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パトロール(後)御用であります

 翌日。俺たちはまた冒険者ギルド前で待ち合わせ、昨日同様捜索・警備の仕事を請ける事にした。どうやら昨日別れた後にセーラがリリーを勧誘したらしく、朝の集合場所には彼女の姿もあった。勝手な真似をしてゴメンナサイとセーラは謝ったが、俺は「元々今日誘おうと思ってたから問題ない。寧ろ有り難い」と言った。実際にそう思っていたのだ。


 俺と一緒のパーティーなら、レベルアップ時に補正がかかる。男に襲われても抵抗出来るくらいには、成長して欲しいと思っていた。


 彼女は昨日、ボンゾの言った通り剣を叩いてもらったらしい。ボンゾが言うには、金属の寿命がまだまだ有るので買い直す必要は無いとの事。叩き直された剣は以前より細くなったが、銅製でありながら鉄に近い硬度となり、鏡のように光を反射して煌めいていた。


「セーラもカトーも、叩くだけならタダでやってやるから遠慮するなよ」


 そう言ってボンゾは笑った。


 さてパーティー結成の為にカードを預かった俺は皆のステータスをチェックさせてもらう事にした。昨日どれだけレベルが上がったのか気になっていたし、リリーのパラメーターにちゃんと補正がかかったのかも気になったのだ。まずそのリリーからチェックさせて貰った。


 名前 リリー(Lv9)

 種族 人間 26歳

 職業 戦士(Lv12)

 HP 190/190

 MP 70/70

 筋力  15

 耐久力 16

 敏捷  18

 持久力 15

 器用さ 16

 知力  15

 運   15

 スキル

 疾風剣(Lv1)

 火炎剣(Lv1)

 水流剣(Lv1)

 石砕剣(Lv1)

 自動MP回復(小)

 自動HP回復(小)

 

 職業スキル

 なし




 明らかに補正がかかっている。特にスキルが凄い。何故4つも属性付加スキルを持ってるんだろう。自動MP回復と自動HP回復を序盤で手に入れるというのも、凄いアドバンテージである。ゲームでも凄いんだから、中途半端にリアルなこの世界ならもっと凄いだろう。身体能力も一般人を凌駕している。きっと彼女は、これから実力者として名を馳せて行くに違いない。……意外な事に俺と同い年か、若作りなんだな。


「凄い成長の仕方だ。成長期が来たのかもな」


「私も昨日確認して驚いたんです。でもセーラさんたちはもっと凄いですよ」


 あらら、セーラたちステータスを見せちゃったのか。こういう所から俺のスキルがバレて行ったりするんだろうな。口止めは……まぁいいや、その時はその時だ。


 で、そのセーラ。彼女は順調にステータスが強化されていた。


 名前 セーラ(Lv10)

 種族 エルフ 18歳

 職業 魔法使い(Lv10)

 HP 180/180

 MP 130/130

 筋力  13

 耐久力 15

 敏捷  35

 持久力 19

 器用さ 45

 知力  42

 運   32

 スキル

 ウィンドスラッシュ(Lv10)

 エアガード(Lv5)

 パラライズウィンド(Lv1)

 修復(Lv15)

 洗浄(Lv31)

 乾燥(Lv23)

 危険察知(Lv20)

 

 職業スキル

 木こり(鉈Lv9 斧Lv4 植物素材採取Lv28)




 長所が更に伸び、短所であった筋力も人並み以上となった。スキルも順調に上がっているし、麻痺性の風攻撃も出来るようになった。これは凄い。地味に洗浄と乾燥のスキルが1ずつ上がってるが、きっと帰ってから洗濯でもしたのだろう。危険察知が上がってるのは分かっていたが、一気に10上がるというのは考えていなかった。補正の影響なのか、昨日の仕事の仕方が問題だったのか。多分両方だろう。




 次にボンゾ。彼は元々レベルが高いので変化は少ないが、それでも全体的に上がっていた。


 名前 ボンゾ(Lv23)

 種族 ドワーフ 57歳

 職業 戦士(Lv19)

 HP 412/412

 MP 55/55

 筋力  34

 耐久力 26

 敏捷  12

 持久力 29

 器用さ 38

 知力  18

 運   29

 スキル

 兜割り(Lv15)

