第97話『侵入 ――閉ざされた地下と囁く影』
夜の帳が都市を覆う頃、悠真たちは再び政府の地下施設の前に立っていた。
かつて「帰還者の牢獄」と呼ばれたその場所――表向きには廃棄されたとされているが、最新の情報では再稼働し、何かを秘匿しているらしい。
「まさか、こんな形でまたここに戻ることになるとはな……」
悠真は低く呟き、手にした簡易魔導具の光で無骨な鉄扉を照らした。
傍らには王女リリアと、仲間の綾乃、そして新たに加わった情報屋の九条。
それぞれの表情は固く、緊張と決意が入り混じっている。
「センサーの反応、やはり稼働中だわ。廃墟なんて嘘ね」
綾乃が端末を操作しながら小声で告げる。
「俺が先に行く。幻影障壁で姿を消せる、少しの間ならな」
悠真は仲間に合図を送り、結界を展開した。
地下へ続く階段は湿気と血の匂いが入り交じり、かつて仲間が囚われていた惨劇の残滓を思い出させる。
心臓の鼓動が速まる中、彼らは慎重に足を踏み入れた。
薄暗い廊下の奥から、かすかな声が聞こえてくる。
「……やめろ……俺は……もう……」
その声は、悠真にとって聞き覚えがありすぎるものだった。
彼の脳裏に、かつて異世界で共に剣を振るった仲間――聖騎士ハルベルトの姿がよぎる。
「……嘘だろ」
悠真は足を止めた。
「どうやら、ここに囚われているのは“実験体”だけじゃなさそうね」
九条が目を細める。
闇の奥で、重い鉄の鎖の音が響いた。
それと同時に、周囲の照明がぱっと点灯する。
「歓迎するよ、異世界帰りの賢者」
スピーカーから響いた声は、悠真たちがもっとも警戒すべき敵――政府の影に潜む黒幕のものだった。
「お前たちの到来は想定済みだ。さて……“再会”の場を楽しんでもらおうか」
そして奥の牢獄から姿を現したのは、かつての仲間、だが今は異形の力に蝕まれたハルベルトだった。
その瞳には、理性と狂気がせめぎ合う光が宿っていた。
「悠真……助けて……くれ……いや……殺せッ!!」
仲間との再会は、残酷な選択を迫るものだった。
悠真は拳を握りしめ、仲間と共に最終の扉を踏み越える。
物語は、新たな血と涙の局面へと進もうとしていた――。
第97話『侵入 ――閉ざされた地下と囁く影』をお読みいただきありがとうございました!
ついに再び「帰還者の牢獄」に足を踏み入れた悠真たち。
ただの潜入劇では終わらず、かつての仲間との衝撃の再会、そして黒幕の暗躍が明らかになってきました。
ハルベルトとの再会が、今後の物語にどんな影を落とすのか……物語はさらに緊迫した局面へと突き進みます。
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