第98話『慟哭 ――揺らぐ心と断ち切れぬ絆』
地下牢を抜け、悠真たちはさらに奥へと進んでいた。
薄暗い通路は湿り気を帯び、遠くからは水滴が落ちる音だけが響いている。その静寂の中に、不意に鋭い声が突き刺さった。
「……そこまでだ、悠真」
現れたのは、鎖をまとった青年。かつて異世界で共に戦った仲間、ハルベルトだった。
彼の双眸には懐かしさはなく、代わりに狂気に似た光が宿っていた。
「ハル……どうして、お前が……」
「裏切ったのはお前の方だろう? 俺たちを置いて、この世界に逃げ帰ったのだからな」
その言葉は、刃となって悠真の胸を抉った。
確かに――異世界から帰還した時、悠真は全てを捨てた。仲間を、戦場を、そして自らの役割を。
「……俺は、逃げたんじゃない。帰るべき場所を選んだだけだ」
「言い訳をするな!」
ハルベルトの怒声とともに、鎖が唸りをあげて襲いかかる。悠真は即座に身を翻し、魔力障壁で防ぐ。しかし衝撃は重く、足元の床石が砕け散った。
「やめて! 二人とも!」
間に割って入ったのは、リナだった。涙を浮かべ、必死に叫ぶ。
「私たちは、もう一度一緒に歩けるはずだよ! こんな風に争うなんて、間違ってる!」
だが、ハルベルトの鎖は止まらない。彼の心は憎悪に縛られ、リナの声すら届かないようだった。
悠真は拳を握りしめる。
仲間だった彼を斬ることは、本能が拒んでいた。しかし同時に、今のままでは仲間を守れない。
「ハル……たとえお前が俺を憎んでも、俺は仲間を守る。それが、俺の選んだ道だ!」
決意の言葉とともに、悠真の魔力が爆ぜた。
光が通路を満たし、二人の衝突は避けられぬ運命として幕を開ける――。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
第98話では、ついに悠真と元仲間ハルベルトとの衝撃的な再会と衝突が描かれました。かつて共に戦った仲間だからこそ、彼の言葉は悠真にとって鋭い刃となって胸に突き刺さります。
仲間としての絆、裏切りと誤解、そして「それでも守りたいもの」。
この三つのテーマが、次回以降大きなうねりを生むことになります。
第99話では、二人の戦いの行方、そしてリナの叫びがどう響くのか――物語の核心に迫る展開を予定しています。ぜひ楽しみにしていてください!
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それでは、次回もどうぞよろしくお願いします。