 どつきまわし(Lv9)

 憤怒(Lv4)

 仁王立ち(Lv40)

 捨て身のメガトンパンチ(Lv20)

 力加減(Lv23)


 職業スキル

 木こり(斧Lv25 鉈Lv22 植物素材採取Lv20)

 鍛治屋(ハンマーLv35 金属加工Lv30 金属細工Lv30 耐熱Lv35)



 仁王立ちが上がった事を除けば微々たる変化だ。しかし元々強いので気にならない。ただ、唯一気になったのはMPに変化が無かった事か。何故上がらないんだろう。年齢がそれなりに高いから、成長自体が少なくなってるのだろうか。種族的なものもあるかもしれない。


「セーラさんとボンゾさんは、やっぱり昨日のアレで変なスキルの上がり方をしてるな」


「そりゃそうですよ。私だって喜んでいいのか呆れていいのか分からなかったです」


「しりとりも散々やったが、そっちは何にも上がらねぇんだよな。よく分からん仕組みだ」


 逆にしりとりで何か上がる方が俺は分からない。


「それよりお前ぇのステータスを見せろよ。俺ぁそっちの方が気になって仕方ねえ」


 リクエストがあったのでお答えしよう。さあ御覧遊ばせ。と言ってもレベルは1しか上がっていないが。




 名前 カトー (Lv24)

 種族 人間 26歳

 職業 魔法使い(Lv23)

 HP  550/550

 MP  295/295

 筋力  60

 耐久力 58

 敏捷  44

 持久力 64

 器用さ 57

 知力  67

 運   53

 スキル

 ウォーターヒール(Lv7)

 ウォーターポール(Lv4)

 ウォーターカッター(Lv2)

 ウォーターミスト(Lv1)

 ウォーターキュア(Lv1)

 索敵(Lv23)

 力加減(Lv16)

 自動MP回復(中)

 成長促進(最大・効果範囲:小パーティー・現在閲覧不可状態)

 

 職業スキル

 木こり(斧Lv12 鉈Lv8 植物素材採取Lv11)




 やはり索敵スキルの上がり方が半端じゃない。女の敵すら探しあてるくらいだからな、生半可な数値じゃないとは思っていた。他には地味に自動MP回復が成長している。これは有り難い。


「やっぱりお前ぇは化けもんだな。悪人じゃなくてホッとするぜ」


 酷い言い方だ。

 セーラもボンゾも一度見ているから驚かない。リリーはさすがに驚いたものの、信じられないという感じではなかった。


「私を助けてくれた時の動きを見たら、誰でも信じると思います。むしろ、数値で差をしっかり確認出来て納得しました」


 耐性はついていたらしい。










 互いに能力を確認しあってから、俺たちは昨日と同じ集合場所へ向かった。人数は昨日より増えている。強姦未遂事件の犯人たちが減った分の補充があったのと、どうも憲兵の人数を増やしたようだった。なんとなく冒険者のお目付役として増員したのではないかと勘ぐってしまう。現に、憲兵たちの低ランク冒険者を見る目は冷たい。


 昨日とは違うピリピリとした空気の中、ギルド職員の配る指示書に目を通した。俺たち4人は、揃って街の東門近くの森を警備する事になっていた。


「カトー、こりゃあ昨日の戦績を評価されたのかもしれねえな」


「だといいが、その分危険も上がる。気を抜かないで行こう」


 ここにいる冒険者の中では、俺たちはかなり強い部類に入る。簡単に危機的状況に陥る事は無いだろうが、一応そう言っておいた。


 職員の号令に従って皆が指示された場所へと散らばる。クロスたちは今日も捜索隊だ。残念ながら今日は軽く会釈するくらいしか挨拶が出来なかったが、彼らの無事を祈ろう。彼らの背を見送ってから、俺たちも東門へと移動する。東門と言えば木こりの時によく集まった場所だなあ、と懐かしく思った。


 森林での警備は草原と違い、見通しが悪い為に巡回する必要がある。しかし俺の索敵スキル、セーラの危険察知スキルがあれば闇雲に歩き回る必要は無い。幸い任された範囲は全てスキルでカバー出来る為、索敵で反応のあった場所を巡って行けばいいのだ。


