第93話『初戦 ――火蓋は切られた』
夜明け前の静寂を破るように、拠点の警報が鳴り響いた。
赤い光が通路を点滅し、仲間たちは一斉に武装を整える。
「……来たか」
悠真は深く息を吸い、冷静に周囲へ指示を飛ばす。
「第一班は外周防衛。第二班は施設内部の防衛。第三班は避難誘導だ。俺と黒田、それに王女殿下は正面から迎え撃つ!」
仲間たちの目に宿る緊張と覚悟。
その中で黒田が一歩前へ出る。
「悠真、借りを返す時が来たな。俺も全力でやる」
かつて敵対した男の声は、今は確かな決意に満ちていた。
外に出ると、すでに武装した敵兵が暗闇を突き進んでくる。
最新鋭の装備を纏い、数にものを言わせた突撃。
「やれやれ、数は圧倒的に不利だな」
王女リリアナが槍を構え、冷ややかな笑みを浮かべる。
「不利なのは数だけだ。俺たちには“異世界の経験”がある」
悠真は杖を振り抜いた。
瞬間、地面から炎の壁が立ち上がり、敵兵の突撃を遮断する。
悲鳴と怒号が夜に響き、戦いが始まった。
黒田は大剣を振るい、装甲兵を一撃で吹き飛ばす。
リリアナは舞うように敵を貫き、その背後を悠真が魔法で援護した。
だが敵は単なる兵士だけではなかった。
闇の中から姿を現したのは――かつて異世界で相対した“模倣の怪物”。
「なんで……ここに!」
仲間の一人が驚愕の声を上げる。
悠真の脳裏に、かつて仲間を失った忌まわしい記憶がよぎる。
胸の奥に宿る怒りと恐怖を振り払い、叫んだ。
「怯むな! ここで退けば未来はない! 全力で叩き潰すぞ!」
炎と剣戟が交錯し、夜明け前の戦場は地獄と化した。
そしてその中で、悠真は確信する。
――これは序章にすぎない。
敵の本当の狙いは、この混乱のさらに先にあるのだ。
ここまでお読みいただきありがとうございます!
ついに拠点を巡る初戦が始まりました。
悠真たちが本格的に力を振るい、かつての仲間や敵と肩を並べて戦う姿は、まさに物語の新たな段階への幕開けです。
今回の戦いは単なる一戦ではなく、「裏に潜む陰謀」の序章でもあります。
果たして黒幕は何を狙っているのか……そして、彼らの“異世界帰り”の力がどこまで通用するのか。
次回は、この戦闘の余波と、新たな真実が少しずつ明らかになっていく予定です。
引き続き応援していただければ嬉しいです!
ブックマークや評価、感想などで支えていただけると本当に励みになります。
どうぞこれからもよろしくお願いします!




