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休日のミッション リリー編(1)

 5人に蜂蜜を配るミッションはとうとう残す所あと1人となった。最後のターゲットはリリーである。しかし、よくよく考えてみると俺はリリーの事を良く知らない。セーラなどは友達になったらしいが、今の所俺は仕事以外で彼女と接した事が無いのだ。どこの宿を利用しているのか見当もつかないので、俺は奥の手として残していた『遠見』のスキルを使おうかと考える。


 しかし、本当に使って良いものか。


 いざ使うとなって初めて気づいた。水晶に関してはボンゾの家に行けば借りられると思うが、それを使って遠見をしたら、以前フィオナさん達に覗き見られた時のように、リリーの私生活を勝手に覗いてしまう事にならないだろうか。俺は覗き魔にはなりたくない。もし着替えの途中だったりしたら、多分自己嫌悪に陥るだろう。セーラという婚約者が居ながら何をやっているんだ、と。そこで俺は遠見スキルを使い慣れているであろうフィオナさんに会い、何か解決方法が無いか聞いてみる事にした。力の加減次第で、遠見スキルの効果をターゲットの周辺の風景だけに留める事が出来るのなら、それが一番良い。


 早速俺はボンゾの家へと向かった。






 昨日の今日という事で、ボンゾの家への道はしっかりと覚えていた。大通りを南へ進むと、左手に武器屋『グランフェルト』は見えてくる。家への入り口はその裏にあるのだが、店の前を通る時にチラリと見た所、入り口には『臨時休業日』と書いてあった。……あれ、どうしたんだろうな。もしや全員で出かけたりしてるのか? 少し不安になりながらも、とりあえず裏手へと回る。階段を上り戸口に立つと、呼び鈴代わりの鉄輪を鳴らした。


 ゴン、ゴン

「御免下さい、カトーですが」


「はぁい」


 いた。この声はクレアさんだな。


 ガチャ、という音と共に鍵が外れて戸が開かれる。クレアさんは昨日と違って魔法使い然とした淡い紫のローブを纏っていた。


「カトーさんこんにちは。今日はどうされました?」


「あ、ああ……こんにちは。いや、実はフィオナさんに用があって来たんだが、出かけたりしてないかな」


「フィオナ? ええ、今は部屋で寛いでるはずですけど」


 不思議そうな顔をするクレアさん。確かにフィオナさんとは昨日会ったばかりで接点などなかったから、こうして用があるというのは不思議だろう。俺を招き入れながら、クレアさんは、差し支え無いなら用というのを教えて貰えませんか、と言ってきた。当然だろう。


「『遠見』の件なんだが」


「う゛っ」

 笑顔が引きつる。

「あ、あの、誓って言いますが悪気は無かったんです。ただ、その、セーラの事が心配で……」


 ん? ああ、言葉が足りなかったか。


「別に怒ったりしてるわけじゃないよ。ただ、スキルの事について聞きたいんだ。俺も遠見が使えるようになったんだが、使い方を教えて欲しくて来たんだよ」


「遠見を……使える?」


 途端に、クレアさんの表情が固まった。何だ?


「カトーさん、遠見を使えるとおっしゃいましたか?」


「あ、ああ……」


 何やらおかしな雰囲気だ。クレアさんの表情は先ほどまでの柔らかな表情から段々と緊張感のあるものへと変わって行く。俺は何が何だか分からないまま、表情には出さないが狼狽えるのみ。そんな俺に助け舟を出すかのように、奥の方から気怠いような、眠いような、やる気のない声が聞こえてきた。


「その話、興味あるわ」


 クレアさん同様、魔法使い風の群青色のローブを着たフィオナさんだった。








 フィオナさんといえば、昨日の夕飯時に猥談をかまし続けた印象が強くて、俺の中ではエロ不思議少女というイメージが強い。クレアさんやサラサさんと同様にボンゾの嫁らしいからそれなりの年齢なのだろうが、見た目はセーラと同じかそれ以下としか見えなかった。だから、こうして鋭い目つきで見つめて来られると、昨日の姿とのギャップの激しさもあって俺でも動揺を隠せない。全てを見透かすかのような眼差し、その美しさは物語の中の魔女を思い起こさせる。


「今エロい事考えてたわね」


「いやいやいや」


 こうした発言が無ければ。


 フィオナさんに案内されるままについて来てしまった俺だが、とにかく彼女の部屋は居心地が悪い事この上無かった。壁を埋める本棚、そこに置かれた魔導書……は良いのだが、怪しいオブジェやらオモチャやらが並んでいるのは気分的に良いものではない。ガラス製の心臓の置物の中には真っ赤な液体が循環している。その隣には凄まじくリアルな人の手のミニチュア。どういう仕組みか知らないがフワフワと浮かぶ緑色の目玉、時々クスクスと笑う唇。地蔵のような置物には強弱メーターが仕込まれているが、恐らく読経の音量を調整するのだろう。そういう事にしておく。


