第90話『真実 ――崩れゆく仮面と失われた記憶』
地鳴りのような衝撃が王宮の地下を揺らした。
リュウジと“影の主”の戦いは、もはや人間の領域を超えていた。空気は張り裂け、石壁には無数の亀裂が走る。
「……なぜだ、なぜお前がこんな世界に戻ってきた!」
影の主が叫ぶ。彼の声は怒りとも悲しみともつかぬ震えを帯びていた。
リュウジは剣を構え、息を荒げながらも視線を逸らさない。
「それは、俺が帰る場所を見つけたからだ。仲間がいて、守るべきものがある。お前のように絶望に飲まれるわけにはいかない!」
その言葉に影の主は短く笑った。だが、その仮面のように冷たい表情の奥から、わずかな揺らぎが垣間見える。
「守るべきもの、か……。かつて俺もそう思っていた。だが裏切られ、奪われ、踏みにじられた。お前はまだ知らない、この世界の――いや、この国の真実を」
影の主が両手を広げると、黒い靄が渦巻き、周囲の空間が歪む。
幻影のように映し出されたのは、かつて王国を導いていた賢者たちの姿。彼らは権力に飲まれ、仲間を犠牲にし、最後には己の欲望のために世界を売り渡した。
「これは……」
リュウジは目を見開いた。映し出された映像の中に、見覚えのある人物がいた。
それは、かつて異世界でともに戦ったはずの仲間――アレンの姿だった。
「嘘だ……アレンが……」
影の主はうなずく。
「そうだ。お前が信じていた者は、とうに裏切っていた。俺はそれを見て、この手で止めようとした。だが間に合わなかった。だから今度こそ、俺はこの国を焼き払い、やり直す」
言葉とともに、影の主の仮面が崩れ落ちる。現れた顔は――リュウジ自身の面影を宿していた。
「な……俺と……同じ……?」
影の主は低く告げる。
「俺は“もう一人のお前”。未来で絶望に飲まれ、全てを失ったお前だ」
衝撃がリュウジの心臓を貫いた。
目の前の敵はただの異形ではなく、あり得る“自分自身の結末”だったのだ。
剣を握る手が震える。だがリュウジは強く息を吐き出し、決意を込めた瞳を相手に向けた。
「……だったら、俺はその未来を変える。お前のようにはならない!」
光と闇が再び激突する。
その轟音は、王宮の奥深くにまで響き渡った。
ここまでお読みいただきありがとうございます!
ついに影の主の正体が明かされましたね。まさかの展開に驚かれた方も多いのではないでしょうか。
「もしもリュウジが絶望に負けていたら」という“もう一つの可能性”。敵でありながらも、どこか共感してしまう複雑な存在として描きました。
次回は、この衝撃の真実を受けて、リュウジがどのような決断を下すのかが焦点となります。
物語も大きな転換点を迎えますので、ぜひお楽しみに!
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