第87話『黒塔の胎動 ――侵蝕する闇と試される決意』
王都の中心に突如として姿を現した黒塔は、まるで夜空に突き立つ漆黒の刃のようだった。
その存在はただそこにあるだけで人々の心を圧し潰し、恐怖と混乱を撒き散らす。
「……これが“影の主”の拠点か」
リュウジは塔を見上げながら、額に汗を滲ませた。異世界で見たあらゆる要塞よりも、禍々しく、不気味な圧力を放っている。
仲間たちの表情も硬い。
アイリスは震える手を胸に当て、王女の面影を背負うようにして必死に気丈さを保つ。
ソウタは拳を握りしめ、かつて戦ったダンジョンすら霞むような存在感に息を呑んだ。
その時、塔の壁面が蠢き、黒い“影の獣”が次々と姿を現した。
牙を剥き、地を這い、空を飛ぶ異形の群れ。まるで塔そのものが命を持ち、王都を喰らおうとしているかのようだった。
「来るぞ!」
リュウジの声と同時に、激しい戦闘が始まる。
ソウタの剣が閃き、アイリスの魔法が轟く。
仲間たちは必死に影の獣を退けるが、次から次へと湧き出してくる群れは尽きることを知らない。
「……数が多すぎる!」
誰かの悲鳴が聞こえた。
それでもリュウジは諦めなかった。異世界で積み重ねた数え切れない修羅場を胸に刻み、仲間を守るために声を張り上げる。
「踏みとどまれ! 俺たちがここで倒れたら、王都の未来はない!」
その声は、戦場に一筋の光を差し込んだ。
仲間たちの瞳に再び闘志が宿る。
しかしその時、塔の頂から重苦しい声が響き渡った。
「……よくぞ来たな、異界の賢者よ」
リュウジの背筋に冷たいものが走る。
その声は、かつて異世界で幾度も対峙した“影の主”のものだった。
塔全体が低く唸りを上げ、黒い瘴気が王都を覆い始める。
戦いは、すでに序章に過ぎなかった。
リュウジは深く息を吸い、仲間たちに短く告げる。
「ここからが本番だ。覚悟を決めろ」
黒塔の胎動――それは、新たなる決戦の始まりを告げる鐘の音であった。
ここまでお読みいただきありがとうございます!
第87話ではついに「黒塔」がその姿を現し、物語が大きく動き出しました。
ただ立っているだけで王都全体を圧するような不気味さ……そして、かつての因縁を思わせる“影の主”の声。
リュウジたちにとって、本当の決戦がここから始まります。
次回はさらに緊迫した展開となりますので、どうぞお楽しみに!
もし「続きが気になる!」と思っていただけましたら、ぜひ ブックマークや評価 をして応援していただけると励みになります。
感想欄もお待ちしていますので、気軽にコメントしていただけたら嬉しいです!
次回、第88話『深淵 ――影の主との邂逅』にご期待ください!