 そんな不可思議な部屋に通された俺は、クレアさんとフィオナさんの二人に事情を説明した。と言ってもセーラと違いこの二人は直感スキルなど持っていないだろう。ボーナスポイントやらゲーム的な話は信じて貰えないだろうから、とりあえず最近冒険者カードを見たら項目が増えてて、それが『遠見』だったという事にした。その説明を聞いたフィオナさんは、しばらく目をつぶって考え事を始める。代わりにクレアさんが俺にその話の異常性を説明してくれた。


「『遠見』はエルフにしか使えないスキルなんです。それも、私たちのような特殊な血筋でないと決して発現しないと言われてるんですよ。カトーさんのような猿人族の方に発現するスキルではないんです」


「特殊……」


 特殊な血筋。何なんだろうな。その疑問には、フィオナさんが答えた。


「私たちのいた村にはね、マレビトの血を受け継ぐエルフが多かったのよ」


「マレビト?」


「……そこから説明するの? ああごめんなさい、アナタは教育を受けさせて貰えなかったのよね、確か。いいわ、なら私が教えてあげる」


 親切なのは嬉しいのだが。かつて俺がついた嘘の説明のせいだとは言え、こういう言い方をされると俺が凄く馬鹿みたいに思えて切ない。俺は大人しく、メガネを掛けて女教師と化したフィオナさんの有り難い授業に耳を傾けた。








 マレビト。俺のいた世界でも民俗学やら考古学やらをかじると目にするその単語は、この世界においても同様の意味で使われていた。異界からの来訪者。海の向こうよりやって来る人たち。その多くは見知らぬ道具や知識を持っており、訪れた地に幸福と繁栄をもたらすという。


 この世界のマレビトたちは、古代において繰り広げられた世界的な大戦を境に、殆どが表舞台から姿を消した。本来個人では持ち得ない、強大な力を持つマレビトたち。自分たちの力の凄まじさによって戦が激化した事を憂いた彼らは、その力を封印して行方をくらました。各地に伝わる話によれば、ある者は旅先で静かに息を引き取ったとか、またある者は誰にも到達出来ない迷宮の中に新しい国を作ったとか、中には天に至り神となったという伝説もある。そして数ある伝説の中に、森の住人たちと共に余生を過ごしたという話もあったのだ。


 そう、それがフィオナさんたちのいた村だった。


 森の奥深くにあるエルフの集落。その村にはマレビトの血を受け継ぐエルフたちがおり、彼らは普通のエルフにはない能力を持っていた。襲撃事件で壊滅して、生き残った者も散り散りになってしまった今では確認しようがないが、フィオナさんの話では遠見の他にも、使い方次第では大きな富をもたらすスキルや、逆に破滅を呼ぶ恐ろしいスキルを持ったエルフがいたらしい。しかし彼らは皆穏やかで平和主義であり、不幸を振りまくような力の使い方は決してしなかった。フィオナさんもそうした人たちの指導を受けて、スキルの使用には人一倍気をつけているのだとか。


「その割には覗いてたよね」


「事故よ、不幸な偶然が重なって起きてしまった事故。男が一々細かい事気にしないの」


 横暴だ。


「でもこれで分かったでしょ。あなたが遠見を使えるのはとても珍しい事なの。第一、遠見に連なる遠視系のスキルって、エルフ以外に発現しないというのが常識だったんだけど……きっとあなたもマレビトの血をひいてるのね。それ以外に理由が思いつかないわ。ま、私としては仲間が増えて嬉しいから、理由なんてどうでもいいけど」


 何でだろう。覗き仲間に誘われてるみたいで嫌なんだが。


 しかしマレビトねぇ。話を聞いてると、まるで俺みたいに異世界からやってきたプレイヤーみたいだな。そう言えばルシアが言っていたけど、昔話で俺みたいな成長補正スキルを持ったやつが強い軍隊を作り上げたってケースもあるみたいだし、現に莓将軍のような同郷の人間も見た。もしエルフの集落で過ごしたマレビトが想像通りの存在なら、ボーナスポイントで遠見を手に入れて、それが後々の子孫に遺伝していったのかもしれない。


 そして気になった事が一つ。天に至り神になった、という伝説だ。もしこの「天」が俺の知っているフロンティアだとしたら……フロンティアに至る事が可能で、その扉を開く事が出来るのならば。フロンティアに住む凶悪なモンスターを解放するようなヤツが現れないとも限らない。考え過ぎだといいんだが、もしそんな事になったら、今の俺なんて一瞬で消し飛んでしまうぞ。


