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休日のミッション リリー編(2)

 今回の話はかなり壊れ要素が強くなっています。これ以上カトーが壊れる姿を見たくない、という方の為に、後書きに今回の話のあらすじを書いておきました。耐えられそうに無いという方は、後書きへ進んで下さい。そうで無い方はそのままお進み下さい。

「くんくんくんくんくんくん!」


 もはや、何も言うまい。


「ふんふんふんふんふんふん!」


 犬だ、俺は犬になるのだ。





 ボーナスポイントを使用して新たに得たスキル、『犬の鼻』。この適当な名をつけられたスキルは、50という低コストの割に非常に強力なスキルであった。ハッキリ言おう、常時発動させていたら情報過多で発狂する。スキルを発動させた途端、鼻を介して恐ろしい量の情報が俺の中に飛び込んで来たのだ。それはゲームのような文字情報などではなく、極めて感覚的で、膨大なイメージの奔流。頭痛だけではなく全身の感覚神経が悲鳴を上げているような錯覚。……気が狂いそうだ。


 しかし使いこなさなければならない。俺は叫んだ。


「ニオイだ、ニオイが足りない! じゃんじゃん持って来てくれ!!」


「は、はいっ! この椅子はリリーさんが来た時に座ってた椅子です!」


 クレアさんが持って来た椅子を受け取り、早速鼻を近づける。しかし。


「うわクサッ!?」


「ああ、それ昼食時にボンゾが座ってたから」


 屁……屁じゃないか、ボンゾ計ったな! 母さんにも計られた事無いのにっ!!


 それにしても二人ともノリが良いというか対応力高いというか、俺が『犬の鼻』を使うと言った時も、少し驚いただけで直ぐに意図を汲んでくれた。普通引くし気味悪がると思うんだけどな。しかし、今は本当に助かる。


「単独でリリーのニオイがする物なんて無いよな。今ある情報だけで特定するのは難しいが、やるしかないか……」


 このスキルはニオイに含まれる情報を一定以上集める事によって、特殊なレーダーを展開出来るようになるスキルのようだ。ただ、他のニオイと混ざると精度は落ちるようで、未だに規定値に達しない。焦りに心が支配されそうになる。しかしそこに思わぬ言葉がかけられた。


「あるわよ」


「フィオナさん、本当か!?」


 自信満々に笑みを浮かべるフィオナさん。クレアさんも意外そうな顔をして彼女を見た。


「フィオナ、リリーさんの事完全に忘れてたのに」


「名前だけよ。私は一度面白いと思ったら物でも人でも忘れないの。で、その手がかりなんだけど」


 ゴソゴソとタンスに手を突っ込んだ。時折小声で「ありがと」とか知らない何かとコミュニケーションを取るのは止めて欲しい。タンスから何やら取り出すと、フィオナさんはクレアさんに声をかけた。


「クレア、カトーに目隠ししてくれる?」


「え……ええ、良いけど何故?」


「あまり男性には見せたくないの。察して」


 いや、それだけで察しろと言うのは無理だろ。しかしクレアさんは言う通りに俺の後ろに周りこみ、両手で俺の目を塞いだ。……「だ~れだ」というやつか。人生初の「だ~れだ」は家に借金取りに来たヤクザだし、台詞も「大人しくしろ」だから良い思い出が無いのだが。


「じゃあカトー、今から鼻の前に出すからニオイ嗅いでね」


「ちょっ……フィオナ! あなた何て物を!?」


「いいじゃない、勝手に落として行ったんだもの。いつか魔術の触媒に使おうと思ってたんだけど、ほら、家族の使うのって気が引けるじゃない。その点あの子ならいいかなって。茶色だし、一目であの子のだって分かったわ」


「だからって……もうっ! 後でじっくりお説教です!」


「はいはい」


 ……。


 何なんだろうな?


 困惑していると、俺の鼻の前に何やら差し出された。くんくん。……ん? くんくんくんくん。……おおっ? フィオナさんの指と、得体の知れない獣のニオイが少しするが、それ以外はリリーのニオイが明確に感じ取れる! これは……これは素晴らしい物だっ!!