 そして反応は無い。森は平和であった。


「反応は無いけど、何もしないでいるのも変だから適当に歩くか」


 俺がそう言うと、セーラも頷いて言った。


「何もしてないと精神的にダメになりますからね……」


 仕事は真面目に取り組んだ方が楽しいし疲れない。これは昨日の午前に学んだ教訓である。あれは苦痛以外の何物でも無かった。


 これは余談だが。


 日本にいた頃。某国で反日デモが起きた際に、その国の会社からウチの工場へのパーツ供給がストップした事があった。生産ラインが止まり、製造の連中が「仕事を下さい」と言って他部署を回る事になったのだが、俺の所にも3人ばかり製造の人が来た。開発なんて知識の無い人間に任せられる仕事じゃないから、仕方なく俺はこう言ったのだ。「使ってない部屋あるから、そこで休んでていいぞ」と。3人は「それだけは勘弁して」と泣きついて来た。あの頃は分からなかったが、今なら分かる。手持ち無沙汰な時間は、拷問のように心を削るのだ。彼らには結局、古い型の試作機の解体、廃棄作業をしてもらった。救われたような表情で作業する姿が印象的だった。


 森を練り歩く俺たちは、今まさに手持ち無沙汰な時間を潰すために頑張る製造の人の心境である。何か些細な用事でも漏らさず拾って行こう、という姿勢だ。仕事に対して前のめりなのである。


 そして無情にも時は平穏に流れ。俺たちは単調な巡回の中に無理やり楽しみを見いだし始める。


「カトーさん、この野草は茹でて食べると美味しいんですよ。わぁ、こんなにいっぱい! なんだかウズウズしてきました」


「おい待て、こんな所にカラナスの花が咲いてやがる! ウチの嫁が好きなんだよなぁ、この花。思えばサラサとの出会いはこの花がキッカケだった、あの頃俺は……」


「よーし、皆の言いたい事は分かった。今から植物採取競争だ、一番になった人にはパンツマンのサインをプレゼントしよう!」


「みなさん、みなさん大丈夫ですか、仕事忘れていませんか!? そしてカトーさんはキモいです!」


 やはりダメになっていた。

 リリーが俺たちを救ってくれた。彼女がいてくれて本当に良かったと実感する。キモい発言は水に流そう。ウォーターポールで……





 精神攻撃に負けずに巡回を続ける俺たち。昼は皆弁当を買って来ていたので、街には戻らずに森の中で昼食をとった。一日中森を歩くというのは、かなり体力を消耗する行為なのだが一向に疲れはない。皆持久力は人並み以上だし、リリーに至っては自動HP回復持ちだからだ。他の連中は……どうなんだろうな。休み休みの巡回なのだろうか。


 その時、索敵スキルに反応があった。


「皆、敵だ。街道に反応1。……しかし妙だな。その隣に味方が1で、無色の敵でも味方でも無い反応が無数にある」


「憲兵さんが盗賊を捕まえて、連行中じゃないんでしょうか」


「とりあえず行って見てみればいいじゃねえか」


 俺たちは森を出て街道に向かう事にした。


 東門から伸びる街道は、キンロウに続く道である為に利用者が多い。途中に幾つもの町がある為にクエストで利用する冒険者も多く、モンスターも大抵その冒険者たちにやられて少なくなっている。その代わり盗賊が増えて襲われる冒険者が後を絶たないと、昨日の憲兵が話していた。


 街道に出て、ターゲットを確認する。距離は200メートルほど。馬車が一台、その馬に乗る小男と、馬を引く女。スキルは小男を敵と判断している。しかし2人共一緒に話をしながらこちらへ向かって歩いて来ていた。なんなんだろう。


 その時、小男がこちらを見た。つられて女もこちらを見る。小柄な狩人風の女性で、肩まで黒い髪を伸ばしていて……あれ、見た事ある顔じゃないか。


「あ、カトーさんだ。お久しぶりです、カトーさーん!」


「フレイか。久しぶりだな」


 クロスたちのパーティーメンバーの一人、フレイだった。そう言えばクロスが、今日帰ってくるとか言ってたな。確かクラス昇格試験とかいうのを受けていたハズだ。馬車が近くまで来ると、フレイは小男に一言声をかけてからこちらに走って来た。


