。


 あまポテの育ち方は特殊で、初めの一年はとにかく地中の栄養を貪欲にむさぼり続ける。そしてある程度の大きさに育つと地上に芽を出すのだが、その性質は食虫植物だ。食用に使えるのはこの芽が出るまでで、それ以降は芋に苦味やエグ味が混じるようになる。そしてさらに半年が経つと、地下茎までも変化する。それまでは大人しく地中の養分を吸っていたのが、近くの他の植物をその根で手繰り寄せて合体、吸収し出すのだ。地上でも地中でも迷惑極まりない植物に変わってしまうのである。


 量産体制に入った教会もその性質を知ってからは栽培に気を使うようになった。決められた場所に決められた数だけ植え、適切な時期に一気に収穫する。一株でも残して年を越させてしまうと、翌年植えた芋が軒並み食べ尽くされてしまうのだから、その扱いも慎重になるというものである。しかしそうした気遣いが出来るのもしっかりとした体制の整っている教会や大農場くらいで、地方の教会や小さな農家には土台無理な話であった。それは、発展してきたとは言えまだまだ地方都市でしかないフォーリードの教会も同様で、あまポテの収穫すら人手が足りずに冒険者ギルドに頼む始末。そしてそんな状況だからトラブルも当然起きやすく……


「お恥ずかしい話ですが、私の働いてる教会の管理する農園で越冬したあまポテが見つかって……。去年ギルドから派遣された方たちが色々手を抜いていたみたいで、沢山の収穫忘れの芋が合体して、やけに大きなあまポテに成長しているんです。今では近くを通りかかった人を襲ったりしているみたいで……」


 どんなポテトだよ。イヤだなぁポテトに襲われ食われました、とか。こんな情けない死に方無いだろう。


「そこまで大きくなるまで気づかなかったのか? 日頃農場で働いてる人たちは何をしてたんだ」


 俺が呆れたように聞くと、ルシアは俯いてしまう。言いにくそうに小さな声で答えた。


「農場は森の中にあって、管理しているのは叔父なんですけど、叔父は神父としての仕事が忙しくて中々農場に行けないんです。他の人たちも私を含めて副業を持たないと生活出来ないので、そちらにばかり意識が行ってしまって……。本当に、私たちがしっかりしていればこんな事も起きなかったんですが」


「カトー、あまり責めてやるなよ。これはルシアたちのせいと言うより、ミリア教会が悪いんだ」

 アメリアがフォローするように言った。

「毎年ミリア教の祭典が各地で開かれるんだが、その際は各地の教会で作られたあまポテを奉納する。毎年それぞれの教会が、規定数のあまポテを作らないといけない決まりがあるらしいんだが、ルシアたちは毎年少ない人員で何とかやりくりしているんだ」


 なんとまぁ非効率な……でも宗教上の理由ならどうにもならないか。地元の農家に委託とか出来たら楽なのにな、収穫をギルドに頼むくらいならそれくらい許されそうなもんだが。


「納得するかはともかく、理由は分かった。大変なんだな、ミリア教というのも」


「あまポテって食べる分には美味しいんですけど、最近は見るのもイヤですね。ミリア教じゃなかったら、私も気楽にあまポテを好きでいられたんですが」


 そう言うルシアは何だか、えらく疲れきったような顔をしていた。


「セーラは知っていたか? 森の中にいたなら、あまポテとか見かけたんじゃないか」


「んー……見た事はありますけど食べようと思った事は無いですし、そんな怖い植物だとは今まで全く知りませんでした。当時は基本的に葉野菜や木の実、豆類ばかり食べていて、それで満足でしたから気にしてなかったんですよね。それにヒョロヒョロ伸びた茎や葉が揺れて気持ち悪かったので、避けてました」


 そんな食生活でよく生きていたな。というか微妙に狙われてたんじゃないか、セーラ。芋に狙われるエルフとかシュールにも程がある。俺がそんな奇妙な光景を思い浮かべていると、フレイがセーラの話を聞いて頷きながら口を開いた。


「だよねぇ、分かる分かる。私もさ、あんまりお腹すいて苦しかったから野生のあまポテを採ってやろうと思った時があってさ。そしたらツタみたいなの巻きつけて来て怖かったんだよね。中には一人で勝手に動きまくるやつもいるんだって、最悪だよー」