「くんくんくんくんくんくん!」


「あはははは、ほぉらお嗅ぎなさい狗! あなたの好きな○○○○よっ!!」


「ふんふんふんふんふんふん!」


「カトーさん、やめて! もう見てられませんっ!!」


「ふおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」


 その時。


 俺は確かに聞いた。


 頭の中で何かが砕け散り、パキイィィンッという音を立てたのを。


 それはきっと『モラル』だったのだろう。




「臭・束・完・了!」





 完璧だ。完璧にリリーのニオイを記憶した。恐らく今後何が起きても、俺が彼女のニオイを忘れる事は無いだろう。スキル発動状態でこの部屋を見ると、当日に彼女がどこを歩いたか、うっすらとではあるが鈍色のラインとなって視界に現れる、そんな気がする。これはイメージとなって現れるスキルらしい。


「ありがとう、二人とも。これでニオイは充分だ。確か森は北西だったよな?」


「ええ、北門から街道沿いに行けば左手に森が見えて来ますから、そこへ行けば……」


「リリーのニオイも捕捉出来る、と。よし、そこまで分かれば充分だ。早速行って来る!」


 俺はそう言って部屋を出る。その際、俺の背中にフィオナさんが声をかけた。


「カトー、あなた最高よ。生きて帰って来なさい、セーラの為に。そして私の娯楽の為に」


「色々思う所はあるが、頑張って来るよ。死にはしないさ」


 そう、死にはしない。死なせもしない。第一フィオナさんたちが最後に見た俺の姿がこんなんじゃあ、死んでも死にきれないじゃないか。話を聞いたセーラもさすがに悲しむ前に引くだろ。


 俺はフィオナさんの微妙に有り難くない事もない声援を受けて、ボンゾの家を飛び出して行った。クレアさん? クレアさんは疲れきった顔で手を振っていた。きっと彼女の中で俺は、厄介な家族ナンバー2となっている事だろう。








 フォーリードの街の中央、大通りを俺は風のように駆ける。こんな街中ではパンツマンにはなれないし、第一あの姿で街を走るのは憲兵を刺激しかねない。俺はパンツ無しで自分に出せる最大限のスピードで街を駆けた。しかし……人が多い。中々すんなり走り抜けられないな。


 そこで俺は思いついた。確かにパンツマンは派手である。しかし、あれの第一形態は服が消えずに残っていたじゃないか。上手く第一形態になれば恥ずかしい事もないし、身体能力を上積み出来たなら跳躍して建物の上を行く事も可能なのではないだろうか。


「パンツマン、参上……」

 小声で、第一形態をイメージしながらパンツを呼び出す。これは賭けだ。最悪、あの姿を衆人環視の下御披露目する羽目になる。しかし俺はその賭けに勝ったようで、ズボンの下に多少の違和感を感じた程度で外見に変化はあらわれなかった。


 よし。これなら恥ずかしくないし、跳躍力も上がっている。俺は早速近くにある建物の中で、登るのに手頃なものが無いか探す。すると通りから少し離れた場所にレンガ造りの大きな建物を見つけた。アパートのような物なのだろうか、幾つも部屋があり、その一つ一つにベランダらしきものがある。


「足場には最適だな。行くぞっ」


 先ほどまでとは比べものにならない速さで建物に駆け寄ると、俺は勢い良く跳躍した。地面を強く踏み込み、有らん限りの力で。思った以上の速さで一つ目のベランダの手すりに足をかけると、次のベランダへと跳躍する。瞬く間に俺は屋上へとたどり着いた。素晴らしい。ここからなら人ごみに邪魔されずに北門へ行けるだろう。


「待ってろリリー、今助けに行く!」


 そうつぶやき、俺はまた北へ向けて駆け出した。








 街を、まるで飛ぶように駆ける。建物の屋上、屋根の上を跳躍しながら俺は北を目指す。フォーリードは中々大きな街で、街の南側にあるボンゾの家からは北門はかなり遠い。しかし今の俺の足ならそう時間はかからないだろう。