「クロスから聞いたよ。試験はうまくいったか?」


「ウフフ、勿論ですよ……と言いたい所ですけど、まだ途中なんです。3日間で2つ、一人でクエストをこなすのが試験なんですけど、今2つ目をやってる所なんですよね。商人さんの護衛です」


「なるほど……」


 馬車を見る。小男がこちらを見ているが、少し顔が緊張しているな。隠し事がある奴の顔だ。


「実は今、ギルドの冒険者たちと憲兵で、盗賊討伐のクエストをやっている。出入りする商人も一応厳しく身体チェックさせてもらってるんだが、荷台を見せてもらっていいか」


「え、そうなの? カンティーナの町で受けたクエストだから信用出来る商人さんだと思うけど……」


 フレイはそう言ったが、小男の顔は見る見る強張って来ている。露骨に何かあるとしか思えない。視線は俺ではなくセーラの方を向いてるけど……なんでだ?


「という事で、商人さん。ちょっと荷台を見せてもらって構わないか」


「……いや、ダメだ」

 睨みながら言った。

「まずアンタたちが信用出来ない。この人の知り合いみたいだが、だからって悪人じゃないとは限らないだろう」


 確かに俺のやってきた事は、どちらかと言うと悪人寄りだと思う。今までの露出具合からしたら、性的な意味で悪だろう。しかし悪いのはパンツなのだ。俺は悪くない。


「どの道憲兵が荷台をチェックするからこのまま行っても構わないが、ただ少々気になってな。俺のスキルで既に荷台を調べたんだが、やけに沢山の生き物を積んでるな。それも状態異常を受けて……眠らせてるのか」


「なっ……アンタ、魔法使いか!」


 索敵スキルは魔法使いが主に習得するスキルだ。レベル15以上でないと覚えられないので、魔法使いが冷遇されるこの街の冒険者には、このスキルを持っている人間が少ない。この小男の驚き方は、まるでこういった事情を踏まえているようだ。つまりスキルで探られる事はないと安心していたんだろう。セーラを見ていたのは魔法使いの可能性が高いからだろうか。


「オジサン、動物って何? たしかデズラットやロンリーウルフの皮を積んでるって言ってましたよね」


 フレイも怪訝そうな顔で小男を見た。怪しい。怪しいのだ、この小男は。とりあえず俺は眠らせられている動物を起こす事にした。


「ウォーターキュア」


「な、な、なにしやがる!」


 空に大きな水の円盤が現れる。そしてそこから、馬車に向かって光る雨が降り注いだ。ウォーターキュアは状態異常を回復する魔法で、レベルが上がれば円盤が大きくなり効果範囲も広がる。今は馬車を一台カバーするのが精一杯だが、充分だった。


 荷台は屋根があったが、雨はターゲットとなっている動物たちにのみ降り注ぐ。屋根をすり抜け、直接身体を癒やすのだ。外からは見えないが、どうやら動物たちは起きたらしい。そして騒ぎだしたのか、鳴き声が馬車の中から聞こえて来た。


「ピキュー、ピキュー!」

「ピロロロロロ!」

「キューン、キューン」


 小男が青ざめる。そしてセーラの顔を見た。セーラは……目をつり上げて怒っている!


「カトーさん、密猟者です! この鳴き声は希少種のシルバーラビットやエメラルドバードの声で、商取引自体も禁止されてます!」


「ほほう……なるほど、黒か」


「チィッ! エルフめ、厄介な耳しやがって」

 小男が叫んで、馬を鞭で叩く。

「こうなりゃ逃げるまでだ、あばよクソども!」


 馬がいななき、きびすを返して走り出した。しかしすぐさまフレイが弓矢を構えて狙い撃つ。速い。俺たちが駆け出す前に既に構えの動作を終えていた。


 ヒュンッ


 グサッ

「ぎゃあっ!」


 小男の肩に矢が刺さる。見ると矢は鉄製だった。よくまあ細腕でこんな矢を飛ばせるもんだ。さすがクロスに才能を買われた女、実力は相当な物らしい。そして動作は止まらず、次に先が吸盤になっている桃色の矢を取り出して放った。


