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  作者: 華村メイ
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嘘2

「上村さん?」


涼子は時々経営者が集まる懇親会に参加する


地元出身の政治家から経営者まで

大勢の人で混雑する会場


そこで彼女は見覚えのある男性を見つけた

あれ?あの人上村さん?かな


もう一度じっと見た、やっぱり彼だ


それは本当に偶然の再会

約25年ぶりだろうか

涼子は上村さんという昔の知り合いに再会した


彼は涼子より4つ年上の52歳

髪には白髪がまじり、多少顔はしわも目立ち


姿にはしっかり年齢を感じるが

それでも彼の笑顔と、学生時代から鍛えている筋肉質のしまった身体は

スーツの上からでもそれがわかる


変わりはなかった


同じ50代の男性と比べたら、彼の筋肉質のスタイルは目立つ

今でも何かスポーツをしている様子が見て取れる


3000人もいる会場で

よくもまあ見つけたかと自分でも不思議だ


「上村さんでしょ?」


彼は涼子に声をかけられて驚いていた

「大学の研究室にいた香川涼子です。今は岡村です。

よく安西教授を訪ねていらしてましたよね」


彼は涼子がちょっと憧れていた人


「あー!香川さん、覚えてますよ。よくコーヒーを出してくれましたね」


上村は涼子が勤務していた大学の安西教授の教え子で

よく研究室に出入りをしていた男だ


上村健現在は52歳

彼の笑顔

引き締まった身体はまったく変わりがなかった


「香川さん今は何をされているんですか?」


ゆっくりと話もしたかったが

涼子はこの会に弁護士の玉木直美と一緒に参加している

彼は自分の会社の社長らしき人と一緒だ


そばで待たせるわけにもいかない

話す時間もなくあわてて名刺交換をし


「この後、ラウンジで二次会があるんですが

いらっしゃいませんか?ゆっくり話でもしましょう」


そう彼に伝え席を離れた


本当にさっと会話をして別れた程度

こんな出会いから恋などはじまるわけはない


恋の予感?

涼子は何も感じなかった



その証拠に、会の後、ラウンジに行く頃には

もう彼の事はすっかり忘れてしまった


「後でゆっくり話しましょう」

自分でそう言った事も忘れていた


あんなに再会に一人ドキッとしたのに

彼の事はすっかりと忘れてしまっていた



どれぐらいの時間が経ったのか

ラウンジで飲んでいる時に

涼子の携帯に覚えのない電話番号から電話が入る


「もしもし?」


「上村ですが・・・」


彼だ


あれ?

なんで電話番号わかるんだろう?


涼子の疑問などすぐに解決する


すっかり忘れていたが、答えは簡単だ

涼子と上村は先ほど名刺交換をしている


彼は名刺を見て電話をかけた


電話の用件は

彼はわざわざ二次会には参加できないと電話をしてきた


「約束したのに申し訳ないです。また連絡します」


律儀だな

それが彼に対する涼子の客観的な印象だった


でも、連絡しますというセリフには期待感はない

連絡など来るとも思わない、期待もしない


昔あこがれていた人だったけれど

そんな社交辞令を全部信じていたら大変だ


涼子はいつものように

すぐに忘れてしまった



それから数日後

知らないアドレスからメールが入る


それが上村さんだった

メールにはラウンジに行かなかったことを詫び

今度はじっくりと飲みましょうと書かれていた


涼子はいつものように

「では楽しみに待っています」と返事を書いた


あまり上手ではない文章だったけれど

それでも彼にはちょっと丁寧で律儀さを感じた


まぁまだその時は彼に対して


別に飲みに誘ってほしいとは思わない人

彼もそんな程度の一人だった





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