 しかし、そう安易に考えていた俺は思わぬ落とし穴に遭遇する。


 フォーリードは北へ行くに従って高くなって行く地形である。そしてそんな地形で、尚且つ初めて行くルートを慣れないスピードで駆ける。どうしたって足元に目が行きがちになるのだ。つまり、目測を誤った。加えて高い所から低い所へと吹く風が強烈な向かい風となり、俺の身体は思ったほど遠くへ跳べなくなっていたのだ。


 気づけば俺は、次に着地しようとしていた建物のだいぶ手前の空中にいた。高さ40メートル、真下は公園だった。人は……不味いな、子供が数人いる。着地の際に巻き込んでしまったら最悪だ。どうしよう、と一瞬焦ったが、ふと見ると公園の中央に小さな噴水が見えた。


 仕方ない、アレをやろう。俺は素早く噴水へ両手を突き出し魔法を使った。


「ウォーターポール!」


 今では自由自在に角度を調整出来るようになった攻撃魔法。利用方法は勿論、飛び小……いや、飛行である。もしくはロケット噴射だ。目論見通りに噴水からは俺目掛けて水の柱が……ってオイ、なんか凄まじい勢いで水が迫ってくるぞ!?


 あ、忘れてた。水辺で水属性魔法使ったら威力倍増するんだった。


「ぬおおぉぉぉぉおおっ!?」


 轟音を立てて水の柱が迫り来る。俺の股間目掛けて。そして当初の狙い通りに「全ての水」がパンツの中に吸い込まれると、次の瞬間、怒涛の勢いで地上へ向けて放出を始めた。


 ドオオオオオォォォォォッ!!

「おわあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


 俺は上空へ信じられないスピードで打ち上げられて行く。おいおい、なんだこれは。街が小さくなって行くぞ、どこまで飛んで行くんだ! それによく見たら……あああああっ!! セーラがせっかく直してくれたズボンの、股間部分に大きな穴が出来てるじゃないか! なんてこった、俺は……俺は……。


 せめてもの救いは噴射した水が霧状に拡散された事くらいか。地上に被害を出したくないと思った途端に霧状になったからな、まさに魔法だ。……そんなに器用な事が出来るなら、この結果をどうにかして欲しい所だ。


 俺は天高く舞いながらどうしたものかと考える。このまま落ちたら流石に俺でも無傷では済まないだろう。地上に叩きつけられる少し前にウォーターポールで勢いを弱めるしかないか。しかしパンツ丸出し男が空から降って来たら街のみんなも驚くだろう。最悪、リリーのもとへたどり着く前に捕まってしまう。俺は何をやっているんだ、リリーは今危険な目にあっているというのに! どうすれば……俺はどうすればいいんだ!




 その時。


 脳裏に久しぶりにあのメッセージがあらわれた。



【Check!】心の叫びにパンツが目覚めました。ミラクルパンツは第一形態から新たな姿へと進化します。




 な、なんだ!? 今この状況で一体何をしでかすと言うんだ、それどころじゃないんだぞ!


 しかしそんな事を口にしようとした俺を遮るように、股間に何やら変化が訪れる。まばゆい光を放ったかと思うと、その光は何かの形へと変わって行った。これは……



『ガアッ』


 おいっ。


 そこには1羽の白鳥がいた。



※ミラクルパンツは特殊進化を遂げて『白鳥パンツ』となりました。これで大空はもうアナタの物、希望という名の未来へ向けてその翼を羽ばたかせて下さい!(b^ー°)


 恥ずかしくて飛んでいきたいわ、このクソ運営! 流石にファッションに疎い俺でも、この姿がイケてない事くらいは分かる。麦藁帽子に『うみんちゅセット』に白鳥パンツとかどんな流行の最先端だ、先取りし過ぎて世界の終末が来とるわ!


『グエェェッ!』


 白鳥パンツは高らかに歌う。丁度腰から翼が生える形になっているが、パンツは勢い良く翼をはばたかせ始めた。


「うおっ!? は、はやっ!」


 空を飛ぶ、とは初めての体験だが……これは凄い。先ほど落下を始めていた身体は瞬く間に上昇気流をとらえると、見る見るうちにまた空高くへと舞い上がって行った。これなら……これなら、落下を気にせず街の外まで行ける!