 ヒュンッ


 ピタッ

「ヒヒンッ!?」


 馬の尻にくっついた。馬は瞬く間に動きを止めて、大人しくなり……その場に足を折りうずくまった。どうやら眠ったようだ。


「カトーさん、後で魔法で起こしてあげてくれますか。私は憲兵さんを呼んで来ます」


「あ、ああ。分かった」


 少し呆気にとられて見送った。それはセーラたちも同じだったらしい。しばらく唖然としていた。


「……カトー。お前の知り合いは凄いヤツばかりみてえだな」


「俺も驚いてる。まさかこんなに実力のある子だとは思わなかった」


 やっと口を開いたボンゾに、俺は努めて冷静に答えたが。もし初めて会った時に……裸の俺にキレて矢を放って来ていたらと思うと恐ろしい。冷静な子で良かったと心底思った。








 憲兵によって小男は捕らえられ、荷物は没収された。ちょうどその騒動が一段落した所で時間となり、今日の仕事も終了となる。今日はモンスターを倒す事もなく、最後の最後でちょっと仕事をしただけだった。


 東門前に仕事を終えた奴らが集まって来る。盗賊のアジトはあらかた調べ尽くしたらしい。どこも逃げ出した後だったようで、皆の顔は安心半分物足りなさ半分といった感じだ。クロスたちはフレイとの再会で話が弾んでいる。俺たちは少し離れた所にある岩に腰かけて、それを眺めていた。


「クロスさんたちって凄いパーティーなんですね」

 セーラが言った。

「フレイさんはまだ駆け出しなのにあんなに実力があって、でもあのメンバーの中では一番弱いって言ってました」


「ルシアって嬢ちゃんも強いらしいぞ。俺の嫁が武器を売る際にスキルレベルを見せてもらったが、キリマン流闘拳術って武術をLv18まで修めてるらしい。それでも前に出て戦うと足手まといになるから、自分の身を守るだけしかしねえんだと。じゃああのクロスとアメリアって夫婦はどんだけ強いって話だ」


「あ、私、噂で聞いた事あります。クロスさんは『人間竜巻』って言われてて、アメリアさんは『竜巻使い』って言われてますよ。通った後は何も残らない、とか」


「………」


 もはや人間の枠を飛び出してないか、それは。しかし俺たちが能力的に強くなっても、まだまだ上には上がいるという事を実感した。戦い慣れした彼らと戦ったら、こっちは何も出来ずにやられそうだ。パンツマンにならないと勝てないだろう。……それにしても人間竜巻に竜巻使い。夫婦の力関係も何となく察する事が出来る。クロス、頑張れ。






 盗賊アジトを全て調べ尽くしたという事で、この仕事は今日でお終いとなった。リリーはクエスト達成回数が規定値に達したとかで、明日から昇格試験を受けるらしく今日で一旦別れる事となった。


「たった2日だけでしたが、凄く楽しかったです。試験が終わって街に戻って来たら、また誘って下さいね」


「ああ勿論。試験頑張ってな」


 リリーはしばらくフリーで動くらしい。きっと他の冒険者と組むのが怖いのかもしれない。セーラと仲良くなったので、一緒に仕事をしたい時はセーラを通じて連絡を取ればいいだろう。能力的に万能型で自動回復持ち。戦力としては申し分ない。


 しばらく別れを惜しんで話をした後、彼女は街へと帰って行った。


「さて、俺たちも帰ろうか。明日は朝ギルドに行って報酬を貰った後……どうする? 身体はそんなに疲れてないよな」


「おう、不完全燃焼だ。全然戦ってねえから身体がなまって仕方ねえ」


「それなら討伐系の仕事か、いっそ仕事を請けずにそこら辺を散策した方が良さそうですね」


 2人の意見を取り入れ、明日はレベルための日と決めた。レベルため。ゲームでは当たり前のようにやっていた行為だが、こちらの世界に来てからは仕事優先でなかなか出来ずにいた。これを機にガンガンレベルを上げるぞと今から気合いを入れる。早くクロスたちに追いつきたい、と思いながら。







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