第80話『余燼 ――静寂の中に芽吹く影』
王宮の一角に広がる戦場は、すでに炎と血の匂いを失い、静寂に包まれていた。
アキトは、倒れたユリウスの姿を見下ろし、深く息を吐く。かつて共に戦った仲間を、自らの手で退けた事実は胸を締めつけるように重い。
「……お前の理想は、確かに間違ってはいなかったのかもしれない」
声に出しても、返事はない。ただ、静かに閉ざされた瞳が最後まで譲らなかった意思を語っていた。
やがて仲間たちが駆け寄ってくる。
リナが震える声で言った。
「アキト、本当に……終わったの?」
「……ああ。だが、まだ戦いは終わらない」
そう答えると、誰よりも早く駆けつけたセイジがアキトの肩を叩いた。
「お前が選んだ答えなら、俺は信じる。けど……この後、どうする?」
その問いにアキトはしばし言葉を失う。
戦いの勝利は、決して全ての解決を意味しない。むしろ、これから始まる嵐の前触れに過ぎないと、肌で感じていた。
王宮の奥、崩れ落ちた壁の隙間から一人の影がこちらを見つめていることに、アキトは気づいていた。
その瞳は冷たく、まるで次なる舞台への誘いを告げるかのように。
(まだ、終わっていない……)
燃え尽きた戦場の静けさの中で、アキトの胸に再び戦意が芽吹いていく。
仲間と共に歩む未来のため、そして失われた絆の痛みに報いるために。
王宮の残火は消え去った。しかしその残響は、新たな陰謀の影を呼び覚ましていた。
ここまでお読みいただきありがとうございます!
第80話では、大きな戦いの一区切りと、その余韻を描きました。
戦いに勝ったからこそ残る苦さ、そして新たに芽吹く不穏な影……物語は次の局面へ進んでいきます。
いよいよ次回からは「黒幕の暗躍」に焦点が当たり、さらに緊張感が増していきます。
その一方で、仲間との絆や日常の一コマも忘れずに描いていければと思っています。
もし「面白かった」「続きが気になる」と思っていただけたら、
ブックマークや評価で応援していただけるととても励みになります!
皆さまの一押しが、執筆の力になっています。
それでは次回もぜひお楽しみに!




