第99話『衝突 ――揺れる心と決意の刃』
地下施設の奥、暗い石造りの空間に剣戟の音が響き渡る。
悠真とハルベルトの刃は、何度もぶつかり合い、火花を散らしていた。
「どうして……お前がここにいるんだ、ハルベルト!」
「答えは一つだ。俺はもう、お前とは違う道を歩いている。異世界での記憶も、理想も、全部――裏切られたからな!」
怒りに濁ったハルベルトの瞳が、悠真を突き刺すように睨む。
その眼差しには、かつて共に死線を越えた仲間の面影はなく、ただ敵意だけが渦巻いていた。
「……裏切り? 俺は――」
「黙れ!」
ハルベルトの剣が、重い一撃として振り下ろされる。悠真はとっさに受け止めたが、その力強さに足元の床が軋んだ。
戦いは激化し、空気が震える。
だがその傍らで、リナが涙を浮かべて叫んだ。
「二人ともやめて! あの頃の約束を……忘れたの!?
『どんな敵が現れても、背中を守り合う』って、誓ったじゃない!」
一瞬、二人の動きが止まった。
ハルベルトの剣先が、悠真の喉元で静止する。悠真もまた、刃を振り下ろすことをやめていた。
「リナ……」
「…………っ」
ハルベルトの顔が歪む。怒りと迷い、そして押し殺していた何かが揺らいでいた。
悠真は、そのわずかな隙を見逃さなかった。
「ハルベルト、俺はまだ……お前を仲間だと思ってる。だから、剣じゃなく言葉で答えを出そう!」
「……甘いな、悠真。だが――その甘さが、お前らしい。」
次の瞬間、ハルベルトは剣を振り下ろす代わりに、一歩後ろへ退いた。
その瞳には、迷いと共に、かすかな懐かしさが宿っていた。
だが――影の中から、冷たい声が響く。
「甘い感傷に浸る余裕はないぞ、ハルベルト。」
暗がりから現れたのは、黒衣を纏った謎の男だった。その瞳は氷のように冷たく、悠真とハルベルトを同時に見下ろしていた。
「裏切り者を処分する。それが私の役目だ。」
重苦しい気配が、空間を支配していく。
ハルベルトが、初めて怯えを浮かべる。
悠真は剣を構え直した。
「……今度は、敵は一人じゃないらしいな。」
物語は、新たな局面へと突入していく――。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
第99話では、ついに悠真とハルベルトが真正面からぶつかり合いました。かつての仲間との衝突は、避けられない試練でありながらも、リナの言葉によって揺らぎが生まれましたね。
そして、最後に姿を現した謎の黒衣の男――物語は新たな局面に突入します。
次回、第100話はひとつの大きな節目となる回。これまで積み重ねてきた緊張が、どのように爆発するのか、ぜひ楽しみにしていただければと思います。
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引き続きお付き合いいただければ幸いです。