「……それでね。カトーはそんな貴重なスキルを使って何をしたいの?」


 考え事をしていた俺に、フィオナさんが声をかけた。いかんいかん、本題を忘れていた。


「人捜しを。確か一度ここにも来たと思うが、セーラの友人で仕事で一緒になった事のある、リリーという女性を探している。どこにいるのか見当もつかないから、スキルで見つけたかったんだが」


「リリー? 誰?」


「フィオナ、あなたが面白半分で唇を奪って泣かせちゃった子よ」


「ああ、あの野暮ったい子。勿体ないわよね、素材は良いのに安物の化粧品ばかり使ってるんだもの。唇奪ったって、あれはスキルで精気を分けてあげただけじゃない。あれだけ潤ったなら感謝されていいはずなんだけど」


 リリー……大変だったみたいだな。男に襲われたその日に女に奪われるとか不運すぎる。


「そのリリーなんだが。女性だから、スキルを使って私生活を覗くような事はしたくないんだ。どうにかして力を調整して、大まかな居場所だけ分かるように出来ないかと思って相談に来たんだよ。水晶も持ってないから、借りられたら嬉しい」


 そう言うと、二人は感心したような顔で俺を見た。


「へぇ……あなた外見の割に気が利くのね」


「フィオナ、失礼でしょう。でも私も少し驚きました。力を持つと勝手気ままに使う方が多いのに、カトーさんは自制心のある方なんですね」


 時々タガが外れて、パンツ穿いて飛び小便するけどね。


「俺としては初めて使うスキルだから是非とも助言が欲しかったんだ。……頼めるかな」


「分かったわ。力の加減も、コツさえ掴めば簡単よ。今用意するから少し待ってて」


 そう言ってフィオナさんは部屋の隅にあるタンスの上部を開ける。中には色々入っているらしく、探すのに少し手間取っていた。俺はその間に、少し気になっていた事をクレアさんに聞いてみた。


「ボンゾさんとサラサさんは出かけてるのか?」


「いいえ、今は地下の工房で作業中ですよ。今日は私たち、交代で鍛冶のサポートをしているんです」


 なるほど。活発そうなサラサさんはともかく、二人が鍛冶をやるようには見えないのだが、ボンゾと長く一緒に過ごしたならそうした技術も持ってるのかもしれないな。ボンゾもやりたい事をやれてるようで何よりだ。


「カトーさん、あなたには感謝してもしきれません。あなたと会うようになってから、主人がとても明るくなったんです。私たちにとって、あなたは幸運を呼ぶマレビトみたいな存在なんですよ」


「……そうか。よくわからないが、役に立ててるんならそれで良い」


 実際にマレビトかもしれないんだよな、俺。一体この世界はどうなってるんだろう。俺以外の異世界出身者は古代に飛んだのだろうか。莓将軍はどうなんだろう。いつか機会があったら聞いてみたいものだ。それにしてもクレアさんの言うマレビトは招き猫か何かだろうか。俺はそんな愛らしいマスコットにはなれないな、せいぜい成れてフィオナさんのコレクションぐらいだろう。


 下らない事を考えていると、ようやくフィオナさんが水晶玉を持って俺の前のテーブルに置いた。大きさにしてバスケットボールくらいだろうか、かなりデカい。


「お待たせ。アイテムボックスに適当に放り込んでたから取り出すのに苦労したわ。あのタンス、アイテムボックスなの」


「タンス自体がアイテムボックスとか凄いな。何でも入ってそうだ」


「実際何でも入るから色々突っ込んでるんだけど、私にもよくわからなくなって来てるのよ。さっき知らない生き物が挨拶してきたもの」


「だからあれほど整理整頓しなさいって……生き物!?」


 このやりとりだけで、二人の日頃の姿がよくわかる。多分だがこの家はクレアさんがいないと滅茶苦茶になるんじゃないか。


「はい、じゃあ始めるわよ」

 クレアさんの小言が始まる前に、強引に話を進めてきた。

「まず探す人物の事をどれだけしっかりイメージ出来るか、なんだけど。カトーはリリーの顔とか、覚えてるのかしら。声とか、ターゲットの情報をどれだけ持っているかで成功率は変わってくるわ」


「ああ、大丈夫だ。外見はしっかり覚えてる」


「乳首の横の小さな二つの黒子まで?」


「そこまでは知らないよ。というか何で知ってんだ」


「ふっ……私の勝ちね」


 セクハラ発言をどうにかしてくれ。俺でも引くわ。すぐさまクレアさんがフィオナさんの頭にチョップを叩き込んで軌道修正した。素晴らしい。けどちょっと怖い。


「……えっと、情報は持ちすぎてると効果が強く出るから今のカトーにはそんなに必要ないわ。とりあえず場所だけなら名前と顔が分かれば特定できるから」


 それは良かった。情報量で精度を変えられるのなら、今の俺は丁度良いだろう。あまり知らないから、おおまかにしか場所が特定できないはずだ。

「で、やり方だけど。両手を水晶玉にかざしてスキルの発動を意識するの。水晶玉が光り出したら発動は成功よ。その後、イメージと魔力を流し込むだけ。MPを100流した時点で映像に現れ始めるから」