 ………。


 もはやそれは芋じゃないだろう。冗談で「自立歩行でもするのか」なんて言ってたが本当にするとは……頑張って姿を想像していたのだが、今ので何が何だか分からなくなってしまった。俺の中であまポテは、今やウツボカズラ+マンドラゴラみたいなおぞましい化け物に変化してしまっている。


「これは激戦になりそうな予感がする……」


 そう俺がつぶやくと、隣で何故かアメリアが笑った。










 さて、クランハウスである。広い庭の真ん中に建つ豪邸といった感じのクランハウスに入ると、そこには爽やかな笑顔のローランドとクロスが待ち構えていた。昨日までと違うのはローランドの服装で、執事チックな服装から一転、何だか登山にでも行くのかと言う山男風ファッションでの登場である。その手には分厚いファイルがあり、一つをローランドが。もう一つをクロスが持っていた。


「おはようございます、皆さん。早速ですが仕事の依頼書をギルドから預かって参りました。AチームとBチームに別れて本日のスケジュールを決めて下さい」


「おはよう、みんな。……アメリア、早速指名で依頼が入ってる。お前も依頼書に目を通してくれ」


「分かった」


 アメリア、ルシアはクロスのもとへ。残ったのは自然とBチームのメンバーとなる。既にクランハウス入りしていたリリーが、ローランドの持つファイルを見ながら何やら感動していた。


「リリー、おはよう。どうしたんだ? 何やら機嫌が良さそうだが」


「あ、カトさんおはよう。だって、仕事だよ? わざわざギルドに行って問い合わせしなくても仕事があるって凄くない? それもこっちが選ぶ立場とか……ヤバ、涙出そう」


「分かる、分かるなー、その気持ち。私もお姉様たちに拾ってもらう前は大変だったもん。フリーって本当に辛いよねー……」


 フレイがリリーの言葉にウンウンと頷く。ふむ、駆け出しの冒険者とはそういう物なんだろうな。俺たちは最初からクロスたちと出会えていたから楽だったが、確かに縁故無しなら苦労していたかもしれない。


「じゃあ、先ずはそのありがたい仕事の依頼書に皆で目を通すとするか。ローランド、会議室か何かあるかな」


「はい、こちらへどうぞ」


 促されるまま、俺たちは一階の倉庫部屋の隣にある第一会議室と書かれた部屋へと移動した。








 会議室はやけに現代的な部屋だった。壁は真っ白な漆喰、床にはグレイのカーペット。並ぶ机にしても木製だが脚部分は金属製で、ローラーまで付いている。壁の一部は黒板になっており、見た感じ予備校や塾の一室だ。やけに俺のスーツが違和感なくて、少し笑ってしまう。


 とりあえず俺は黒板前の机に皆を集め、ローランドから受け取ったファイルを開いて置いた。皆が覗き込む中、俺も一通りクエストを確認して行くが……


「ローランド、これって全部このクラン宛ての依頼なのか?」


「具体的に言うと依頼者が指名しているのではなく、ギルドがこのクランを指名しているんですけどね。他の冒険者には荷が重い、とか信頼出来ない、という理由でこのクランに回ってきた仕事です。クロスさんの名前はそれだけ大きいんですよ」


 なるほどねぇ。


 おや、でも依頼書には『クロス&カトー』と依頼者自身がクランを指名してるものもあるぞ。これは……ああ、ミリア教会か。さっきまで話していたあまポテ討伐。ランクはDだった。


 視線を感じてふと見上げると、こちらを見つめるローランドの顔が生き生きとしていた。なんだろう。そう言えば格好からして森や山を歩く格好だし、最初からこの仕事を受けるだろうと決めうちしたかのようだもんな。ふむ。


「他の仕事も見てみよう」


「え……」


 困惑した。


 依頼書には他にも「輸送隊の護衛」「薬草採集」「魚養殖場の警備」などがあり、どれも依頼難度がC、D付近のものばかり。手始めに受けてみるには良いクエストが揃っている。


「あ、あの……カトーさんは甘い物とか好きですか?」


「いや、どちらかと言うと塩辛い物が好みかな」


 いきなり何を言い出すんだ、ローランド。そして何を焦る。


「知ってますか? 今は丁度焼き芋が美味しい季節なんですよ」


「それは知らなかったな、是非味わってみたいものだ。しかし今は仕事の話だろう? 食べ物の話はまた今度な」


「ふぎゅ」


 涙目になった。フレイが何やら口元を押さえながらプルプルと震え、セーラは眉を八の字にしている。いや……分かってるけどさ。分かってるけど、そうすんなり思い通りにしてやるのも何だか面白くないだろう? リリーだけは何の事やら分からずキョトンとしていた。