「やるじゃないか、白鳥君! ありがとう、おかげで助かった!」


『グェッ!』


 白鳥パンツは得意気に鳴いた。恥ずかしいし、出来る事ならもっとマシな姿になって欲しかったが、現時点では最善の変化だったのかもしれない。少なくとも、この変化はリリー救出の大きな助けとなる。


「このまま北へ飛んでくれ! 街を抜ける!」


『グアッ!』


 それに、中々いいヤツっぽい。もしかしたら頼もしい相棒になってくれるかもしれないな。


 俺たちは勢いそのままに、フォーリードの北門遥か上空を飛んで行った。



【白鳥パンツ】

 身体能力+50補正、敏捷のみ+300。白鳥パンツ自身のHPは200固定、0になった時点で解除される。復活には24時間の経過が必要、その間どの形態のパンツマンにも変身出来ない。魔法吸収・反射効果が失われている代わりに、本人の所有スキルの殆どを白鳥パンツも共有出来る。









 無事フォーリードを抜けた俺たちは、飛行高度を下げて街道沿いを飛ぶ。いくらニオイに敏感だと言え、空高く飛んだのでは察知しようがない。白鳥パンツも俺の真似をしているのか、フンフンと鼻を鳴らしながら羽ばたいている。その光景を時折街道を行く人に目撃されたりしたが、一々挨拶をする暇は無かったので無視する事にした。マナー違反だろうけど、緊急事態なのだ。


 俺たちはひたすら北上する。そして森の近くへとやって来た所で、ようやくリリーのニオイを察知した。


『グェッ!』


「お前も分かったか。これは……いや遠いな! 20キロ以上離れてるぞ!」


 脳内に大まかな地図が展開され、リリーの現在位置があらわれた。索敵スキルを使った時に近い映像である。それによれば、リリーは現在北西20キロの位置で抗戦中。残りHPが50から60の間を行き来している。リリーには自動回復スキルがあったが、その効果があってもそこまで苦戦するとは……もはや一刻の猶予もない。


「森の上を行く! 白鳥君、すまないがもう一頑張りだ!」


『グエェェッ!!』


 第二形態では森の中を行くしかないから、きっと移動に苦労しただろう。その点白鳥なら森の上を行ける。負担をかけるが、今は彼に頼るしかない。再び高く舞い上がった俺たちは、レーダーを頼りに空を翔る。眼下に広がる森には所々に奇妙な違和感があり、恐らくそれがエルフの隠れ里の結界なのだろう。引っかからないように距離を取りながら飛行した。


 最大速度での飛行。基礎能力値+300の世界。具体的な速度は分からないが、『犬の鼻』を起動させながら風とGを全身に受けながらの飛行は身体に堪えた。恐らく電車並みの速さなのだろう、ものの数分で目的地周辺にたどり着くと、俺は森の中に求めていた姿を見つけ出す。木々に遮られて見えにくいが、そこには革鎧をボロボロにしたリリーがいた。左手に剣、そして右手に手斧を持って走り回っている。その周囲には数人の……なんだ? 人のような、木のような。


 しかしとにかく先ずは彼女の救出だ、俺は白鳥パンツに向かって指示を出した。


「彼女のそばに降りてくれ、そしてあのよくわからん奴らを叩きのめす!」


『グアッ!』


 空中でホバリングしていた白鳥パンツは、俺ごと身体を捻って急降下の態勢に移る。そして慌てる俺をよそに、一気に森の中へと突っ込んで行った。うおっ、待て、枝が! 木の枝が痛い! そして何なんだそのテンションの高さ、お前俺よりやる気満々じゃないか!


 バキバキと枝を折りながら森の中へと降下する俺たち。そして着地したその瞬間……


 ズシィィィンッ!

