第1話 これって、王都追放?左遷?
*タイトルを変更しました。(令和8年3月3日)
「第二王女レオノーラ。
其方は直ちに王都を離れ、王領セレーヌに監査官として直ちに向かえ。」
玉座の間に満ちていたざわめきが、ぴたりと止んだ。
重厚な赤絨毯の上で、レオノーラはゆっくりと顔を上げる。
今日は先日の貴族院が絡む不正事件を解決した
褒賞の式典ではなかったのか。
褒められこそすれ、地方への移動を言い渡される言われはない。
何かがおかしい。いや、いつものこと、とも言える。
その碧い瞳は揺れていない。揺れていないはずだった。
「……どういうことかお聞きしても?」
王は感情を滲ませない声で告げる。
「貴族院における不正会計の解決。確かに其方の働き、見事であった。
ただ、あれは大きな混乱を招き、王家の威信を損なった。」
「威信よりも、民の暮らしのほうが重要です。」
間髪入れずに言い返す。
その瞬間、貴族たちの空気が凍る。
この恐ろしい王に真っ向から反発するように挑むことが、
私が娘とはいえ、皆驚くのだ。
王はわずかに目を細めた。
それだけで皆が震え上がる。
「王命だ。明日、出立するが良い。」
沈黙。
レオノーラは拳を握った。
いつも、お父様はいつもそう。
一方的で私の話など聞いていない。
理不尽さを感じながら唇を噛む。
その時、レオノーラの影が、わずかに揺らいだ。
「……正論だな。」
低い声が、耳元で囁いた。
彼女は弾かれたように振り返る。
誰もいない。
ただ、視線を落とすと、足元に小さな黒い犬が座っていた。
赤い瞳が、まっすぐに彼女を見上げている。
え?しゃべる犬?
思わず口に出そうになったがこらえた。
周りの反応に変化がなかったからだ。
この姿が見えていない?
聞こえていない?
私にだけ見えているの?
ふっとその姿が黒いモヤとともに消えた。
見間違い?
私、アタマ、おかしくなっちゃった?
王が退出したあと、
凍ったような空気が少しだけ緩んだ。
参加していた面々も、ちらちらとこちらを見ているが、
声をかけることなく退出していく。
王は第二王女を疎んでいる。
それが周りの認識だ。
私は、この気まずい雰囲気の中、
どうやって部屋に戻ったのかわからない。
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