「了解」


 簡単と言えば簡単だ。技能系のスキルを発動させる感覚は索敵と植物採集で散々経験しているからな。俺は言われた通りに水晶玉に手をかざす。すぐに水晶玉は光り出し、俺はそこにイメージと魔力を注ぎ込み始めた。イメージ。リリーを思い出す。茶色の髪の毛で俺と同い年とは思えないくらい若々しかった。顔は綺麗な方だ。声も高めでよく通っていた。


「……あら、上手いじゃない。魔力も凄いわね、そろそろ100越えるわ」


「カトーさんって優秀な魔法使いなんですね。身体つきからは想像出来ませんでしたけど」


「凄い背筋してたものね。お尻も引き締まっててセクシーだったわ」


 おいやめろ。イメージがおかしくなるだろ、今俺の中でリリーがムキムキになってるんだが。いかん、集中集中。リリー、リリー、リリー! 茶髪で素朴な同い年! 男に襲われ女に奪われ乳首の隣に黒子が二つ……って、ヤバい! 思考が汚染されて来た!!


 水晶玉がまばゆい光を放ち、ついに何かを映し出した。大丈夫かよ、こんなイメージで。とりあえず成功したらしく、その中央にはリリーらしき人影が見える。人影? いや、そこまで見えてしまったらダメだろ、プライバシーが……って、おや?


「森、ね。多分これ北西のミスティアナの森よ、アオミゴケが一面に生えてるし」


「そうね。トリクイカヅラも見えるし結構奥深いみたい。大丈夫なのかしら、この子」


 いや、それも貴重な情報で有り難いんだが。それ所じゃないんだ、これは。俺は背筋に冷たい物が走るのを感じた。何故ならその水晶玉に映るリリーの隣にいる人物に心当たりがあったからだ。




 マルセル・マニマル。



 あの捜索依頼の出されていた要注意人物だった。










 水晶玉に映し出されたリリーは厳しい表情でマルセルを睨みつけていた。対峙するマルセルは涼しげな表情を崩さず、何やら薄ら笑いさえ浮かべて口を動かしている。音声は聞こえないものの、その言葉はリリーを余程不快にさせているらしい。険しい表情のリリーは腰の剣に手を添えて臨戦態勢に入ろうとしていた。


「あらあら、痴話喧嘩にしては剣呑な雰囲気ね」


「かなりまずい。隣の男はギルドや憲兵たちが捜索対象にしている人間で、危険人物らしいんだ」

 俺の言葉に二人の顔が強張った。

「場所を知ってるなら教えてくれ。今から助けに行く」


「カトーさん、それは無理です! 恐らくこの景色は森のかなり奥の方、国境に近い場所ですし、かなり迷いやすい場所ですから!」


「それにエルフの隠れ里も幾つかあるから、下手したら結界に引っかかってしまうかもね。場所を特定するにしても、水晶玉を使い続けながらなんてMPが持たないし、今から助けに行くのは現実的じゃないわ」


 だからって放っておけるわけないだろう! くそっ、どうにかしてリリーの元まで辿り着く方法は無いのか。クロスの話では数多くの失踪事件に関わっていると言われてるマルセル。このまま見逃してリリーが失踪してしまったら、俺は一生後悔し続けるだろう。何としても助け出さなければならない。確かにリリーは強くなったが、まだ一般人より少し上という程度だ。マルセルの実力が未知数である以上、自力で打開する展開は期待しない方が良い。


 さあどうする、俺に今出来る事は何だ。彼女の元に辿り着くにはどうすれば……


 あ。


 いや、ちょっと待て。今思い浮かんだ方法はまずい。


 確かにそのスキルならたどり着けるかもしれないし、リリーが訪れたこの家なら手がかりもあって可能かもしれないが、幾ら何でもそれは人としての尊厳が……


 しかしそんな事を気にしてこのままリリーを見捨てる事など出来ない。それだけは絶対無理だ。俺は心の中でセーラに謝った。ごめん、セーラ。お前の恋人として恥ずかしい行為はしたくなかったけど、非常事態なんだ。許してくれ。


 俺は一度大きく深呼吸をしてから、もう一度水晶玉の中のリリーに目を向ける。口論をしている彼女の表情には困惑と恐怖の色が表れていた。何とか耐えてくれ、生き延びてくれリリー。今からお前を助けに行く、きっと助け出して見せる!


 俺はそう決意して、二人へと向き直した。そしてこう言ったのだ。







「この家に、リリーの『ニオイ』がついた物はあるか」







 その日。


 俺は人である事を捨てた。











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