「ちなみにリリーは魚が好きか?」


「んー? 私は肉の方が好きかな」


「お肉に『あまポテ』の組み合わせは最高ですよね。私も最近では夕飯に『あまポテ』が欠かせなくて……」


「セーラは魚、好きだよな」


「はい……けど、あの、お芋も好きですよ?」


「さすがセーラさん、分かってらっしゃいます! カトーさん、やはりここは『あまポテ』に関するクエストを受けるのが宜しいのではないかと!」


 必死過ぎるだろローランド。見ていてなんか小動物がパニックおこしてワタワタしてるみたいで面白いぞ。そしてセーラの気遣いに少し泣けた。


「では、以上の会話を踏まえて今日のクエストを決定する」


 威厳のある声でそう言うと、ローランドを始め皆の表情が引き締まった。もしこれがバラエティ番組とかなら、ドラムロールが鳴り響いている所だ。ドコドコドコドコ……と、緊張がいやがうえにも高まってくる。そして俺の口から発せられた言葉は。




「薬草採集をします!」



「なんでですかぁああーーーっっっ!!」


 ローランドの絶叫がクランハウスにこだました。




 さて。


 本当はもう一人意見を聞かなきゃいけないんだけどね。俺は気を取り直して、フレイに尋ねる。


「仕事慣れしているフレイの意見を参考にしたい。初仕事に向いてそうなのはどのクエストかな」


「あはは、多分そう来ると思ってたよ。カトーさんって結構イケズだよね」


「まあな。性格は程よくねじ曲がってると自覚している」


 後ろでローランドが床に「の」の字を書いていじけていた。リリーが慰めているが、2人の姿はなんとなく姉妹っぽく見えた。


 で、仕事の話だが。フレイは俺の目の前に何枚かの依頼書を並べた。そして目的地や集合場所の書かれた部分を指差して行く。


「先ずこの依頼書。輸送隊の護衛だけど、この目的地は北部の国境だよね。で、この教会からの依頼にある農園が、ここ」


 地図を見ると、国境は北部の森の切れ目にある。で、農園はそこから約2キロの所にあり、位置的に近い。


「カトーさんのさっき言った薬草採集のクエストだけど、この薬草の生息地域もこの付近だよね」


 おお、本当だ。パッと見ただけでは気づけなかったな。


「やろうと思えば、3つのクエストを一度にこなせる。アメリアさんたちなんかはこういう仕事の仕方をしてたんだけど、まだ私たちはチームを結成して初めてだし、無理はしなくてもいいと思う。ただ、こんな受け方もあるよって話」


 おお……


 皆のフレイを見る目が尊敬の目に変わっていた。なるほど、効率的にやろうとすれば、目的地や移動経路を見て組み合わせたりできるわけだ。俺なんか毎回一つだけしか受けられないと思っていたよ。というかゲームがそうだったしな。


「慣れて来たら、そういう事も出来るようになるか。じゃあ今日の仕事は『あまポテ討伐』にして余裕があれば『薬草採集』にしよう。『輸送隊の護衛』は無理せずにギルドに言って別のクランに回してもらおうか。……ローランド、調整頼めるかな」


「え、あ、はい! すぐに取り掛かります!」


 驚いたような顔をしてから、パッと花が咲いたような笑顔となってそう答えるローランド。立ち上がり、忙しそうにパタパタと駆け出した。それを見送る俺たち一同、皆なんとも言えない和やかな顔をしている。


「カトさん、ナイス。落として落として、最後に拾い上げるとかテクニシャンだね」


「可哀想かなとも思ったが、それ以上に虐めたい気持ちが強かった。反省してるが、後悔はしてない」


「カトーさんマジ鬼畜だね。でも気持ち分かるわ……子犬っぽいもんね、あの人。セーラさんも似た感じだから、カトーさんってああいうのが好みなの?」


「カ、カカカカ、カトーさん!? 私の次はローランドさんをお嫁さんにするんですか!? あれっローランドさんってどっちだっけ。あれ、男の人……?」


 素晴らしきかなBチーム、最初からこの壊れっぷりである。これからの毎日が楽しみで仕方ないな、そしてセーラは早く正気に戻るんだ。ローランドはれっきとした雄の子犬だぞ。










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