「ぐおおぉっ!?」


「きゃっ!」


 踏ん張った両足に尋常ではない痛みと衝撃。そして凄まじい地響き。足元でひっくり返ったのはリリーだ。


「……カ、カトーさん?」


「あ、ああ、そうだ。助けに、来た……んだが、ちょっと痛いなコレは……」


 身体能力補正は白鳥パンツ状態では小さいらしい。レベル溜めをして基礎パラメーターの底上げをしていて良かった、この世界に来たばかりの頃の俺なら粉砕骨折してたぞ。しかし今の俺でも痛みで動きが取れないんだが……くそっ、俺たちの周りにあのよくわからん奴らが集まって来た! 回復魔法を唱える暇が無い! せめてリリーだけはこれ以上傷つけさせまいと、なんとか彼女を背に隠す。


 しかしその時思わぬ事が起きた。股間から伸びた白くて長い物が、奇声を発して暴れ出したのだ。


『グッケエェェェェェェッ!!』


「ぬおっ!」

「きゃああぁぁっ! 何なんですかそれはぁっ!!」


 俺たちに歩み寄る木と人の中間のような化け物たち。それらを、白鳥は次々とその首で薙払って行く。しなる首はムチのように奴らに叩きつけられ、ある者は吹っ飛び、またある者砕け散った。おいおい、何なんだ。白鳥ってこんなに強かったか。


 そう言えば今思い出したが、白鳥って確か危険動物に指定されるくらい凶暴なんだよな。俺自身、二度白鳥に襲われている。一度目は出張先のベルギー、二度目は日本の新潟だ。どちらも湖畔を歩いてる時に襲われたんだが、奴らは啄むようなクチバシ攻撃や体当たり、首によるムチ攻撃を駆使してきた。当時の俺は虐待にならないように気をつけながら攻撃を受け流したが、追い払った後に腕を見たら青あざだらけになっていて驚いたのを良く覚えている。攻撃は容赦なく、なにより速く重かった。


 敵対した時は厄介な相手だった。しかしこうして味方になると、これほど頼もしい存在は無い。俺は彼が戦ってくれてる間に、自身の身体とリリーを魔法で回復した。リリーはかなりの怪我をしていたらしく、治癒を終えてもその顔色は悪いままだ。血を流し過ぎたのかもしれない。


「リリー、とりあえず俺のそばを離れるなよ。すぐにこんな奴ら、全員ぶっ飛ばしてやる。……白鳥が」


「助けてくれたのは嬉しいんですけど、少し見ない間に何があったんですかカトーさん」


「説明が難しいな。見ての通りとしか言えん」


 股間から伸びた白い物が、まるで蛇口いっぱいに捻って暴走を始めたゴムホースのように、のた打ち回っている。先ほどまで襲いかかって来ていた化け物たちも、今では10体ほどに数を減らしており、白鳥を恐れるように距離を置き始めている。そりゃ恐れるわな、俺だって怖いもの。


 形勢逆転。俺も回復して動けるようになったし、白鳥も絶好調だ。リリーも自動HP回復スキルがあるなら時間がたてば全快するだろう。それまでにはコイツらも片付けられるだろうし、これでひとまずの危機は脱したと見ていいハズだ。


 そう思ってアイテムボックスからディメオーラを取り出し構える俺と、一呼吸ついて体勢を整える白鳥。そんな俺たちの前方、化け物たちの後方から、何やらパチパチと手を叩く音が聞こえて来た。見るとそこには柔和そうな表情をしながらも、その目に鋭い光をたたえた男が一人。口元に嫌な笑みを作ってこちらに声をかけてきた。




「またアナタでしたか。つくづくアナタは私たちの計画を邪魔してくれる」




 マルセル・マニマル。かつて俺を担当した指導員。そして国とギルドから指名手配され、リリーに深手を負わせた元凶である犯罪者の姿がそこにあった。









 その香りは追憶の調べ。

 新たな力に目覚めたカトーは、リリーの残り香を頼りに彼女の行方を追います。人混みを必死にかき分け、街中を駆けて行くカトー。そんな彼の想いに応えるかのように、ミラクルパンツは1羽の美しい白鳥へと姿を変え、彼を大空へと誘います。強い絆で結ばれた二人は迫り来る数々の試練を乗り越え、ついにリリーの元へとたどり着き、その命を救うのですが……最後に彼らの前に立ちはだかったのは、かつてカトーを教え導いていた男。マルセル・マニマルその人だったのです……


休日のミッション、リリー編第二話『その香りは追憶の調べ』

あなたの心にミラクル☆パンツ!


以上、あらすじでした。



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