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第二十三話 行方不明


 私達を乗せた魔道飛行艇も、飛行が安定してきて、揺れることも少なくなってきた。


 私は、お姉さんのお膝の上に乗せられたまま、首にかけていたネックレスを外し、窓に当ててみた。


 今の高さは、雲の上。青色の宝石は、空の青色と同化して、眩しいほどの輝きを放っていた。


 指で捻って、クルクルと宝石を回転させると、光の反射の仕方も変わって、ちょっとした遊び道具みたいになる。


 窓の外を見ると、一面真っ白。雪の大陸なんて、実際に見たことはないけれど、本当にそのくらい、雲の上は広大な雪景色みたいだった。


「……」


 身を乗り出して、窓の方に顔を近づけると、窓に反射して後ろが薄っすら見える。


 ……お姉さんも、私と一緒に窓の外を見てる。やっぱり、お姉さんもこういう綺麗な景色は好きなんだね。


「ふふっ……可愛いわね……」


 お姉さんがふいに、思わずと言った感じで呟いた。私の後頭部に、お姉さんのあったかい息が少し掠めた。

 

(……可愛い?……鳥でもいたのかな?)


「お姉さん、鳥さんはどこ?」


 私が振り返り、お姉さんの頭を見上げながら聞くと、突然お姉さんが仰け反り始めた。……背中、痛くないのかな……?

 

「はぅ……!は、破壊力がっ……!メイド服でやられたら死人が出るわよ……!」

「えっ……し、しにん……?……死人……!?」


 私が慌てて周りを見渡すと、お姉さんが背中を優しく擦って、また話し始めた。

 

「……ち、違うわ、"詩人"よ!……し・じ・ん!……リーシャンちゃんの可愛さを見て、詩にしちゃう人が出てくるかもしれないわね〜?」

「な、なんだぁ、びっくりした……っ」

 

 ふぅ……と、安心の溜息をつき、落ち着いて窓の方に姿勢を戻した。


 窓の外は、いつまで経っても雪景色。これもとっても綺麗だけれど、雲だらけで、ちっとも下の景色が見えないのは、ちょっと不満かも。


 私がほっぺをぐっと窓に押し当てていると、コツコツと、飛行艇の鉄の床を歩く音が聞こえてきた。


「……違う、……違う……」


 その呟きは、どこかで聞いたような声だった。そう、まるで……さっきの列にいたエルフかハーフエルフかのお兄さんのような、低めの感じ……。


 呟きが止まり、静かになったからふいに振り向いてみると、やっぱり、そこにはさっきのエルフかハーフエルフかのお兄さんが直立不動で立っていた。


  「……お前は、魔族だな?」


 お兄さんが口を開き、お姉さんに突然質問し始めた。……魔族かどうかなんて、角を見れば分かるのに。


「……突然だが、俺の名前はグラジア。……グラジア・シメトリーだ……。ある男を探しているのだが……情報提供を頼もうか……」


 グラジアさん……。いったい、だれを探しているのかな?


「えと……貴方は、エルフ?……それとも、ハーフ?」


 私がそう聞くと、グラジアさんは耳をピクつかせながら、意外にも優しく答えてくれた。


「……ハーフだ。お嬢ちゃん、君はなかなか話が通じるようだな。それは良いことだ。……まともな会話が出来るというのは、とても大切なことだからな」 

「……それで?アタシが魔族なことと、その『ある男』にどんな関係があるのよ?」

「あぁ、あるとも。……魔族は数が少ない。手当たり次第に魔族に話しかければ、いつかはその男の血縁に出会える。そこからその男の元に向かえば良い……」


 (……手当たり次第……!?……ま、まさか……根性で特定する気なの……!?)


 私のグラジアさんへの印象は「優しくてどこか不思議な人」から「根性派の人探しハーフエルフさん」に変わったのだった。

 


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