第94話『影の輪郭 ――黒幕の囁き』
戦いの余韻がまだ拠点に漂っていた。焼け焦げた匂いと、瓦礫の崩れる音が、勝利の実感を薄く曇らせている。
悠真は剣を収め、深く息を吐いた。仲間たちもそれぞれ傷の手当てを受けつつ、戦闘の終わりを確かめ合っていた。
「……なんとか、持ちこたえたな」
「ええ。でも、妙です」
真剣な顔で言葉を継いだのは、王女リディアだった。彼女は拠点に残された敵兵の痕跡を見渡しながら、小さく眉をひそめる。
「ここを襲った者たち……まるで、陽動のように見えます」
その瞬間、悠真の背筋に冷たいものが走った。
確かに、敵は数も力も中途半端だった。拠点を壊滅させるほどの規模ではなく、かといって偵察とも違う。――では、彼らの真の狙いは?
「……別の場所で、何かが起きている」
悠真の言葉に、仲間たちの表情が一斉に険しくなる。
その頃。
遠く離れた政府施設の地下室。薄暗い空間の中で、フードを被った男がひとり、静かに笑っていた。
「計画は順調だ。奴らが拠点に釘付けになっている間に、こちらは“本命”を動かす……」
その声は低く抑えられていたが、確かな狂気を孕んでいた。
黒い帳の向こうで動くのは、裏切り者の影か、それとも新たな勢力か。
答えが明かされる時、悠真たちは再び試されることになる。
今回もお読みいただきありがとうございます!
第94話では、ついに「黒幕」の影が輪郭を現し始めました。
戦いは一段落したかに見えて、その裏では着実に陰謀が進行している……そんな不穏な空気を描いてみました。
ここから先は、仲間たちの絆が再び試される展開が続いていきます。
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それでは、次回もお楽しみに!




