初手からもうやばい
「お呼びでしょうか?ゼウス様」
神々が住まう世界、通称・天界。その最高神に呼ばれて参上した。
目の前には筋骨隆々、上裸の初老のイケオジがいる。
「うむ。今日、ワシがお主を呼びつけたのは他でも無い。働き過ぎだ、という事だ」
「はい」
「よって、休暇を与える。しばらく異世界に降りて羽を休めるが良い」
「かしこまりました」
最高神の直々の命令だ。肯定しか許されない。
「こちらの時間で1日過ごすと、向かうの世界で10年経つ世界に行って貰おうと思っておる。こっちの時間で10日の休暇を与えるから、向こう100年、しっかりと休め」
神だからなのか、休暇日数の概念がぶっ壊れている。
「ありがとうございます。では、失礼いたします」
こうして、急遽、異世界での休暇が決まったのであった。
俺のここまでのあらすじを説明しよう。俺は数年前に過労で死に、神々の住まう天界にやってきた。そこで俺も神として働いてきた。そして、現在働き過ぎで休暇を貰ったという事だ。元ブラック企業勤めの弊害だな。俺は別にそうは思って無いけど、周りから見ればってやつ。まぁいいや。とりあえず、せっかくの休暇だ。楽しもうじゃないか。
「“転移”」
天界から指定の行き先である世界に転移する。視界が一瞬、ぐにゃりと曲がり、目の前の景色が変わーーー
ドッゴォォォォォンッ!!
「グハッ!?」
転移後いきなり爆風で飛んできた岩に当たり吹っ飛ばされた。何で?
数十メートルぐらい吹っ飛ばされてようやく着地できた。
「今日こそ決着をつけてやるわ!!魔王ッ!!」
「望む所ッ!!来い、勇者ァ!!」
すげぇ。最終決戦じゃん。日本にいた時はアニメ何てロクに観れなかったから、なんか、感動だ。
勇者と呼ばれたのは、金髪ショートの女の子だ。見た感じ大人では無いと思う。まぁ、なんだ。成長の余地があるかどうかは今後に期待と言ったところか。
魔王と呼ばれた方は、白髪長身系お姉さんだ。出るところはしっかりと出てるナイスバディ。背中の漆黒の翼と角が特徴的だ。
もちろんというのは変な話かもしれないが、2人とも美形である。さすが異世界。
さて、この状況、どうしようか?
「シッ!!」
「ハッ!!」
2人の剣が無数の軌跡を描き、火花を散らしている。
しかし、お互い背負っているもののことを考えると失礼かもしれないが、この戦いは、見ていてとても美しい。
格ゲーの同キャラで相手と同じ動きをするパフォーマンスのような感じに近いかな。
そこから10分ぐらい見させてもらい、満足した。
さて、ここから離れるとしーーー
シュンッ
「っぶねぇ!?」
背を向けて移動しようとした時、2つ斬撃が飛んできた。しっかりと首を狙って。もちろん、そのまま立っていたら神とはいえ死ぬのでしゃがんで避けましたとも。
「貴様、何者だ?」
「私達の戦いを見てたよね?」
振り返ると、先ほどまでやり合っていた2人が剣先を俺に向けて立っていた。
「フフフ・・・。俺が何者かだって?教えてやろう。俺は神だ!!」
ちょっと言ってみたかった渾身の自己紹介をかました。嘘は言ってない。
「あ〜、うん。ソダネー」
勇者さんがすご〜く冷めた感じの目で見てきた。
「勇者よ、コイツ、俗に言うアレか?可哀想な奴」
魔王がすごく憐れな人を見る目でそう言ってきた。
そして、
「「それじゃぁ、怪しいから倒す」」
「エ?」
「いや、私達の戦いをみて、何処かに行こうとする人を倒しておかないとこの後厄介な展開になる気がして」
「それは同意するぞ。勇者よ。こういう怪しい者は最後に何かをしでかすからな。経験上、抹消した方がいい。まして、自らを神と名乗るなど」
「あの、弁明の余地はない感じですかね?」
「「ない」」
(よし逃げよう)
戦闘力が無いわけではない。この2人より強い。けど、せっかくの休暇なのだ。労力を使うわけにはいかないッ!!
「弁明の余地が無いのであれば、俺はここらで失礼します」
神の力の全てを以てその場から離脱。
さて、離脱したはいいが、行き先にアテがあるわけでは無いから、すごい魔力を感じた湖に寄ってみた。
「「どこへ行くんだぁ??」」
あるぅえぇ?何故さっきの魔王と勇者の声が聞こえるんだ?
「やはり、魔力に惹かれるか。わかりやすくて助かるな」
ガシッと両脇を持ち上げられる。アレ?振り解けない。
「逝く時は一瞬だからね?」
ここまで笑顔が怖いと思った瞬間はない。
「さて、逃げられないように私が抑えておこう。勇者よ、ヤれ」
「OK魔王。ヤるわ」
剣を構える勇者。
お前ら何でそんなに息合ってるんだ?敵同士だよな?
はぁ。早く休む為に、ちょっと頑張るとしようか。




